2025年07月31日
NPV(正味現在価値)とは?
MBAの受験にはNPV・IRR・回収期間法を理解しておく必要があります。これらの詳細はそれぞれ次の通りです。
1-1.NPV(正味現在価値)
まず「Net Present Value(正味現在価値)」とは将来得られるキャッシュフローの現在価値の合計から初期投資額を引いたものになります。
つまりNPVとは将来得られる利益の合計額を現在価値に割り引いて、現在の初期投資に対するリターンを計算する方法になります。具体的な例を挙げると次の通りです。(割引率は4%で10年間毎年100万円のキャッシュフローが得られると仮定します。)
(毎年100万円のキャッシュフロー・割引率4%(複利)」
□年後 | キャッシュフロー | キャッシュフローの現在価値 |
1年後 | 100万円 | 約96万円(100÷(1.04)¹) |
2年後 | 100万円 | 約93万円(100÷(1.04)²) |
3年後 | 100万円 | 約89万円(100÷(1.04)³) |
4年後 | 100万円 | 約85万円(100÷(1.04)⁴) |
5年後 | 100万円 | 約82万円(100÷(1.04)⁵) |
6年後 | 100万円 | 約78万円(100÷(1.04)⁶) |
7年後 | 100万円 | 約76万円(100÷(1.04)⁷) |
8年後 | 100万円 | 約73万円(100÷(1.04)⁸) |
9年後 | 100万円 | 約70万円(100÷(1.04)⁹) |
10年後 | 100万円 | 約68万円(100÷(1.04)¹⁰) |
1~10年の合計 | 合計1,000万円 | 合計約810万円 |
*現在価値・将来価値・割引率については以下の記事をご覧下さい。
「MBAファイナンスの基礎!現在価値・将来価値・割引率・利率を徹底解説」
上記の約810万円から初期投資額を引いた金額がNPVになります。例えば初期投資額が500万円だったら「810-500=310万円」ですし、初期投資額が1,000万円なら「約810万円-1,000万円=約-190万円」になります。つまりNPV(正味現在価値)は純粋なリターンになります。そのため次のように言う事が出来ます。
「NPVの解釈」
NPV>0 | 投資すべき。 |
NPV=0 | 投資すべきかどうかは別の要因を考慮すべき。 |
NPV<0 | 投資すべきではない。 |
上記がNPV(正味現在価値)になります。この概念と計算方法をしっかりと覚えておいて下さい。
1-2.IRR(内部収益率)
次に「Internal Rate of Return(内部収益率)」とは投資案件から得られる将来キャッシュフローの現在価値の合計が、初期投資額と等しくなる割引率のことです。つまり「(NPV=0)」という式が成り立つ割引率をIRRと言います。
仮に毎年100万円のキャッシュフローが10年入ってくるという上記の例をそのまま用いると、初期投資額が約810万円・割引率4%で「NPV=0」となるのでIRR(内部収益率)は4%であると言う事ができます。
(毎年100万円のキャッシュフロー・割引率4%(複利)」
□年後 | キャッシュフロー | キャッシュフローの現在価値 |
1年後 | 100万円 | 約96万円(100÷(1.04)¹) |
2年後 | 100万円 | 約93万円(100÷(1.04)²) |
3年後 | 100万円 | 約89万円(100÷(1.04)³) |
4年後 | 100万円 | 約85万円(100÷(1.04)⁴) |
5年後 | 100万円 | 約82万円(100÷(1.04)⁵) |
6年後 | 100万円 | 約78万円(100÷(1.04)⁶) |
7年後 | 100万円 | 約76万円(100÷(1.04)⁷) |
8年後 | 100万円 | 約73万円(100÷(1.04)⁸) |
9年後 | 100万円 | 約70万円(100÷(1.04)⁹) |
10年後 | 100万円 | 約68万円(100÷(1.04)¹⁰) |
1~10年の合計 | 合計1,000万円 | 合計約810万円 |
上記の例だとIRRが4%で初期投資額が約810万円であればNPV=0になります。これがIRRになります。
では次に毎年のキャッシュフロー100万円が10年続くと仮定して割引率が10%だと「NPV=0」となる初期投資額がいくらになるか計算してみましょう。以下の表をご覧下さい。
(毎年100万円のキャッシュフロー・割引率10%(複利)」
