2025年07月30日
現在価値と将来価値
MBAの受験には現在価値・将来価値・割引率・利率を理解しておく必要があります。これらの詳細はそれぞれ次の通りです。
1-1.現在価値
まず「現在価値」とは将来価値を現在の価値にしたものになります。
別記事「MBA受験で必須のファイナンス基礎:お金の時間価値と単利・複利を徹底解説」で解説した頂いた通り、お金というのは同じ金額でも現在と将来で価値が異なります。何故なら金利という概念があるからです。例えば10年後の100万円と今の100万円は価値が異なります。何故なら現在の100万円を10年間運用すれば金利によってその100万円は10年後に100万円以上の金額になっているからです。その将来の価値を現在の価値にしたものを現在価値と言います。しかし現在価値には二種類あります。何故なら金利には単利と複利という二種類があるからです。それぞれの計算方法は次の通りになります。
1.現在価値(単利)の計算式
単利の現在価値の計算式は「将来価値÷ (1 + r × n)」で表す事ができます。(r=金利・n=年数)具体的な金額(例)は以下の通りになります。
「現在価値(単利)の計算例」
期間 | 金利 | 将来価値 | 計算 | 現在価値 |
2年 |
2% | 208万円 | 208万円÷(1+0.02×2) | 200万円 |
3年 | 4% | 336万円 |
336万円÷(1+0.04×3) |
300万円 |
4年 | 5% | 480万円 |
480万円÷(1+0.05×4) |
400万円 |
5年 |
6% | 650万円 | 650万円÷(1+0.06×5) | 500万円 |
上記の通り現在価値(単利)は将来価値から(1+r×n)で割る事で求める事ができます。実務では単利で計算することは殆どありませんが、上記の計算方法はしっかりと理解しておいて下さい。
2.現在価値(複利)の計算式
複利の現在価値の計算式は「将来価値÷ (1 + r )ⁿ」で表す事ができます。(r=金利・n=年数)具体的な金額(例)は以下の通りになります。
「現在価値(複利)の計算例」
期間 | 金利 | 将来価値 | 計算 | 現在価値 |
2年 |
2% | 約208万円* | 208万円÷(1+0.02)² | 200万円 |
3年 | 4% | 約337万円* |
336万円÷(1+0.04)³ |
300万円 |
4年 | 5% | 約486万円* |
480万円÷(1+0.05)⁴ |
400万円 |
5年 |
6% | 約669万円* | 650万円÷(1+0.06)⁵ | 500万円 |
*少数第一位を四捨五入しています。
上記の通り現在価値(複利)は将来価値から(1+r)ⁿで割る事で求める事ができます。ファイナンスの実務では複利で計算するのが一般的ですので、上記の概念は非常に重要になります。そのため上記の計算式はしっかりと暗記しておいて下さい。
1-2.将来価値
次に「将来価値」とは現在価値を将来の価値にしたものになります。
先ほどの単利と逆になります。例えばあなたが現在100万円を持っていた場合、3年後に105万円になっていればそれが現在100万円の3年後の将来価値になります。これが将来価値です。将来価値にも現在価値と同じく単利と複利があります。上記の単利のケースと同じ値で表すと次の通りになります。
1.将来価値(単利)の計算式
単利の将来価値の計算式は「現在価値× (1 + r × n)」で表す事ができます。(r=金利・n=年数)具体的な金額(例)は以下の通りになります。
「将来価値(単利)の計算例」
期間 | 金利 | 現在価値 | 計算 | 将来価値 |
2年 |
2% | 200万円 | 200万円×(1+0.02×2) | 208万円 |
3年 | 4% | 300万円 |
300万円×(1+0.04×3) |
336万円 |
4年 | 5% | 400万円 |
400万円×(1+0.05×4) |
480万円 |
5年 |
6% | 500万円 | 500万円×(1+0.06×5) | 650万円 |
上記の通り将来価値(単利)は現在価値に(1+r×n)を掛けて求める事ができます。現在価値と同じく実務では単利で計算することは殆どありませんが、上記の計算方法はしっかり理解しておきましょう。
