MBAで学ぶホリスティック・マーケティングとは?顧客価値を最大化する全体最適のアプローチ

2025年06月26日

ホリスティック・マーケティングとは?

1-1.ホリスティック・マーケティングの定義

 「ホリスティック・マーケティング」とは、マーケティングのプログラム、プロセス、活動それぞれの幅と相互依存性を確認した上で、マーケティングのプログラム、プロセス、活動を開発・設計し実行することを言います。

 ホリスティック・マーケティングは企業活動全体を部分的ではなく統合的に捉える発想です。個別のマーケティング施策を積み上げるだけではなく、戦略・組織・顧客体験を含めた全体像を設計し、相互に影響し合う要素を最適化することが求められます。この考え方により、企業は短期的な売上向上だけでなく、長期的なブランド価値や顧客満足度を高めることができます。また部門間の連携やステークホルダーとの協働を重視するので、組織全体の一貫性が高まり、変化の激しい市場環境にも柔軟に対応できるようになります。MBA受験においては、ホリスティック・マーケティングは「全体最適」という観点からビジネスを分析する力を養う上で重要であり、ケーススタディや論述問題でも自分で応用できるようになる必要があります。ホリスティック・マーケティングを考える時は次の四つのマーケティングを考える必要があります。

1-2.ホリスティック・マーケティングに含まれるマーケティング

 「ホリスティック・マーケティングに含まれるマーケティング」は以下の四点になります。

1.関係性(リレーションシップ)マーケティング

 「関係性(リレーションシップ)マーケティング」とは取引を維持する為に顧客点供給業者・流通業者・その他のパートナーとの満足のいく長期的な関係を築く事を言います。企業が関わる組織と良好な関係を築くことで、企業は長期的に顧客に価値を提供することができるようになります。これがリレーションシップ・マーケティングです。リレーションシップ・マーケティングの本質は「顧客生涯価値(Customer Lifetime Value)」を最大化する点にあります。リレーションシップを強化する事で単発的な取引ではなく、顧客が継続的に商品やサービスを利用するようになり、長期的に安定した売上を出す事が可能になります。そのためには、顧客のニーズを理解し、パーソナライズした体験を提供することが重要です。またサプライヤーや流通業者との信頼関係を強化することで、安定した供給体制や効率的な流通を実現し、結果的に顧客への提供価値を高める事もできます。更に近年ではデジタル技術の活用により、データに基づいた顧客理解や双方向的なコミュニケーションが可能となり、関係性の深化が一層進んでいると言えます。MBA受験においても、この考え方はマーケティング戦略論やケース分析で頻出する重要テーマになります。

2.統合型(インテグレーテッド)マーケティング

 「統合型(インテグレーテッド)マーケティング」とは企業の全てのマーケティング活動を一貫性を持って連携・統合し、顧客に一貫性のある体験やメッセージを提供することを言います。企業はさまざまな方法で顧客にアプローチしますが、これらに一貫性がなければ顧客は正しく企業を理解することができなくなります。そのためこれらの統合が重要であり、それを行うのが統合型マーケティングになります。統合型マーケティングの目的は、広告・販売促進・広報・デジタルメディアなど多様なチャネルを横断して、顧客に一貫したブランド体験を届けることにあります。例えば、テレビCMやSNS広告、店舗での接客、公式ウェブサイトの情報がそれぞれ異なるメッセージを発していれば、顧客は混乱し、ブランドに対する信頼感を失ってしまいます。逆に各施策が統合されていれば、共通の価値やストーリーを伝えることで、顧客は安心感を得てブランドを強く認識するようになります。更に統合的なアプローチは企業内部の部門連携を促進し、マーケティング資源の効率的な活用にもつながります。MBAの学習では、こうした全体最適の考え方を理解することが、ケーススタディでの戦略立案や小論文試験対策につながります。

3.内部(インターナル)マーケティング

 「内部(インターナル)マーケティング」とは企業が外部の組織を満足させる為に内部の従業員を満足させたりモチベーションを高めたりする活動を言います。これは例えば従業員エンゲージメントを高める為に、従業員の目的が達成できるように取り組んだり、組織文化や企業の価値観等を定着させる事などが挙げられます。これにより従業員の満足度が上がり、結果として従業員の意欲が高まり外部に与える影響が良くなっていきます。これが内部マーケティングになります。内部マーケティングは従業員を顧客とみなすという発想に基づいています。企業が外部に対して一貫性ある価値提供を実現するためには、まず内部の従業員が自社のビジョンや価値観を理解し、それに共感して行動できる状態を作る必要があります。例えば、研修やキャリア開発の機会を提供することで従業員の成長を支援したり、評価制度や報酬体系を整備してモチベーションを高めること等が挙げられます。また従業員同士のコミュニケーションを活発にし、心理的安全性の高い職場環境を整えることも重要です。こうした取り組みは従業員エンゲージメントを高めサービス品質や顧客対応に直接反映されます。MBAの学習では内部マーケティングは組織行動論や人的資源管理とも密接に関連しており、全体最適な経営戦略を考える上で欠かせないコンセプトであると言えます。

4.社会的責任(ソーシャル・レスポンシブル)マーケティング

 「社会的責任(ソーシャル・レスポンシブ)マーケティング」とは企業が利益を追求するだけでなく社会や環境に対する責任を認識しながらマーケティングを行う事を言います。例えば、製品を製造するにしても環境に良い製品を製造したり、廃棄物が少なくなるよう工夫して商品設計を行う活動などがこれに該当します。企業は大きな社会的責任を負っており、これに対応するのが社会的責任マーケティングになります。社会的責任マーケティングは、単に環境に対する配慮にとどまらず、企業活動全般を通じて社会に対してポジティブな影響を与えることを目指すものです。例えば労働環境の改善や公平な取引の実践、地域社会への貢献活動、持続可能なサプライチェーンの構築なども含まれます。こうした取り組みは、企業のブランド価値向上や顧客からの信頼獲得にも直結します。また近年は消費者の価値観が多様化し、社会的・環境的な配慮を重視する購買行動が増えているので、CSR(企業の社会的責任)活動とマーケティング戦略を統合することが競争優位性につながります。更に投資家や取引先・従業員などステークホルダー全体に対しても、企業の持続可能性や倫理性を示す重要な指標となります。このように社会的責任マーケティングは、企業が長期的に成長し続けるための戦略的アプローチとして不可欠なものであると言えます。

ホリスティック・マーケティングとは?:まとめ

 多くの人が企業のマーケティングを考える時に、顧客に対する価値提供だけに意識が集中する傾向があります。しかしホリスティック・マーケティングの考え方ができないと、本当の意味で顧客を満足させることもできなければ、長期的に繁栄することも難しくなります。そのためMBA受験生はホリスティック・マーケティングの視点を常に意識して企業を分析するようにしましょう。