ファイナンスとは?|MBA受験前に押さえたい“お金の意思決定”の基本

2025年07月14日

ファイナンス

1-1.ファイナンスとは?

 ファイナンスとは最適な資金の調達・運用・分配を最適化し、リスク・リターンを考慮しながら価値を最大化するための理論及び実践になります。

 もっと平たく言えば「限られたお金をどう使って増やしていくか。」を研究する学問になります。最も多い間違いはファイナンスと「会計」と同じだと考える間違いです。

 しかし会計とファイナンスは全く違います。会計は過去の企業の取引や活動を記録し、企業の財務状態を明らかにする事が目的になります。また経済学とファイナンスも同じく違います。経済学は社会全体の資源配分や市場の動きを研究するものですが、ファイナンスは個別の企業・投資家の運用にフォーカスしたものになります。更にファイナンスは経営学とも異なります。経営学は企業の経営活動全般(経営戦略・人材管理・組織・マーケティング等)を扱いますが、ファイナンスは企業や投資家の資金調達・運用に特化した分野になります。まとめると次の通りになります。

 

会計・経済学・経営学とファイナンスの違い

学問分野 目的
会計 過去の企業の取引や活動を記録し企業の財務状態を明らかにする。
経済学 社会全体の資源配分や市場の仕組みや動きを研究する。
経営学 企業の経営活動全般(経営戦略・人材管理・組織・マーケティング)を扱う。
ファイナンス 未来に目を向けて個別の企業や投資家の資金をどう使って増やすかを考える。

 上記の通りファイナンスの目的は価値の最大化であり、そこには意思決定力や戦略的思考が含まれます。

1-2.なぜファイナンスが重要なのか?

 ファイナンスが重要である理由は、限られた資金を効率的に増やすという行為が資産形成や事業拡大の成功につながるからです。 

 個人投資家の視点で考えて見ると、限られたお金を効率的に増やすことができれば、資産形成を成功させることができます。また企業の視点で考えて見ると、同じく効率的にお金を集めて増やすことができれば、投資家・債権者に最大のリターンをもたらすことができます。このようにファイナンスというお金を扱う分野は、お金を増やさなければならない投資家や企業にとって非常に重要な分野になります。

 またファイナンスが重要である理由は、ファイナンスを学ぶことで損失をコントロールする事ができるようになるからです。ファイナンスはお金を効率的に集めて増やす方法を考える分野になりますが、この分野をしっかり学ぶ事で損失をコントロールすることができるようになります。例えば特定の投資を行った場合、利益が出たとしても「資本コスト以上の利益」が出ていない、利益は出たがDCF法で現在価値に割り引いて考えるとトータルリターンはマイナスだった、というように、投資の結果を感覚ではなく数字で判断することができるようになります。その結果としてリスクを数字で管理し数字で判断を行うことができるようになります。結果として複数のシナリオを想定し、損失を予測することで、破綻や企業の倒産を回避できる可能性を高めることができます。このよにファイナンスは非常に重要な分野であると言えます。

1-3.ファイナンスの基本概念

 ファイナンスの基本概念として「時間価値・資金調達・投資判断・リスクとリターン」の四つを理解しておく必要があります。この四つの詳細はそれぞれ次の通りになります。

 一点目は「時間価値」になります。時間価値とは現在のお金と将来のお金の価値は異なるという意味になります。例えばあなたが現在100万円の現金を保有しているとします。仮に預金金利が3%とすれば、1年後にあなたの100万円は103万円(100万円×3%=3万円)になっています。つまりこの100万円という現在の現金の価値は1年後の100万円とは異なる価値を持っているのです。これが時間価値になります。この条件だと「現在の100万円=1年後の103万円」という関係が成立しているので現在のお金の価値の方が将来のお金の価値より低いと言う事ができます。