2.将来価値(複利)の計算式
複利の将来価値の計算式は「現在価値× (1 + r )ⁿ」で表す事ができます。(r=金利・n=年数)具体的な金額(例)は以下の通りになります。
「将来価値(複利)の計算例」
期間 | 金利 | 現在価値 | 計算 | 将来価値 |
2年 |
2% | 200万円 | 200万円×(1+0.02)² | 約208万円* |
3年 | 4% | 300万円 |
300万円×(1+0.04)³ |
約337万円* |
4年 | 5% | 400万円 |
400万円×(1+0.05)⁴ |
約486万円* |
5年 |
6% | 500万円 | 500万円×(1+0.06)⁵ | 約669万円* |
*少数第一位を四捨五入しています。
上記の通り将来価値(複利)は現在価値に(1+r)ⁿを掛けて求める事ができます。ファイナンスの実務では複利で計算するのが一般的ですので、上記の計算方法を知っておく事は非常に重要になります。将来価値の計算方法(複利)はしっかりと覚えておいて下さい。
割引率とは?
現在価値と将来価値を正しく理解するには割引率・利率という用語も知っておく必要があります。これらの詳細はそれぞれ次の通りです。
2-1.割引率
「割引率」とは来得られる金銭の価値を、現在の価値に換算する際に使用する利率の事を言います。例えば毎年100万円のキャッシュフローが5年間得られると仮定します。この時に毎年得られる100万円のキャッシュフローを現在価値に計算する時に使う利率を割引率と言います。以下、割引率3%(複利)の例になります。
「現在価値(割引率3%)」
年 | キャッシュフロー | キャッシュフローの現在価値 |
1年後 | 100万円 | 約97万円 100万円÷(1+0.03)¹ |
2年後 | 100万円 | 約94万円 100万円÷(1+0.03)² |
3年後 | 100万円 | 約92万円 100万円÷(1+0.03)³ |
4年後 | 100万円 | 約89万円 100万円÷(1+0.03)⁴ |
5年五 | 100万円 | 約86万円 100万円÷(1+0.03)⁵ |
合計 | 500万円 | 約458万円 |
上記の通り割引率3%で計算すると毎年100万円のキャッシュフローは約42万円(500万円ー約458万円)ほど異なるものになります。これが割引率になります。
2-2.割引率の決まり方
「割引率」は単なる金利ではなく一般的には「WACC(加重平均コスト)」で決まる事が多いです。何故なら企業が将来得るキャッシュフローの価値を評価する際、投資家に求められるリターン(資本コスト)を基準に現在価値を算出する必要があるからです。上記の例だと3%というのは投資家に対するリターンであると言えます。投資家に3%のリターンを支払う事で残った金額が、実際に企業が手にする事ができる金額(つまり上記の現在価値)であると言えます。このように割引率は投資家に対するリターンで決まるケースが一般的です。また上記の計算方法を「DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法」とも言いますが、これについては別記事でしっかり解説させて頂きます。
利率とは?
3-1.利率
「利率」は元金に対して支払われる利息の事を言います。例えば銀行預金の利息や国債投資で得られる利回りのようなものです。利率は投資対象によって異なりますが、これも経済的に複数の複雑な要因が重なって決まるものになります。一般的には元金割れするリスクが高い投資商品ほど利率が高く設定されており、元金割れするリスクが低い投資商品ほど利率は低く設定されています。利率は単利と複利によって長期的なリターンが変化するのは上述した通りになります。
現在価値と将来価値・割引率と利率:まとめ
以上が現在価値と将来価値、割引率と利率の詳細になります。ファイナンスについて考える上で上記は非常に重要な概念になりますので、必ずしっかりと理解した上で暗記するようにして下さい。そして企業の投資案件や企業分析を行う場合は上記の概念を認識した上で検討できるようになりましょう。