STPマーケティングとは?MBA受験生が押さえるべき3つの基本戦略を徹底解説

2025年07月09日

STPマーケティングとは?

「STPマーケティング」の詳細は次の通りです。

1-1.Segmentation(セグメンテーション)

 STPマーケティングのSは「セグメンテーション(Segmentation)」になります。

 市場の細分化を行うのがこのセグメンテーションになります。市場にはさまざまな顧客がいます。そのセグメントは「年齢」「性別」「居住地」「年収」「世帯人数」「価値観」など多くの要因で分類することができます。このように市場をいくつかの要因でグループに分けるのがセグメンテーションになります。例えばスーツであれば、ブランド志向者用、男性又は女性用、低価格帯用、デザインに拘りがない層用、社会人用、就職活動用、若者用、中年用などいくつかのグループに分類することができます。セグメンテーションで重要なのはセグメントを絞り込み過ぎない点になります。セグメントを絞り過ぎると極めて少数の人しか該当しなくなるので、あくまで特定の特徴(製品仕様や価格等)が受け入れられる境界線をセグメントと定義するようにしましょう。例えば男性用と女性用のスーツは異なるので「性別」はセグメントに含めるべきです。ただ「居住地」は地域によって寒暖差があるものの、東京都と大阪府に住む人を分ける必要があるとは考えにくいです。そのため居住地は一部の寒暖差の激しいエリアだけ分けるべきかもしれません。このようにセグメンテーションはしっかりと要因を検討する必要があります。

 セグメンテーションの次に重要なのが、その中からターゲット市場を選定するターゲティングになります。セグメンテーションによって市場を細分化しても、すべてのセグメントを対象にする必要はありません。企業が持つリソース(資金、人材、技術力)やブランドの強みと照らし合わせて、最も効果的にアプローチできる顧客層を絞り込むことが大切です。例えばスーツ市場であれば、「就職活動用のスーツを求める大学生」というターゲットを選べば、価格を抑えつつ清潔感を重視した商品展開や、大学周辺での広告展開が効果的になるでしょう。またターゲティングでは市場規模や成長性も重要な判断材料となります。大きな市場であっても競合が激しい場合は勝ち残りが難しく、一方でニッチ市場であっても自社の強みが生かせれば高い収益性を実現できます。そのため「どの顧客を狙うか」という選択は、単なるマーケティング活動にとどまらず、企業の経営戦略全体にも深く関わってきます。更に選んだターゲット市場に対して自社の立ち位置を明確にする「ポジショニング」が次のステップになります。ポジショニングでは競合商品との差別化を図り、顧客の心の中で「自社の商品はこういう特徴を持っている。」と印象づけることが目的です。例えば「高級志向」「コストパフォーマンス重視」「機能性追求」など、消費者に一貫したメッセージを届けることが重要になります。

1-2.Targeting(ターゲティング)

 STPマーケティングのTは「ターゲティング(Targeting)」になります。

 ターゲティングは自社がどのセグメントを狙うのかを決定するプロセスになります。ターゲティングで重要なのは自社が最も価値を提供できるグループを選ぶことになります。例えばスーツの例だと、女性向けの洋服を作っている企業なら女性向けのスーツを作るべきですし、高給ブランドのメーカーならブランド志向者用のスーツを作るべきです。何故ならその方が企業の有する技術や経験・その他の強みを発揮できるからです。また一般的に企業は全てのセグメントをターゲットにするのは不可能なので、セグメントは絞り込んで選択する必要があります。これがターゲティングになります。基本的にターゲティングを行っていない事業などありません。全ての人に向けたビジネスなど存在しないからです。これは人間にはそれぞれ向き不向きがあるのと同じで、全ての企業(人間の集合体)にも向き不向きがあるので、しっかりと意識してターゲティングを行う必要があります。

 ターゲティングを行う際には選んだセグメントの規模や成長性、そして競合状況を慎重に見極める事が求められます。例えば市場規模が大きくても競合が多数存在すれば差別化が難しくなり、逆に市場規模は小さくても競合が少なく、自社の強みを十分に発揮できるセグメントであれば高い収益を見込める可能性があります。そのため単純に「大きい市場を狙えばよい。」というわけではなく、自社の資源やブランド戦略と合致するかどうかを総合的に判断する必要があります。またターゲティングには大きく分けて三つのアプローチがあります。一つ目は「集中型ターゲティング」で、特定のセグメントに集中してリソースを投入する方法です。二つ目は「差別化型ターゲティング」で、複数のセグメントに異なる製品やサービスを展開するやり方です。そして最後が「無差別型ターゲティング」で、セグメントを細かく分けず大多数に共通する価値を提供する方法です。ただし現代の市場環境では顧客ニーズが多様化しているため、差別化型や集中型が選ばれることが多いといえます。更にターゲット市場を明確に定義することで、広告や販売戦略の精度も高まります。誰に向けてメッセージを発信しているのかが明確になれば、顧客の心に届く表現やチャネル選択が可能になり、結果としてブランドのポジショニングにも一貫性を持たせることができます。

1-3.Positioning(ポジショニング)

 STPマーケティングのPは「ポジショニング(Positioning)」になります。

 ポジショニングとは市場の立ち位置を明確化する事になります。競合他社と差別化し、顧客からどのように違いを認識して頂くかを決めるのがポジショニングです。例えばスターバックス社は自社をコーヒー店ではなくサードプレイス(家庭・職場の次)と位置付けています。これによりスターバックス社は良質のコーヒーを提供するだけではなく、居心地の良い場所を提供するというポジショニングを行っていると言えます。このようにして他のコーヒー店とは異なるポジショニングを意図的に行っているのがスターバックス社になります。また例えば喫茶店がビジネスパーソンの休憩場所と位置付けたり、学生達が交流を広げる場などのように位置付けていけば、競合他社と異なるポジションに立つことになり、価格競争から脱することが可能となります。これがポジショニングになります。

 ポジショニングを成功させるためには、まずターゲット顧客の価値観やニーズを深く理解する事が不可欠です。顧客が何を重視して商品やサービスを選んでいるのかを把握し、その期待に応えながら競合との差異を明確化する必要があります。その際に「価格が安い」「品質が高い」といった要素だけでなく、「安心感」「体験価値」「ブランドストーリー」といった情緒的な側面も重要な差別化要因となります。ポジショニングを整理する有効な方法の一つに「ポジショニングマップ」があります。これは縦軸と横軸に顧客が重視する要素を設定し、自社と競合を比較して市場での立ち位置を可視化する手法です。例えば「価格」と「品質」を軸にした場合、自社が低価格高品質を狙うのか、それとも高価格でブランド力を訴求するのかといった方向性を明確にすることができます。更にポジショニングは一度決めたら終わりではなく、市場環境や顧客の価値観の変化に合わせて調整が必要です。消費者のライフスタイルが変化すれば、求められる体験や価値も変わります。そのため継続的な市場調査や顧客とのコミュニケーションを通じて、常に自社の立ち位置を点検し、適切に修正していくことが重要です。

STPマーケティングとは:まとめ

 以上がSTPマーケティングの詳細になります。STPマーケティングとは上記の三つを決めていくプロセスになります。これらはマーケティングには不可欠なプロセスになりますので、MBA受験に向けてしっかりと理解しておくようにしましょう。