コーポレートファイナンスとは?|MBA受験で必須の知識をやさしく解説

2025年07月18日

コーポレート・ファイナンス

 コーポレート・ファイナンスとは企業が価値の最大化を目的として資金を調達・管理・運用するための考え方と仕組みの事を言います。コーポレート・ファイナンスには以下の内容があります。「ファイナンスについては『ファイナンスとは?|MBA受験前に押さえたい“お金の意思決定”の基本』をご覧下さい。」

1-1.投資判断

 ー点目は「投資判断」になります。

 企業は数字に基づいてどのプロジェクトに投資すべきかを判断しています。企業は投資してお金を増やす必要があります。しかしその投資を経験や感覚で行う訳にはいきません。そのため徹底的に投資対象を分析してから投資の意思決定を行います。

 企業は「NPV(正味現在価値)」や「IRR(内部収益率)」といった指標に基づいて投資判断を行います。これらの詳細は別記事で解説させて頂きますが、企業はこれらの指標を使い最もリターンが高いと判断できるプロジェクトに投資を行います。企業が投資する対象としては有価証券や設備機器、不動産なども含まれますが、どの対象に投資するかを客観的な指標に基づいて投資を行うのが企業が行う投資判断になります。

1-2.資金調達

 二点目は「資金調達」になります。企業は投資家から資金調達を行いその資金を投資します。この企業が行う資金調達には次の二種類の方法があります。

 資金調達の一つ目の方法は「自己資本」を増加させる方法です。具体的には企業が新たに株式を発行し投資家にその株式を割り当てることで資金を調達する方法です。この場合は自己資本(新しい投資家のお金)が増加することになるので返済する必要はなくなります。しかし既存の株主の株式保有割合が減少するというデメリットがあります。

 資金調達の二つ目の方法は「他人資本」を増加させる方法です。具体的には企業が有利子負債(借入金)を増加させる事や、社債を発行して投資家からお金を集める事で資金を調達する方法などがあります。自己資本の増加と決定的に異なるのは、他人資本の増加は返済義務を伴うという点になります。銀行からお金を借りれば契約に基づいて返済する必要がありますし、社債を発行してお金を集めれば、同じく契約に基づいてお金を返済する必要があります。他人資本にはこのようなデメリットがありますが、メリットとしては、既存の株主の株式保有割合は減少しないというメリットがあります。

 これらが資金調達の詳細になります。企業は資金調達を行い投資をするものなので、資金調達は企業にとって非常に重要な概念になります。

1-3.資本構成

 三点目は「資本構成」になります。企業にとって資本構成というのは極めて重要な概念になります。何故なら資本構成が「資本コスト」を決定するからです。資本コストの詳細は次の通りです。

 資本コストは「株主資本コストと負債コストを加重平均した値」の事を言います。これを「WACC(ワック)」と言います。例えば企業が銀行から金利5%で30億円の借入金を調達したとします。そして投資家に新たに株式を発行し20億円の資金調達を行ったとします。このケースで投資家の求めるリターンは4%、法人税率は20%とします。このケースでは年間の支払利息は次の金額になります。

 

年間の支払利息

銀行 投資家
支払利息 30億円×5-(1-0.2)%=1億2,000万円 20億円×4%=8,000万円

よってこのケースのWACCは4%「2億円(1億2,000万円+8,000万円)÷50億円」になります。

 

 上記の例で銀行に対しする支払利息の値が変化しているのは、法人税の影響です。企業が債権者(銀行)に支払う利息は「支払利息」という科目で経費計上する事ができます。(損金算入も可能です。)そのため企業の法人税は支払利息を支払った後の「利益」に基づいて計算されます。しかし投資家に対するリターンは配当金になりますが、配当金は当期純利益(つまり税金を支払った後の利益)に基づいて計算されます。そのため負債に対する利息は減税効果があります。

 上記のように企業は資本構成を意識する事でより安い金利で資金を調達する事ができるようになります。これが企業が投資判断を行う上でアドバンテージとなるのは言うまでもありません。なぜなら投資のリターンが低くても調達する金利が低ければ利益を出す事が可能だからです。例えば投資のリターンが5%だとしても、上記のように4%で資金調達ができれば利益は出ます。しかしリターンが3%なら投資を行えば損失が発生する事になります。そのため資本構成というのは非常に重要なコンセプトになります。もちろん自己資本を増加させると株式の保有割合が変動し、それが経営に影響を及ぼすのは言うまでもありません。

1-4.配当政策

 四点目は「配当政策」になります。配当政策とは企業が利益をどのように株式に還元するかを決める方針の事になります。企業が利益を出すと配当という形で投資家に還元するか、そのまま内部留保として企業に再投資するか、またはその中間を取るかの三通りがあります。それぞれの詳細は次の通りです。

 まず企業が利益を出した場合は配当という形で投資家に還元する事ができます。当然ですが、投資家が株式を購入するのは利益を出す為です。そのため投資家から見ると配当は株式に投資をした結果として選られる正当な利益であり、これは国債の利回りや不動産の利回りに該当するものだと言えます。そのため企業は利益が出れば配当という形で投資家に還元することがあります。これが投資家への還元になります。

 次に企業が利益を出した場合は内部留保としてそのまま企業に再投資する事ができます。企業は資金を元手に事業を拡大していくので、手元の資金が充実しているに越した事はありません。そのため利益を企業に再投資(内部留保として残す)するという選択を行うこともできます。この場合は投資家へのリターンがないように思えますが、投資家は株価が上昇するというリターンがあるので、この選択肢を許容する(場合によっては積極的に奨励する)ことがあります。

 最後は企業が利益を出した場合は配当と内部留保の両方に振り分ける事ができます。これには毎期一定の金額を配当にして残りを内部留保とするケースや、利益の一定割合を配当にして残りを内部留保とするケース、また必要な設備投資などに投資をした後に残った利益を内部留保とするケースなどがあります。いずれも一長一短なので、企業は投資家から資金を集めやすくなるよう検討した上で方針を決定する必要があります。

 上記が配当政策の詳細になります。基本的に投資が求めるリターンは「配当」と「株価の上昇」の二つがあります。そのため配当政策は非常に重要な政策だと言えます。

1-5.企業価値評価

 五点目は「企業価値評価」になります。

 企業価値評価とは企業の価値を数値で評価するプロセスになります。企業価値は「M&A」「投資」「IPO」などを行う時に重要になります。何故ならこれらの行為を行うには企業の価値を数値化する必要があるからです。企業の価値とは企業が将来生み出すと考えられるキャッシュフローの現在価値の合計のことです。これを数値化したものを基に投資家は投資判断を行います。当然ですが、投資家は企業価値より低い金額であれば投資を行いますし、そうでない場合は投資は行いません。その意味で企業の目的は企業価値を高める事であると言えます。その価値を評価して投資を行うのが投資家(企業も含めて)になります。

 企業価値評価を行う場合は主に「DCF法」を使用するのが一般的です。DCF法の詳細は別記事で解説させて頂きますが、DCF法は企業価値評価を行うのに非常に多く用いられる方法になりますので、これをしっかりと学ぶ必要があります。また他には他の企業と比較する方法や、純資産をベースに評価を行う方法などがあります。企業価値次第で投資判断は大きく変わってくるので、このように企業価値評価を行うのもコーポレートファイナンスの重要な内容になります。

コーポレート・ファイナンス:まとめ

 以上がコーポレート・ファイナンスの詳細になります。企業経営・投資においてコーポレート・ファイナンスは極めて重要な内容になりますので、コーポレート・ファイナンスについてしっかり学ぶようにして下さい。