リソース・ベースド・ビュー(RBV)とは?MBA受験で押さえておくべき企業戦略の基本

2025年05月08日

リソース・ベースド・ビュー(RBV)

マイケル・E・ポーター氏が提唱した「ポジショニング・アプローチ」というコンセプトに対して、ジェイ・B・バーニー氏が提唱したコンセプトを「リソース・ベースド・ビュー(RBV)」と言います。RBVは企業が有する内部資源や内部の能力が競争優位の源泉となるという主張になります。ジェイ・B・バーニー氏は次の四つの内容により企業の競争優位が確立されると主張しています。

1-1.財務資本

 一点目は企業が有する「財務資本」になります。

 企業が利用できる金銭的な資本は競争優位の源泉になります。何故なら競合他社が有していない程の財務力があれば、広告・製造・仕入れ・運営等全ての面で経営を有利に進めることができるからです。当然、コスト以上のリターンを生み出す必要がありますが、金銭的な余裕があれば競合他社が打てない手を打つ事ができるようになり、結果としてそれが大きな強みとなります。例えば一度に多くの原材料を購入する事ができれば規模の経済性により一単位当たりのコストを下げる事ができますし、同じく一度に多くの広告を出せば効率的に広告を活用する事ができます。また不景気の時は他社よりも長く耐え忍ぶ事ができます。このように財務資本が充実していれば有利に経営を進める事ができるのです。

 財務資本で競争優位を実現する例としては次のようなものがあります。例えば新規事業への投資やM&Aによる事業拡大、先端技術への研究開発投資などは、十分な財務資本が必要になります。財務力がある企業は短期的な利益よりも中長期的な成長を優先した戦略が取りやすく、これが持続的な競争優位につながります。また資金の余裕は経営リスクを分散する手段にもなります。何故なら景気変動や不確実性が高い場合でも、財務資本があれば事業の縮小や撤退、逆に攻めの投資を柔軟に行うことができるからです。

 更に財務資本が充実していれば信用力の向上にもつながり、取引先や金融機関からの信頼を得やすくなります。これにより更なる借入が可能となり、仕入れ条件の改善や融資条件の優遇など、経営全般において他社より優位な状態を築くことができるようになります。金融機関は財務資本が充実している企業を好むので、財務資本の充実さは更なる財務の充実さをもたらします。結果として財務資本は単なるお金ではなく、企業の選択肢を広げ競争優位を築くための基盤となると言えます。

1-2.物的資本

 二点目は企業が有する「物的資本」になります。企業が有する不動産・工場や設備、原材料へのアクセスや物理的な技術等は競争優位の源泉になります。例えば小売店が人通りの多い駅前の立地を所有している場合は競合他社と比べて圧倒的に有利になります。また最新の設備や技術を有していたり、競合他社が模倣できない資源を入手できる場合は、同じくこれらは競争優位の源泉となります。

 物的資本は単に企業が所有する資産の量だけでなく資産の種類や活用方法によって競争優位が変化します。例えば最先端の生産設備や高度な製造ラインを有する企業は、より容易に製品の品質向上や生産効率の向上・コスト削減等を実現することができます。また原材料の安定的なアクセスを確保している場合は、供給不足や価格変動の影響を受けにくく、競合他社に比べてリスクを下げる事ができます。不動産を有している場合は立地も重要であり、消費者や取引先へのアクセスの良さは売上利益に直結します。このように資産の種類や活用方法によって実現できる競争優位は変化するのです。

 また物的資本は単なる資産の保有に留まらず、これらの資本を組み合わせて戦略的に活用することが重要です。例えば最新の設備を活かした新製品の開発や、立地を活用した販売戦略などは、他社が模倣するのが難しく競争優位を築く事ができます。このように物的資本は企業にとっての強みであり、戦略的に活用することで持続的な競争優位を築く強みになります。

1-3.人的資本

 三点目は企業が有する「人的資本」になります。例えば誰にも模倣できない技術力を有している人材がいれば、それが競合他社に対する競争優位の源泉になります。また営業力が高い人材が社内にいれば、同じくその会社の営業力は競合他社と比べて高いものとなります。このように企業が有する人的資本は強い競争優位の源泉となります。

 人的資本は単なる従業員の数ではなく、個々の能力・経験・知識・スキルの質などが全て企業の競争優位の源泉になります。特に専門性の高い技術者や営業力・マーケティング力に優れた人材は、競合他社が容易に模倣できない貴重な資源であると言えます。また人的資本は知識の蓄積を通じて、時間とともに企業独自の能力に成長していきます。何故なら多くの人材が知識を蓄積していくとそれが組織能力の一部になっていくからです。これは組織の知識資産が増えるから起こる現象ですが、これをナレッジマネジメントとも言います。

 更に人的資本は単独の価値だけでなく組織全体で協働することによって相乗効果を生み組織能力を高めます。リーダーシップのある人材が組織を率いる事で新規事業の創出や競争環境の変化に柔軟に対応する力も高まります。結果として人的資本は企業の持続的競争優位の源泉となり、それを財務資本や物的資本と組み合わせれば、他社には模倣できない独自の強みを構築することができます。人的資本への投資は長期的な成果を生み出すので組織が有する重要な資源であると言えます。

1-4.組織資本

 四点目は企業が有する「組織資本」になります。例えば企業の組織文化や能力、効率的なオペレーション力などは競争優位の源泉になります。また管理能力や企業が有するネットワーク(外部組織との関係)も同じく組織資本の一部であると言えます。このような組織力は複雑であればある分だけ模倣困難性が高いものとなり、強い競争優位の源泉となります。

 組織力とは企業が有する人的資本や物的資本を最大限に活用するための仕組みや文化を指します。これらは競争優位の重要な源泉となります。例えば効率的なオペレーションや標準化された業務プロセスは、コスト削減や品質向上につながり、他社が簡単に模倣できない独自の強みを生みます。また組織文化の共有は社員の価値観を統一し、行動に統一性をもたらす効果があります。更に外部パートナーや取引先との強固なネットワークも組織力の一部であり、協力関係や情報共有を通じて市場での優位性を高める源泉になります。管理能力や調整能力が高い組織は複雑な事業でもスムーズに運営できるので、これができない他社と比べれば強い競争優位性を有していると言うことができます。このように組織力は単なる内部の運営能力に留まらず、人的資本や物的資本とも関係しており、持続的で模倣困難性の高い競争優位を生み出す源泉となります。よって組織力を強化することは、企業が競争力を高める為に不可欠な要素であると言えます。

リソース・ベースド・ビュー:まとめ

 上記の通り企業が有する資源・能力は競争優位の源泉となります。企業は自社が有する資源・能力を分析し、意図的に競合他社に対する模倣困難性を高めていく必要があります。MBA受験では上記の中にある組織の強みをしっかり理解した上で企業戦略を策定するようにしましょう。また企業の競争優位の模倣困難性が低いと判断できれば上記の四つを意図的に高めていくようにしましょう。