2025年07月07日
キャッシュフロー計算書
1-1.キャッシュフロー計算書とは何か?
「キャッシュフロー計算書」とは企業の一定期間のお金の動きを表す財務諸表になります。英語で「Cash Flow Statement」と書くので頭文字を取って「C/F」(シーエフ)とも呼びます。
キャッシュフロー計算書は損益計算書と異なり一定期間の現金の動きを表します。損益計算書は一定期間の利益(又は損失)を計算するものですが、損益計算書で算出した利益は現金とは一致しません。何故なら利益にはまだ回収できていない売掛金や、支払っていない買掛金などが含まれているからです。そのためキャッシュフロー計算書を使い実際に一定期間内の現金の動きを把握する必要があります。
キャッシュフロー計算書は企業の財務健全性や資金繰りの状況を把握する為に非常に重要な財務諸表です。キャッシュフロー計算書は主に「営業活動によるキャッシュフロー(Operating Cash Flow)」「投資活動によるキャッシュフロー(Investing Cash Flow)」「財務活動によるキャッシュフロー(Financing Cash Flow)」の3つに区分されます。まず営業活動によるキャッシュフローは、本業の活動から生じる現金の増減を示します。例えば、商品やサービスの売上による現金収入や仕入・人件費の支払いなどが含まれます。この数値を見ることで、企業が本業だけでどれだけ現金を生み出せているかが分かります。次に投資活動によるキャッシュフローは、設備投資や有価証券の取得・売却など、将来的な収益獲得を目的とした資金の動きを示します。例えば新しい工場の建設や他社株の購入は現金の支出となり、売却や回収は現金の増加になります。最後に財務活動によるキャッシュフローは、資金調達や返済に関連する現金の流れです。株式や社債の発行による資金調達、借入金の返済、配当金の支払いなどがここに含まれます。この情報により、企業がどの程度外部資金に依存しているかや、投資家への還元状況を把握できます。
キャッシュフロー計算書は損益計算書や貸借対照表と併せて分析する事で利益が出ていても現金不足に陥っていないかを判断する事ができます。あるいは本業で十分な現金を生み出しているかをより正確に判断できます。そのためキャッシュフロー計算書は企業の安全性・成長性・資金繰りを評価する上で欠かせない指標であると言えます。
1-2.なぜC/Fで現金の動きを把握する必要があるのか?
キャッシュフロー計算書で現金の出入りを管理すべき理由は、現金が管理できていないと倒産してしまうからです。
企業経営では会計上の利益より現金の管理が重要になります。具体的な例を出します。例えばあなたがビジネスを営んでいるとします。そして手元に現金が1,000万円あるとします。今月に一生懸命営業を頑張り、売上が2,000万円発生したけど、実際の入金は6ケ月後だとします。しかしそれまでに毎月300万円以上の経費支払いが現金で発生するとします。このケースでは4ケ月後は支払いを行うことができなくなります。何故なら売上が入金されるまでに手元の現金が尽きてしまうからです。このケースでは半年の売上が2,000万円・経費は1,200万円で利益が800万円出ている筈ですが、現実的には破綻してしまうのです。このように利益を出すのも大切ですが、最も大切なのは現金の動きを把握することです。そうしないと黒字倒産が待っています。よって企業は常に現金の動きを把握する必要があります。また外部の利害関係者も実際に現金の動きはどうなのかを定期的に確認する必要があります。
1-3.外部の利害関係者がC/Fを重視する理由
外部の利害関係者がキャッシュフロー計算書を重視する理由は、倒産リスクを把握できる、利益操作の有無が分かる、返済能力が把握できるというメリットがあるからです。
キャッシュフロー計算書があれば倒産リスクはもちろんですが、利益操作についても理解する事ができます。何故なら現金は嘘を付かないからです。外部の利害関係者が最も警戒しているのは、損益計算書に書かれた利益の真実性です。企業は架空の売上や経費を操作することで自社に都合の良い財務諸表を作成することができます。(もちろん違法です。)しかし実際にこのような行為を行っている企業は大企業でも存在しています。最も有名なのはエンロン社とワールドコム社でしょう。大企業である両社は不正会計・粉飾決算により倒産しました。これは経営陣の罪ですが、投資家がこのような粉飾決算を見抜けない限り大損してしまいます。このように外部の利害関係者が最も恐れるのは企業の粉飾決算です。しかしキャッシュフロー計算書と併せて分析すれば、このリスクを軽減することができるようになります。何故なら利益と現金収支の数字がかけ離れていると、粉飾決算を行っている可能性を見抜くことができるようになるからです。そのため外部の利害関係者はキャッシュフロー計算書も貸借対照表や損益計算書と同じように重視しています。
更に外部の利害関係者がキャッシュフロー計算書を重視する理由には企業の返済能力を判断できる点もあります。企業が借入金の返済や利息支払い、社債の償還などの義務を確実に果たせるかどうかは、損益計算書の利益だけでは判断できません。なぜなら利益は発生主義で計算されるため、売掛金や未払費用が含まれ、実際の現金残高とは必ずしも一致しないからです。キャッシュフロー計算書を確認することで、営業活動による現金の創出能力や、投資・財務活動に伴う資金の流出入を具体的に把握でき、借入金返済や配当支払いに十分な現金があるかを見極められます。
またキャッシュフロー計算書は経営の安定性や成長性を評価する際にも有用です。たとえ短期的に利益が出ていても、現金収支がマイナスの状態が続けば、設備投資や新規事業への資金投入が困難となり、将来的な成長が阻害される可能性があります。そのため、投資家や金融機関は、損益計算書や貸借対照表だけでなく、キャッシュフロー計算書を用いて企業の実態を総合的に評価します。結果として、キャッシュフロー計算書は企業の信頼性や財務健全性を判断する上で不可欠な情報源となっており、外部利害関係者にとって非常に重要視されます。
キャッシュフロー計算書:まとめ
上記がキャッシュフロー計算書の概要になります。キャッシュフロー計算書(C/F)は貸借対照表や損益計算書と同じく非常に重要な財務諸表になりますので、MBA受験に向けてしっかりと学ぶようにしましょう。上記で少し解説させて頂きましたが、キャッシュフロー計算書は三つの区分があります。これらの詳細については改めて別記事にてご紹介させて頂きます。