2025年05月08日
MBA受験に必要な5つの力
あなたが志望するビジネススクールに合格するには以下の五つの力が必要になります。その詳細は次の通りです。
1-1.論理的思考力・課題設定力
1.論理的思考力
まず重要なのは「論理的思考力(ロジカル・シンキング)」になります。実はこの力が最も重要になります。何故なら論理的思考力が低いと合格水準の研究計画書と小論文を作り上げることができないからです。
論理的思考力とは物事を筋道を立てて結論を導き出す思考法になります。具体的には「意見→理由→例→結論」の流れで矛盾のない筋道を立て、結論を導き出す力のことです。論理的思考というのは単純なように見えて実はとても難しい思考法になります。何故なら他人を納得させられるよう客観的な視点を踏まえて論理を展開する必要があるからです。
例えば役員会で工場長が「我が社はもっと増員すべきだ。この規模の工場では常時〇人の人間が必要なのは常識だ。実際に工場現場は上手く回っていない。だからもっと増員すべきだ。」と述べた場合、一見論理が正しく見えても、この規模だと常時〇人が必要だという認識が間違っている可能性があります。そのため間違った認識を理由にしてしまうと間違った意見が採用されてしまうのです。このように最も恐ろしいのは、間違った認識を論理に入れてしまうと問題が解決しないという点になります。この場合はそもそも「この規模の工場では常時〇人必要なのが常識である。」という工場長の認識を改める必要があります。それができない場合は勝手な思い込みで判断している可能性があり、それが問題解決に繋がらないのは上記の通りです。
また別の例として「A社はマーケティング力を強化すべきだ。何故ならA社の製品が売れないのは価格設定が間違っているからだ。実際に競合は販売エリアごとに価格を変えている。だからA社はマーケティング力を強化すべきだ。」という意見を述べても、その「価格設定が間違っているのはマーケティング力が弱いからだ。」という着眼点が間違っている可能性があります。売れないのは価格設定が原因なのかもしれませんが、A社はこれ以上価格を下げることができず、その原因はオペレーションの非効率性により生まれた結果かもしれません。そうなると解決すべき問題はオペレーションの効率化である事が分かります。つまり見直すべきは「オペレーション」なのに「マーケティング」という間違った解決策を述べてしまっているのです。この着眼点が間違っているという状態も恐ろしい結果を招きます。何故なら論理的には正しくても着眼点が間違っていると問題は解決しないからです。このケースが厄介なのは「論理は納得できる。」という点です。着眼点が間違っていても、論理は正しいという事は起こり得ます。しかし最も重要なのは着眼点なのです。そのためロジカル・シンキングの力を身に付ける必要があります。
ビジネススクールの中にはロジカルシンキングの科目を開講しているスクールもありますが、基本的には入学前に論理的思考力を身に付けておく必要があります。何故ならMBA受験で課される研究計画書・小論文は正しい着眼点と認識を基に書く必要があるからです。研究計画書は出願前にテーマが与えられるので、それに対して自分で内容を作成し、出願時にその他の出願書類と併せて提出する事になります。研究計画書と聞くと研究のテーマについてだけ書くように感じるかもしれませんが、基本的に研究計画書には「志望動機」「修了後のキャリア計画」「過去の実績」等が含まれています。そのため研究計画書の作成には論理的思考力が不可欠になります。また小論文試験の答えも論理に記述する必要があるので、同じく論理的思考力が重要になると言えます。
また当然ですが面接試験でも論理的思考力が必要になります。何故なら自分の意見を述べた後に面接官が納得できる理由を述べる必要があるからです。ビジネススクールの面接試験は受け身になって答えを述べるだけの試験ではありません。「〇〇についてどう思いますか?」と聞かれた後に「〇〇だと思います。」と返答するだけでは不十分です。「〇〇だと思います。その理由は3つあります。一点目は・・・。」のように、自分で理由までしっかりと述べる必要があります。その意味で論理的思考力というのは極めて重要になります。論理的思考力がないと、整合性の取れた意見と理由を述べる事ができないからです。そのため面接試験で高評価を目指すという観点からも論理的思考力は重要になります。
