2025年06月23日
目次
エージェンシー問題
1-1.エージェンシー問題とは?
依頼人が代理人に意思決定権を委任した場合、両者の間には「エージェンシー関係」が存在する事になります。この関係は依頼人と代理人との関係を指します。そして依頼人と代理人の目的が異なる場合に生じる問題をエージェンシー問題と言います。エージェンシー問題は株主と経営者の間に起こる問題であり、企業価値を最大化する上ではこの問題を解決する事が非常に重要になります。何故なら株主の意向が経営に反映されないと、株主の利害を最大化することができないからです。
1-2.エージェンシー問題が発生する理由
エージェンシー問題が発生する理由は大きく分けて以下の二点になります。
1.情報の非対称性
株主から経営を委託された経営者は企業の内部情報を知ることができますが、株主は細かい内容まで把握することはできません。そのため経営者が意図的に都合の悪い事実を隠蔽したり、自分に都合の良い報告を行うことで、株主は正しい判断を下せなくなります。このように情報の非対称性によりエージェンシー問題が発生します。
2.経営者特典
株主から経営を委託された企業経営者にとり、企業の利益を追求する事は必ずしも自分の利害を最大化する事とイコールではありません。何故なら経営の利害と株主の利害が完全には一致していないからです。株主は利益を最大化する為に経営者に経営を委託します。しかし委託された経営者は、少しでも高価なオフィスや豪華な施設、多くの接待交際費を求める傾向にあります。そのため両者の利害は一致しておらず、結果としてエージェンシー問題が発生する事になります。
3.経営者のリスク回避
株主が積極的な経営を求めていても、経営者が無難に任期を終えたいと考えれば、積極的な投資が行われなくなります。リスクを取って頑張れば大きなリターンを見込める状況でも、企業の大きなリターンが同じく経営者個人に大きなリターンをもたさらない場合、経営者はリスクを回避する傾向が強くなります。これは大きなリターンを求めて投資した株主に対する背信行為とも取れます。このような問題も両者の利害が一致していないので発生するエージェンシー問題だと言えます。
1-3.エージェンシー問題を解決するには?
エージェンシー問題を解決するには以下の方法が効果的です。
1.モニタリングとコーポレートガバナンス体制の強化
株主はモニタリング・コーポレートガバナンス体制を強化することでエージェンシー問題を解決する事が可能です。具体的には内部監査の強化、情報開示の徹底、社外取締役の任命等があります。このように経営者が不正を行うことができないよう、監視する仕組みを強化する事でエージェンシー問題を解決する事ができます。
2.経営者の報酬制度を業績連動制度にする。
株主から経営を委託された経営者の報酬が業績に連動している場合、エージェンシー問題は解決しやすくなります。何故なら経営者の実績と報酬が連動していれば、経営者は好業績を追求することが自分の利益に直結するからです。これは目的の不一致という問題を解決する方法でもあります。このように経営者の報酬制度を業績連動制度にすることでエージェンシー問題を解決する事ができます。
3.経営者の持ち株比率を上げる。
経営者を株主にすることで、経営者の業績向上意欲を高めることができます。何故なら株価の上昇が自分の利益に直結するからです。これはリスクを取るべき局面で、経営者がそのリスクを取る意欲が発生する原因にもなります。またストック・オプション制度の導入も効果的です。将来的に現在の価格で株を購入できるのであれば、経営者は必死になって株価を上げようとするからです。このように経営者も株主にして株価を上げるモチベーションを高めさせる事でエージェンシー問題を解決する事ができます。
エージェンシー問題:まとめ
2-1.エージェンシー問題を把握しておきましょう。
株主が経営を委託する場合、必ずエージェンシー問題が発生することになります。そのためこの問題の存在と解決方法をしっかりと把握しておきましょう。そして経営を委託するという時はエージェンシー問題を思い出し、この問題が発生しないよう意識して経営について考えるようにしましょう。