□年後 | キャッシュフロー | キャッシュフローの現在価値 |
1年後 | 100万円 | 約91万円(100÷(1.10)¹) |
2年後 | 100万円 | 約83万円(100÷(1.10)²) |
3年後 | 100万円 | 約75万円(100÷(1.10)³) |
4年後 | 100万円 | 約68万円(100÷(1.10)⁴) |
5年後 | 100万円 | 約62万円(100÷(1.10)⁵) |
6年後 | 100万円 | 約56万円(100÷(1.10)⁶) |
7年後 | 100万円 | 約51万円(100÷(1.10)⁷) |
8年後 | 100万円 | 約47万円(100÷(1.10)⁸) |
9年後 | 100万円 | 約42万円(100÷(1.10)⁹) |
10年後 | 100万円 | 約39万円(100÷(1.10)¹⁰) |
1~10年の合計 | 合計1,000万円 | 合計約614万円 |
以上からこの条件で「NPV=0」となる初期投資額は「約614万円」あると言う事ができます。よってこの例だとIRRは10%であるという事ができます。これがIRRになります。
1-3.回収期間法
「回収期間法」とは初期投資額をキャッシュフローで何年で回収できるかを計算する投資判断手法です。回収期間法の特徴は時間価値を一切考慮しない点にあります。以下の例をご覧下さい。
(毎年100万円のキャッシュフロー」
□年後 | キャッシュフロー |
1年後 | 100万円 |
2年後 | 100万円 |
3年後 | 100万円 |
4年後 | 100万円 |
5年後 | 100万円 |
上記の例で500万円の初期投資を行った場合は「5年」で回収できる事になります。(100万円×5年)もちろん通常はこのキャッシュフローを現在価値に割り引く必要がありますが、それを行わないのが回収期間法の特徴になります。NPVやIRRと大きく異なりますが、回収期間法にはそれぞれ次のようなメリット・デメリットがあります。
1.回収期間法のメリット
回収期間法のメリットは計算が簡単であるという点になります。実際に上記をご覧頂くとNPVやIRRを求める場合と比べて極めて簡易な計算で済むという事はご理解頂けると思います。基本的にNPVやIRRを求める事は重要ですが、しかしこれには時間や労力が掛かります。そのため簡単な投資案件や短期の投資だと複雑な計算を行うことが合理性を欠く場合も有ります。そのため回収期間法という計算方法があるのです。毎年100万円入ってくるのか、じゃあ初期投資500万円なら5年ぐらいで回収か、という大雑把な計算で投資判断ができるようになります。つまり回収期間法を使う事が複雑な計算を不要にしてくれるのです。回収期間法が好まれる理由は事業投資では将来得られるキャッシュフローなど予測に過ぎないという点が挙げられます。上記の例は毎年100万円入ってくる前提ですが、事業投資で10年間安定したキャッシュフローが得られるケースなど皆無に等しいと言えます。もちろん100万円を上回る年もあれば、マイナスになる年もあると考えらえます。そのため計算し過ぎても机上の空論に落ち着いてしまうケースが多々あるのです。そのため回収期間法のような簡単な計算方法に軍配が上がるケースがあると言えます。不動産投資の場合はNPVやIRRが好まれる傾向にあります。何故なら一般的に賃料は安定していると考えられるからです。しかし不動産投資も最終的な物件の売却価格はその時点の地価の影響が大きいのでやはり不確実性をゼロにするのは難しいと言えます。
2.回収期間法のデメリット
回収期間法のデメリットは短期的な視点に陥りやすいと言えます。事業投資には長年赤字を続けて後に大きく利益を出す事業もあります。例えばアマゾン社などが挙げられます。ただしこれを回収期間法で計算すると回収までのスパン(期間)が長く魅力的な投資案件を排除してしまう可能性があります。また当然ですが、回収期間法は割引率という概念を無視するので、その分のリスクを負うという点も認識しておく必要があります。更には回収後の利益について考えなくなる傾向があるので、これについてもデメリットであると言う事ができます。
NPV・IRR・回収期間法:まとめ
以上がNPV・IRR・回収期間法のまとめになります。新規事業や投資案件を検討する上で上記の概念は不可欠な概念になります。そのため上記をしっかり理解した上で自分で計算できるようになって下さい。それが必ずあなたが受験をする時の力になります。