2.問題発見・課題設定力
次に重要なのは「問題発見・課題設定力」になります。これは研究計画書(志望動機・キャリア計画・学習計画・研究テーマ)に必要になります。何故なら研究計画書では「自分が何を学びたいか?」「どんな問題を解決したいのか?」を明確に記述する必要があるからです。しかしこれが的を射てない内容だと充分な研究計画書とは言えません。例えばあなたは所属する企業が非効率なオペレーションを行っていると感じており、運営管理の効率化について学びたいとします。しかし実は問題なのは効率ではなく従業員のモチベーションの低さであるとします。この場合、運営管理の効率化について学んでも、卒業後に職場で学んだ力を活かす事ができません。何故なら課題が間違っているからです。
このように問題を発見し課題を設定する力がビジネススクールの受験には必要になります。仮に上記の例で研究計画書を作成し面接試験に臨んだら、課題の背景などを話している間に面接官に間違いを見抜かれてしまうかもしれません。この場合は特に圧迫面接の場合は致命傷になります。何故ならあなたが面接官の疑問に答えられなかった時点で、面接官のあなたに対する評価は極めて悪いものになるからです。そのため問題発見・課題設定力はビジネススクールの受験には不可欠になります。
1-2.経営学の専門知識
二点目は「経営学の専門知識」になります。ビジネススクールに入学した後に経営学の専門知識を身に付けるという認識は正しいようで実はそうではありません。
MBA受験で課される「研究計画書」「小論文試験」「面接試験」では、特にあなたが所属している企業・部署・業界の専門的な知識が必要になります。何故なら専門知識がないと研究計画書や小論文を正しく書くことができず、面接試験でもしっかり回答することができないからです。例えばあなたが広告業界にいて、広告会社で営業を行っているとします。そしてあなたはビジネススクールでこれから更に台頭するデジタル・マーケティングについて研究したいと考えているとします。この状態であなたに基本的なマーケティングの知識がないと合格水準の研究計画書や小論文を作成することはできません。何故なら一定の知識を基に過去に自分が行ってきた仕事の内容を分析し、これから学びたい分野について書かないと、面接官は準備不足であると判断するからです。
またビジネススクールというのは入学した後も、教授が手取り足取り教えてくれるような場所ではありません。与えられた講義や内容を基に自分で学んでいく意欲と姿勢が重要になるので、そもそも基礎知識が足りない状態では授業についていくことはできません。これがケースメソッド形式の授業なら尚更ついていくのが難しくなります。そのためビジネススクールの受験にも、また合格したとしても入学前の準備として経営学の専門知識を身に付けるのは不可欠であると認識して下さい。あなたの専門分野は当然ですが、受験前にそれ以外の分野も基礎知識は身に付けておきましょう。
1-3.自己分析力
三点目は「自己分析力」になります。これは特に研究計画書を書く時に重要になります。何故なら過去の自分のキャリアの中に志望動機や学習したい内容、研究テーマがあるからです。
あなたが研究計画書を作成する時は必ず自己分析を行う必要があります。過去にどのような仕事をしてきて、その中で何に悩み何に躓き、何を感じてきたのか。そしてどのように成長してきたのか。これらをしっかりと棚卸しして自分を分析する必要があります。このような自己分析は軽く簡単に行うだけで良いものではありません。徹底的に自己分析する必要があります。何故なら自己分析を行う事でしか、本当に価値のある志望理由書や学習計画・研究計画書を作ることはできないからです。基本的に志望動機や学習計画はあなたの過去と未来を一本の線で結びつける必要があります。
しかし自己分析ができていないとこれらを正しく行うことはできません。よって自己分析は決してやさしい作業ではなく、自分と向き合って過去をしっかりと思い出しながらこれまでの自分を棚卸しする必要があります。過去の自分のキャリアや仕事内容・悩んだ事など覚えていると思うかもしれませんが、実際には多くの人が充分に自己分析をする事ができていません。これは人間の認識の不完全さが関係しています。あなたにとって大した事がなかったと考えている仕事や問題でも、他人が聞いているとそれだけで充分に計画書が書ける内容だと思う事があります。また逆にあなたにとって重要だと認識している内容でも、他人が聞いていると、実はそこまで掘り下げるべきでもない内容だと感じるケースもあります。つまり適切な自己分析には客観的な視点が必要になるのです。そのため多くの人が躓く事になりますが、自己分析力はビジネススクールの受験において極めて重要な力になります。効果的なキャリアの棚卸し方法については次の記事「仕事の成果を棚卸しする方法|キャリアの“言語化”が驚くほど進む5ステップ」をご覧下さい。