 二点目は「資金調達」になります。資金調達とは企業(又は個人)がお金を他人から調達する事を言います。これには二種類の方法があります。一つ目は金融機関からの借入金を増やす方法です。例えば銀行からお金を借りれば資金を増加させる事が出来ます。しかしこれには利息が発生する事になります。次に投資家から出資を受ける方法です。例えば新たに株式を発行し、投資家に引き受けてもらえば資金を調達する事ができます。しかしこれにも配当金や株価上昇のようなコストを伴う事になります。このいずれの方法を選択するか、またはそれぞれをどのような割合で構成するかを考えるのが資金調達になります。

 三点目は「投資判断」になります。投資判断とは集めたお金をどう使って増やすかを考える事になります。投資を実行するのはリターンを生み出す為です。しかし投資対象がどれぐらいのリターンを生み出すかによって投資すべき金額や割合が変わってきます。そのためNPV(正味現在価値)やIRR(内部収益率)のような値を使って投資すべきか否かを判断することになります。これらの詳細は別記事で解説しますが、数字に基づいて判断を行うのが投資判断になります。

 四点目は「リスクとリターン」になります。リスクとリターンは投資をどれだけ分散させるかを考える事を言います。当然ですが、投資にはリスクが付き物です。どれだけしっかり予測しても不確実性をゼロにする事はできません。そのため常にリスク分散を考える必要があります。例えば価格変動の激しい株のように一般にリターンの大きい投資はリスクも高い傾向にあります。またリターンの小さい国債のような投資はリスクが低い分だけリターンも低い傾向があります。これらのリスクを勘案した上でどのようにリスク分散を行っていくのを考えるのがリスクとリターンになります。

1-4.ファイナンス的思考

 ファイナンスという概念は「定量的な要因」だけではなく「定性的な要因」も含まれています。

 ファイナンスという分野では不確実な未来において、どのような選択が最大の価値を生み出すのかを考える事になります。しかしそれは定量的な要因だけではありません。どうしてもファイナンスは数字を使うので数学的な論理思考というイメージがありますが、未来の不確実性を予測するのは定量的な要因だけではありません。例えば投資しようと考えている企業の経営者個人や業界の状態、顧客の声など、不確実性をカバーするには定性的な要因も考慮に入れる必要があります。これがファイナンス的思考の本質になります。

 またファイナンス的思考ではさまざまなシナリオに対してリスクの許容度も考えていく必要があります。例えば投資判断を行う場合に、確実に結果を予測する事は出来ないので、幾つかのシナリオを検討する事になります。シナリオとしてA・B・Cの三つのシナリオが想定できれば、それぞれの発生確率を予想した上で、事前に起こり得るそれぞれのシナリオに対する対処法を検討することができるようになります。例えばA・B・Cがそれぞれ20%・30%・50%の確率で発生すると予想できれば、それぞれのシナリオに対する対処法を事前に検討して準備をしておけば、最悪のシナリオに転んだとしても破綻を免れる事ができるようになります。このようにリスクの許容度を考えていくのもファイナンス的思考になります。

1-5.ファイナンスの本質

 このようにファイナンスというのは「お金の計算」ではなく未来の不確実性に対する「意思決定の科学」であると言うことができます。ファイナンスの概念を用いて思考することで投資に成功しやすくなるのは当然ですが、ファイナンスが理解できるようになるとリスクをコントロールする事ができるようになり、意思決定の精度が高まることになります。そのためあなたが財務部や経理部に所属していなくても、また個人投資家であっても、ファイナンスを学ぶことは不可欠であると言う事ができます。ファイナンスを学ぶことであなたのビジネスパーソン・投資家としての力は飛躍的に向上する事になります。

ファイナンス:まとめ

 あなたがビジネススクールの受験を行う過程で、研究計画書や小論文を書く時にファイナンス的思考ができれば、質の高い内容を記述することができるようになります。そのためファイナンスの理解をしっかりと深めてから研究計画書や小論文対策を行うようにして下さい。