2025年09月10日
ビジネス市場(B to B:B2B)
マーケティングの対象は消費者市場だけではなく「ビジネス市場」(B to B: B2B)もあります。ビジネス市場の詳細はそれぞれ次の通りです。
1-1.ビジネス市場とは?
マーケティングには消費者市場と「ビジネス市場」があります。
ビジネス市場とは文字通り顧客が企業や商店などのビジネスである市場です。例えば企業が掃除機を製造し一般顧客に販売するのは消費者市場です。ただし企業が掃除機の部品を製造し、掃除機を作るメーカーにその部品を販売するのであれば、これはビジネス市場であると言えます。何故なら部品メーカーが製品を販売する相手は一般消費者ではなくビジネス(企業)だからです。このように企業がビジネスを相手に製品やサービスを販売する市場をビジネス市場と言います。
企業が消費者市場とビジネス市場のいずれを対象とするかは製品やサービスではなく企業のサプライチェーン上の立ち位置になります。例えば先ほどの掃除機の例で言えば、掃除機の部品の原材料を自社で全て入手して全ての部品を製造し、掃除機を製造して自社の小売店やオンラインショップで販売する企業は消費者市場を対象にしていると言えます。何故なら最終的には消費者に販売できないと売上を作る事ができないので、消費者市場を意識してビジネスを行う必要があるからです。しかしこれが掃除機の部品を作るメーカーや小売店に掃除機を販売する流通業者はビジネス市場を対象にしていると言えます。何故なら同じ掃除機を扱っていても、部品メーカーは部品を使用するメーカーが顧客になり、流通業者はその掃除機を購入してくれる小売店が顧客となるからです。これらの場合はいずれも対象がビジネス(企業)なので、ビジネス市場を対象にしていると言えます。この例が示す通り、企業が消費者市場とビジネス市場のいずれを対象としているかは扱っている製品ではなくサプライチェーン上の立ち位置になります。同じ掃除機を扱っている企業でも流通業者から仕入れて一般消費者に販売している小売店の場合は消費者市場を対象にしていると言えます。何故なら顧客は掃除機を購入してくれる一般消費者だからです。
企業が消費者市場とビジネス市場のいずれを対象としているかは扱っている製品・サービスによって決まる訳ではありません。上記の通り掃除機に関する仕事をしていても自社のサプライチェーン上の役割や立ち位置によっていずれの市場が対象になるかは変化します。掃除機を流通する業者はビジネス市場(小売店)を対象にしていますし、掃除機を小売店で販売する業者は消費者市場を対象にしています。これは掃除機ではなく別の製品・サービスでも同じです。そのため消費者市場とビジネス市場を分ける要因をしっかり理解しておいて下さい。
1-2.ビジネス市場の特徴
「ビジネス市場」は消費者市場と比べて次のような特徴があります。
1.購買数・購買量が多い。
一点目の特徴はビジネス市場は「購買数・購買量が多い。」というものになります。基本的にビジネス市場の購買数・購買量は多いものになります。何故なら一人で使用する訳ではないので必然的に数や量が多くなるからです。例えば特定の部品を製造する巨大企業が原材料を仕入れるとします。必然的にその量は膨大なものになります。何故なら企業は製造量に合わせて原材料を仕入れるので、製造量が多い大企業は必然的に多くの量を仕入れる事になります。よって購買量は多いものになります。もちろんこれにより規模の経済効果があるのは言うまでもありません。また例えば仮にコンビニエンスストアが飲料水を一般消費者に販売する場合は一回の売買でせいぜい1~2本程度になります。しかし大企業が自社の従業員がいつでも飲めるように福利厚生として飲料水を購入する場合、その数は膨大な数になります。このように企業の規模にもよりますが、一般的にビジネス市場は一般消費者より購入数・購買量が多くなります。
2.購入意思決定が複雑である。
二点目の特徴はビジネス市場は「購入意思決定が複雑である。」というものになります。ビジネス市場で製品・サービスを購入する企業では、購買の意思決定を行うのに多くの内部関係者が関係してきます。何故なら企業の購入は合理性が求められるものであり、特定の人間だけを利する行為であってはならないので、購買に関する権限が分散していたりプロセスが複雑化しているケースが多々あるからです。よって企業が購入の意思決定を行うまでに多くの時間が掛かる事になります。販売したい企業としては企業としての意思決定を勝ち取る必要があるので、金額にもよりますが、基本的に一般消費者に販売するよりは難しいものになります。
3.企業との関係性が重視される。
三点目の特徴はビジネス市場は「企業との関係性が重視される。」というものになります。ビジネス市場では一般消費者のようにフラットに製品・サービスを販売する事はできません。何故なら販売先企業との関係性が重要になるからです。例えば販売先の企業が自社のライバル企業から別の製品を購入している場合、自社の製品をその企業に売り込むのは難しいと言えます。何故ならライバル企業がプレッシャーを掛けてくるのは明白だからです。また販売先企業が特定のグループの系列である場合は、その系列と何らかのコネがある企業でないと販売するのは難しいと言えるでしょう。つまりビジネス市場では必ずしも価値と価格だけで購買の意思決定が決まるのではなく、相手企業との関係性が重要になります。あなたが企業の経営者である場合、ライバル企業と仲の良い企業から仕入を行うのはリスクがありますよね。このようにビジネス市場は消費者市場と比べて強くその企業との関係性が重視されると言えます。
1-3.ビジネス市場の分類
ビジネス市場は「分類」を押さえる事が重要になります。その種類は主に次の三つに分けられます。
まず一点目は産業財市場になります。これは製造業や建設業などの企業が原材料や部品・機械設備などを購入する市場を指します。例えば自動車メーカーが部品を仕入れる場合や、建設会社が原材料を調達する場合がこれに該当します。この市場では購買量が多く単価も高いので長期契約や継続的な取引関係が重要になります。また技術的な評価や性能が購買判断の中心になるので、製品スペックや信頼性の提示がマーケティング上の重要ポイントになります。
次に二点目はサービス市場になります。これはITサービス・コンサルティング・物流・人材派遣など、無形のサービスを提供する市場です。製品市場に比べると目に見えない価値を販売する事になるので契約書による具体的な成果の提示や、過去の実績の証明が購買決定に大きく影響します。サービス市場では信頼性や柔軟性、更には対応力が競争力の源泉になります。
最後に三点目は再販市場になります。ここでは小売業者や卸売業者が商品を購入し、最終消費者に販売することを目的としています。商品自体の価値だけでなく、物流や供給の安定性・取引条件の柔軟性などが重視されます。再販市場では販売チャネルの構築や流通戦略がマーケティングの中心的なテーマになります。
このように、ビジネス市場は産業財市場・サービス市場・再販市場の三つに分類することができます。またそれぞれ特性や購買プロセスが異なります。MBAでマーケティングを学ぶ時はこれらの違いを理解し、販売戦略の立案に反映させることが不可欠であると言えます。
ビジネス市場(B to B:B2B)
以上がマーケティングで押さえるべきビジネス市場の特徴になります。マーケティング戦略を検討する時は消費者市場とビジネス市場を分けて考える必要がありますので、これらの違いをしっかりと認識しておいて下さい。そして適切なマーケティング戦略が策定できるようになりましょう。