2025年11月29日
WACC（加重平均資本コスト）とは？
企業が有する資本コストは「WACC（加重平均資本コスト）」で算出します。WACCの詳細は次の通りです。
１－１．WACC（加重平均資本コスト）
まず「WACC（加重平均資本コスト）」とは、自己資本コストと他人資本コストを加重平均した割引率の事です。
WACC（加重平均資本コスト）とは、企業が事業活動を行う上で調達する資本全体のコストを平均的に表した指標です。企業の資本は大きく分けて自己資本（株主からの出資）と他人資本（銀行借入や社債などの負債）で構成されます。自己資本には株主が要求するリターン、他人資本には利息という形でコストが発生します。WACCはこれら両方のコストを企業全体の資本構成比率に応じて加重平均することで求められ、企業が新たな投資を行う際に必要となる最低限の期待収益率、すなわち割引率の目安となります。つまり、WACCは投資案件が企業価値を増やすかどうかを判断する基準として、財務管理や経営判断で非常に重要な役割を果たします。
WACCを理解する事は、企業価値評価や資本政策の戦略策定に直結します。自己資本コストと他人資本コストのバランスを意識することで、資本構成の最適化や資金調達の効率化が可能になります。たとえば、負債には利息支払いが伴いますが、税制上の減税効果もあり、自己資本と他人資本を適切に組み合わせることで、企業全体の資本コストを低減させることができます。さらに、WACCは企業が将来のキャッシュフローを割引いて現在価値を算定する際の重要な指標であり、投資判断やM&A、資本予算策定など多くの意思決定プロセスに不可欠です。財務戦略を学ぶMBA受験生にとって、WACCの概念理解は基礎中の基礎と言えます。
１－２．WACC（加重平均資本コスト）の計算式と例
次に「WACC（加重平均資本コスト）の計算式」は次の通りです。
WACC（加重平均資本コスト）は、企業が調達する自己資本と他人資本のコストを加重平均して求める割引率です。企業は資本を調達する際、株主からの出資や借入によって資金を集めますが、それぞれの資本にはコストが発生します。自己資本コストは株主が求める期待リターンであり、他人資本コストは利息として負担する費用です。WACCは、これらの資本コストに資本構成比率をかけて合算することで算出され、企業の投資案件や企業価値評価における割引率として使用されます。WACCを正確に計算することで、企業は投資判断の妥当性を評価し、資本コストを最適化する戦略を立てやすくなります。
WACCの計算式は一般的に以下の通りです。
ここで、Eは自己資本（Equity）の額、Dは他人資本（Debt）の額、Vは総資本（E + D）、r_Eは自己資本コスト、r_Dは他人資本コスト、Tは法人税率を表します。この式から分かる通り、自己資本と他人資本の割合に応じて加重平均を取り、さらに他人資本には税効果を反映させています。借入金利に対しては利息が税前利益から控除できるため、WACCの計算では (1 – T) をかけて実質的な資本コストを算出します。この税効果を考慮することで、負債を活用した資本コスト低減の効果も評価できます。
具体例で考えてみましょう。ある企業が総資本100億円を調達しており、そのうち自己資本が60億円、他人資本が40億円であるとします。自己資本コストr_Eが8%、他人資本コストr_Dが5%、法人税率Tが30%の場合、WACCは次のように計算されます。
この結果、企業は投資案件に対して6.2%以上のリターンが見込める場合に価値を創出できることがわかります。WACCは単なる平均ではなく、資本構成や税制効果を加味した実効的な資本コストである点が重要です。
もう一つの例を挙げます。総資本50億円、自己資本20億円、他人資本30億円の企業を考えます。自己資本コストr_Eは10%、他人資本コストr_Dは6%、法人税率Tは40%とします。この場合、WACCは以下の通りです。
この例では、負債比率が高く、法人税効果も大きいため、自己資本比率が高い場合よりWACCがやや低く抑えられています。資本構成を最適化することで、企業は資金調達コストを下げ、効率的な投資を実現できることが分かります。
WACCの計算式と例から分かる事は、企業が資本をどのように調達するかが、投資判断や企業価値に直結するという点です。WA自己資本だけでなく、負債を適切に活用することで資本コストを抑え、投資案件の価値を高める戦略が可能です。MBA受験生にとって、WACCの計算方法とその意味を理解することは、財務管理や企業価値評価の基礎を学ぶ上で欠かせません。さらに、異なる資本構成の企業での比較や、M&Aや資本政策の分析にも応用できる重要な指標です。
WACC（加重平均資本コスト）とは：まとめ
以上がWACC（加重平均資本コスト）の詳細になります。WACC（加重平均資本コスト）は、企業が調達する自己資本と他人資本のコストを加重平均した実効的な割引率であり、投資案件の採算性や企業価値評価の基準となります。自己資本コストは株主が求めるリターン、他人資本コストは利息ですが、負債には税効果があるため、WACCではそれを考慮して計算します。資本構成の比率によってWACCは変化し、適切な資本配分は資金調達コストの最小化や企業価値向上につながります。MBA受験生にとって、WACCの理解は財務戦略や投資判断を論理的に説明するための基礎力となります。MBA受験に向けて、WACCの概念と計算方法をしっかりと理解しておきましょう。