2025年06月25日
組織の三つの成立条件
組織が成立するには以下の三つの条件が必要になります。
1-1.組織目的
組織が成立するには「組織目的」が必要です。
何故なら目的がないと意思決定や行動の指針がなくなり、組織人は個々に行動してしまうからです。例えば警察は「犯罪を取り締まる。」という目的を有しています。学校は「子供を育てる。」という目的を有しています。病院は「患者の病気を治す。」という目的を有しています。このように組織は目的を有することで成立しています。では企業の目的は何かと言えば「自社のミッションを追求する。」ことだと言えます。会社組織は業種・業界によってさまざまな組織があるので、全ての組織が同じ目的を有している訳ではありません。しかしミッションを追求することが企業の目的ではあっても、以下の三つの状態は必ず維持する必要があります。
1.経済的な目的の実現
これは最も重要な条件であると言えます。何故なら企業は営利組織なので、利益を出さないと存続できないからです。また投資家・債権者にリターンを生み出す必要もあるので、利益を生み出すのは不可欠です。
2.組織人の個々の目的の実現
これも同じく極めて重要な条件であると言えます。何故なら組織人は個人の目的を実現する為に組織に参加しており、その目的が実現できないと組織に留まり続けることはないからです。つまり組織は組織自体の目的を有するのと同時に、組織人個々の目的を実現するための手段であるとも言えます。最も理想の状態はそれぞれの目的を一致させることです。
3.社会的目的の実現
最後の条件も極めて重要な条件になります。組織は社会の中に存在しており、社会に価値を生み出すからこそ存在する価値があると言えるからです。例えば組織と組織人が自己目的の追求のために質の悪い製品・サービスを製造したり、またその過程で社会に有害なものを発生させてしまうと、社会に不要な存在になりいずれは消え去ることになります。そのため組織は社会的な目的をしっかりと実現させる必要があると言えます。
1-2.コミュニケーション
組織が成立するには「コミュニケーション」の存在が不可欠です。
組織は分業を行います。分業し協業する事で組織は効率敵に目的を実現する事ができます。またその分業を円滑に進めるにはコミュニケーションによる調整が必要です。組織人同士がコミュニケーションを行うことで分業を効率的に進めることができるようになります。しかし例えば組織内部の人間関係が悪く派閥争いや衝突が絶えない場合、組織人同士のコミュニケーションはなくなり、組織が一丸となって共通の目標に向かうのが難しくなります。これは容易にご想像頂けると思います。このような場合は最終的に組織が割れたり抜ける人も出てくるようになります。そのためコミュニケーションにより組織内部の調整をしっかり行う必要があります。それにより組織は効率的に分業することができるようになります。ただし無秩序にコミュニケーションを取ると逆効果になることもあるので、事前に役割や権限を定めておくとよりコミュニケーションが効果的になります。
組織におけるコミュニケーションは単なる情報交換ではなく調整の仕組みとしての役割を担います。特に分業を前提とする組織では、各自が自分の役割を理解するだけでは十分ではなく、他者の業務状況や意思決定とも連動する必要があります。そのため、報告・連絡・相談といった基本的なプロセスを確立し、適切なルートで情報が流れる仕組みを作ることが欠かせません。これにより、業務の重複や抜け漏れを防ぎ、全体として効率的に目的を達成できるようになります。
一方で過剰なコミュニケーションや不適切な情報共有は逆効果になり得ます。必要以上に会議が増えたり、意思決定が遅延したりすれば、組織の機動力が失われてしまいます。したがって、コミュニケーションを効果的に行うには、組織構造や役割分担を明確化し、権限に応じた意思決定プロセスを整備することが重要です。つまり「誰が何を決めるのか」「どの範囲で情報を共有するのか」といったルールをあらかじめ設計しておくことで、組織内のやり取りが整理され、摩擦が減少します。
加えて健全な組織文化の醸成も大切です。信頼関係や相互尊重の意識がある組織では、自然とオープンなコミュニケーションが育まれます。逆に不信感が蔓延すると、いくら制度を整えても情報は滞り、形骸化してしまいます。その意味で、リーダーの姿勢や日常的な対話が組織の雰囲気を形作る大きな要因となります。
結局の所、コミュニケーションは組織を支える血流のような存在です。適切な流れを維持し、過不足なく循環させることで、組織は健全に機能し、分業と協業の相乗効果を発揮できるのです。
1-3.貢献意欲
組織が成立するには組織人の「貢献意欲」が必要になります。
何故なら組織人は自分の目的を実現するために組織に参加しているからです。組織人が自分の目的が実現できないと考えた場合、その組織に参加する事はありません。もちろんこれが法律的な義務を伴う組織(例えば徴兵制度がある国家の軍隊等)であれば別ですが、資本市場社会における株式会社に参加する個人は自分の目的が実現しないと、その組織に参加することはありません。そのため組織は常に組織人の目的を把握し、可能な限り組織人の目的と組織の目的を一致させる必要があります。またこれらの一致が難しい場合は、それぞれの目的が実現しやすくなるよう、バランスを取っていく必要があります。このように企業と従業員の目的を一致させて従業員の意欲を高めることを「従業員エンゲージメントの向上」と言います。このように組織は組織を成立させるために組織人の貢献意欲を高めていく必要があります。それにはインセンティブ制度の設計や一体感の醸成などを行うことが効果的です。
組織人の貢献意欲を高める為には組織に所属する理由と目的を明確に理解できる環境を整える事が大切です。人は自らの役割や貢献が組織全体にどう結びついているかを理解できると、主体的に動こうとする傾向があります。したがって、経営者やマネージャーは組織のビジョンやミッションを共有し、個々の仕事がその実現にどう寄与するのかを具体的に示すことが求められます。
また貢献意欲を支える仕組みとしては評価制度や報酬制度といったインセンティブ設計が欠かせません。公正かつ透明性のある評価は従業員の納得感を高め、報酬や昇進と結びつけることで努力を後押しします。さらに金銭的インセンティブだけではなく、キャリア形成の機会、スキル向上のための教育制度、柔軟な働き方の導入なども、従業員の目的と組織の目的を近づける効果があります。
一方で制度だけでは不十分であると言えます。組織に一体感や帰属意識を持たせる取り組みも不可欠です。例えばチームビルディング活動や、経営層と現場の双方向コミュニケーションは、従業員が「自分も組織の一員として尊重されている」と感じるきっかけになります。このような心理的安全性が確保されると、従業員は積極的に意見を出し、組織の成長に貢献するようになります。
結局の所、組織が持続的に発展するためには、個人の目的と組織の目的を調和させて従業員が意欲を持って参画できる環境を整える事が不可欠です。エンゲージメントの高い組織は、外部環境の変化にも柔軟に対応でき、長期的な競争力を維持することができるのです。
組織の三つの成立条件:まとめ
上記の通り組織には三つの成立条件があります。これらを理解することは会社組織について考える上で非常に重要になりますので、MBA受験に向けて、しっかりと理解した上で覚えておくようにしましょう。