交換取引と損益取引の違いをわかりやすく解説|MBA受験生必見の基礎知識

2025年07月03日

交換取引と損益取引

取引には交換取引と損益取引の二種類があります。それぞれの詳細は次の通りです。

1-1.交換取引とは?

 「交換取引」とは資産・負債・資本の間で増減が発生する取引です。

 交換取引は会計上の利益や損失を伴わない取引になります。特定の資産と別の資産を交換したり、また特定の負債と特定の資産を交換しただけの取引を指します。例えば現金で家を購入した場合、現金はなくなりますが家という資産が残ります。つまり現金と家を交換したという事になります。また借入金を現金で返済した場合、現金はなくなりますがその分だけ借入金も減少します。これも資産と負債を交換したという事になります。一般的に現金がなくなれば損失が発生したような気がしますが、実はその代わりに別の資産を手にしていたり、負債が減少していたりする取引は多々あります。このような取引を交換取引と言います。交換取引は交換時には損益が発生していないという点が特徴になります。

 また交換取引の対象は同等の価値があるとみなされます。例えばあなたが100万円で車を購入した場合、100万円の現金はなくなりますが、100万円の車という資産が手に入ります。この車をその時点で転売すれば100万円で売れるかどうかは分かりません。一般的に新車であれば転売時に売却価格は落ちると考えられますが、会計上は100万円の車と交換したという扱いになります。また仮にあなたが飲食業を営んでおり、現金で材料を購入すると、同じく現金と同額の材料を交換したという扱いになります。これも常識的に考えると一度購入した材料を同価格で転売するのは不可能だと言えますが、会計上はこの時点では現金という資産と材料という資産を交換したという扱いになります。これが交換取引になります。交換取引は同等の価値があるとみなします。

1-2.損益取引とは?

 「損益取引」とは収益や費用が発生し最終的に利益又は損失が発生する取引です。

 損益取引では実際に利益や損失が発生します。何故なら実際の取引は収益と費用が一致しないからです。例えば小売店が仕入れた商品を販売したとします。仮に仕入価格が100円で販売価格が200円なら、店舗は200円(収益)-100円(費用)=100円(利益)で100円の利益が発生した事になります。また例えば病院が医療サービスを提供した場合、病院が受け取る対価は収益であると言えます。またその医療サービスを提供するのに発生したコストは費用であると言えます。その差額がプラスであれば利益、マイナスであれば損失が発生します。これが損益取引になります。これらの例だと例えば店舗は別の費用(広告宣伝費や一般管理費、地代家賃等)・病院も別の費用(人件費・医療設備)が発生する事になり、実際の費用計算はもう少し複雑になりますが、基本的は上記の通り利益や損失のいずれかが発生する事になります。

 損益取引の結果は損益計算書(P/L)で計算する事になります。収益が上がれば売上に計上し経費が発生すれば費用に計上します。損益計算書の計算では売上の発生時に経費を計算する訳ではないので、一定期間内の売上と経費を計上してから利益や損失を計算する事になります。(一部の例外として仕入れたものを販売する企業であれば、売上発生と同時に仕入を差し引き売上原価を計上します。)そのため利益や損失は一定期間内の取引の合計から計算する事になります。また利益や損失は貸借対照表にも影響を与えます。(詳しくは「貸借対照表と損益計算書はどう関係しているのか?」をご覧下さい。)これが損益取引になります。企業は利益を出さないと存続する事ができないので、損失ではなく利益を出し続けるのが絶対条件であると言えます。

1-3.交換取引と損益取引の主な違い。

 「交換取引と損益取引の違い」は取引の目的と会計処理の内容にあります。

 上記の通り、交換取引は企業が資産を他の資産と交換するもので、主に資産の移動に焦点が当てられます。例えば製品を納入して代わりに原材料を受け取る場合が該当します。この取引では売上や費用といった損益は基本的に発生しません。一方で損益取引は企業の収益や費用が発生し、利益または損失が生じる取引を指します。商品販売やサービス提供など、企業の経営成績に直接影響を与える活動が該当します。会計上は、損益取引は収益や費用として損益計算書に反映されるのに対し、交換取引は資産の増減として貸借対照表に記録される点が大きな違いです。企業の取引について考える時はこれらの違いについてしっかり考えるようにしましょう。

 一般的に企業は利益を追求しますが、利益を出せるかどうかは取引の性質を理解する必要があります。交換取引で利益を出すことはできないので、損益取引で利益を出す必要があります。しかしだからと言って合理性を欠いた交換取引を行うと、企業は倒産リスクに晒されることになります。例えば企業が借入金を減らして現金の保有率を低くすれば、支払いが出来なくなる可能性があります。また仕入を増加させて現金を減少させると同じように倒産リスクは高まります。このようにいずれが重要かという問題ではなく、それぞれが重要な取引になりますので、これらの違いをしっかりと覚えておくようにしましょう。そして経営判断に活かせるようになりましょう。

1-4.MBA受験と入学後における重要なポイント

 まずMBA受験では交換取引と損益取引の違いを理解している事が大前提となります。

 MBA受験の小論文試験や研究計画書・面接試験ではこれらを理解している事を前提として問題が作られたり、問いが与えられたりするので、これらを知っているのは当然であるべきです。そうでないと収益認識すべきタイミングや、実際に利益を生みだす取引が理解できないからです。これがもし財務諸表を読み解く必要がある問題であれば尚更重要になると言えます。MBAの試験問題でも、交換取引の会計処理やその財務諸表への影響を理解しているかが問われることがあります。よってMBA受験生は収益認識のタイミングや費用の対応関係、そして利益計算の基本原理をしっかり押さえる必要があると言えます。

 またこれらの概念はビジネススクール(MBAプログラム)の入学後も重要になります。基本的にMBAプログラム(ビジネススクール・大学院)というのは小学校のように手取り足取り教えてくれる場所ではないので、授業に必要な知識は自分で獲得していく必要があります。MBAのケーススタディや問題演習では、交換取引と損益取引を正確に区別し、それぞれの取引が財務諸表にどのように影響するかを理解していることが求められます。また特定の取引が単なる資産の交換に過ぎないのか、それとも収益や費用を生み出す損益取引なのかを見極めることは、適切な会計処理や経営判断の前提となります。これらを正しく理解した上で経営判断の議論を行うと、効果的なディスカッションを行う事ができるようになります。また経済学の視点からも、これらの取引の性質を理解することは重要です。交換取引は市場での物々交換の原型として捉えられ、一方で損益取引は価値の創造や分配のプロセスとして分析されます。ビジネススクールでは経済学と会計学の両方を学ぶため、この基礎理解が学習の土台になります。

交換取引と損益取引:まとめ

 以上が交換取引と損益取引の概要になります。上記の通りこれらを理解しておく事はMBA受験でも入学後も不可欠であると言えます。そのためこれらをしっかり理解した上でMBA受験に臨むようにして下さい。そして入学後もこれらを知っているのを前提として学習や演習に取り組んで下さい。