1-4.コミュニケーション能力
四点目は「コミュニケーション能力」になります。特にビジネススクールはコミュニケーション能力が重要になります。何故ならグループワークやゼミなどで周囲の人たちと一緒に課題を進めていく必要があるからです。
ビジネススクールは座学で学ぶ形式の授業もありますが、基本的には各授業で数人のグループに分けられて、各グループに何かしらの共通課題が与えらえるのが一般的です。例えば経営戦略の授業であれば、複数の人たちとグループを作り、グループで最終課題(特定の企業の経営戦略を分析し改善案を発表する)をプレゼンテーションするなど普通に行われています。(それに加えて小テストや期末試験が課されるケースもあります。)つまりあなたはビジネススクール入学後に初めて出会った多くの人達と一緒にグループワークやグループでディスカッションを進めていく必要があるのです。グループワークがないビジネススクールは存在しません。
しかしグループワーク時にあなたのコミュニケーション能力が低いと、周囲と上手く課題を進めていくことができません。これはビジネススクールで学んでいくには致命的な弱みとなります。何故なら初めて出会った人たちと協力し合って共通の課題を進めていくのがビジネススクールだからです。そのためあなたのコミュニケーション能力が低ければ入学してもそれが致命傷となります。また教授陣も周囲と上手く進めていけない学生を嫌煙する傾向があります。何故なら周囲と一緒に上手くグループワークを進めていけない学生の指導をしている時間などないからです。そのため最低限のコミュニケーション能力があるのは必要条件になります。あなたが自分のコミュニケーション能力が低いと感じている場合、コミュニケーション能力を少しでも高めてから試験に臨むようにしましょう。
1-5.英語力
五点目は「英語力」になります。出願時に英語スコアの提出が課されているビジネススクールはもちろんですが、そうでないビジネススクールに入学する場合も英語力は重要になります。
まず出願時に英語スコア(TOEIC/TOEFL/ILETS)の提出が課されているスクールは高い英語力があると有利になります。何故ならスコアに対して合否に直結する定量的な評価が下されるからです。ビジネススクールにもよりますがTOEICなら700~800点は欲しい所です。もちろん英語力だけで合否が決まる訳ではありませんが、英語力は高いに越したことはありません。そのためあなたが英語のスコアに不安を感じている場合、すぐにでも対策を開始して最大限まで点数を高めていくようにしましょう。
またたとえスコア提出が不要なビジネススクールでも英語力を高める事は不可欠になります。何故ならビジネススクールは入学後に「英語の資料」「英語のIRレポート」「英語のテキスト」などを読む機会が多くあるからです。これは経営学というのは欧米を中心に発展してきた学問である事と関係しています。フレデリック・テイラーの「科学的管理法」やピーター・ドラッカーの「マネジメント論」、またハーバード大学で発展したケースメソッド等、経営学は欧米を中心に発展してきた歴史的背景があるので、あなたの英語力が低い場合はアクセスできる情報源が限られる事になります。そうなると幅広い視点で事例を分析し思考することができなくなります。その意味で入学審査時はもちろんですが、入学後も見据えて英語の勉強は意識して行うようにしましょう。
MBA受験に必要な5つの力:まとめ
上記の通りビジネススクール(MBA)の受験には「論理的思考力・課題設定力」「経営学の専門知識」「自己分析力」「コミュニケーション能力」「英語力」が不可欠であると言えます。そのため国内ビジネススクールの受験を決めたらすぐにでもこれらの能力向上を意識するようにしましょう。そしてあなたが本当に入学したいビジネススクールへの合格を勝ち取って下さい。上記の対策や英語の対策でお悩みであれば当スクールにいつでもご連絡下さい。