2025年04月28日
経営戦略とは何か?
1ー1.経営戦略を理解する重要性
あなたがビジネススクールを目指しているなら「経営戦略」を知っておく必要があります。
経営戦略を学ぶ事が重要なのは、経営戦略は経営学で学ぶ全ての分野に関係しているからです。基本的にビジネススクールで学ぶ内容(組織論・マーケティング・会計学・ファイナンス・人的資源管理など)は全て経営戦略の影響を受けます。何故なら経営戦略で決定した内容に対してこれらの分野を検討する事になるからです。例えばどのような組織を設計するかという課題は、経営戦略としてどの事業に力を入れるかという事が決まっていなければ決定する事ができません。またマーケティングをどうするかという課題も、経営戦略として企業がどの事業に力を入れてどの事業から撤退するかを決めないと決定する事ができません。つまり経営学の各分野は経営戦略の影響を受けるのです。そのため経営戦略を学ぶ事は極めて重要になります。
基本的にビジネス・スクール(経営大学院)に入学するとあなたも経営戦略を学ぶ事になります。ただし受験前に経営戦略の基礎は学んでおきましょう。何故ならそうしないと価値の高い研究計画書や小論文を書く事ができないからです。また面接時にも経営戦略を知っているかどうかで受け答えの質が変わってきます。例えばあなたが自社や他の企業を分析する時に、その企業の戦略を抜きにして正しく企業を分析する事はできません。何故なら上記の通り経営戦略は全ての分野の基にある部分なので、その部分を理解していなければ正確に企業分析を行う事は不可能だからです。例えば複数の事業を営む企業の各事業部のマーケティングを分析して改善案を出すよりも、そもそもそのポートフォリオが正しいかどうかを判断する方が重要でしょう。そのため経営戦略は不可欠なテーマであり、必ず受験前に経営戦略の基本を学ぶ必要があると言えます。
更に言えば経営戦略は非常に人気の高いテーマになります。何故ならマッキンゼーやボストン・コンサルティング・グループを始めとする超一流の経営コンサルティング会社は、クライアント企業の経営戦略や競争戦略の策定を主なコンサルティング・サービスとして提供しているからです。就職人気ランキングで経営コンサルティング会社が上位を独占しつつある昨今では、経営コンサルティング会社に就職又は転職する為にビジネススクールに通う学生・社会人も数多くいます。そのため経営戦略はとても人気の高いテーマの一つになります。また経営コンサルティング会社に入る予定ではなくても、上記の通り経営を理解する上で経営戦略を理解する事は非常に重要です。
1ー2.経営戦略の定義
では「経営戦略」とは何でしょうか。何となく想像はできると思いますが、明確な定義を述べるのは難しいと思います。何故なら経営戦略には数多くの定義があるからです。しかしそれだと経営戦略という概念を正しく捉えることができないので、数多くある定義の中から分かりやすい定義を二つ挙げます。
まず一つ目の定義はジェイ・B・バーニー氏(2003)が「企業戦略論(上)」の中で述べた「いかに競争に成功するかという事に関して一企業が持つ理論」というものです。(ダイヤモンド社)企業は常に競争に晒されており、その中で成功する為の理論が戦略である、というのがバーニー氏が述べた定義になります。バーニー氏は企業が内部に有する資源や能力に注目し、その中に競争に打ち勝つ原因があると考えています。例えば企業が他の企業が入手できない希少な資源に対するアクセスを有していれば、それが競争力の源泉になるとバーニー氏は考えています。また例えば企業が他の企業と同じ資源しか有していなくても、他の企業には作れない能力がある場合は、それが競争力の源泉になるともバーニー氏は考えてします。これがバーニー氏の基本的な経営戦略に対する考えになります。
次に二つ目の定義は伊丹氏・加護野氏(1989)が「経営学入門」で述べた「戦略とは『企業が事業の将来あるべき姿とそこに至るまでのシナリオ』を描いた設計図である。」「というものになります。(日本経済新聞出版社)基本的に企業にはビジョンがあり、現状からそこに到達するには多くの障害を乗り越えて、競合他社やその他関係他社との闘い打ち勝つ必要があります。そのため現状とあるべき姿とのギャップを埋める設計図というのがこの定義になります。ここで少し難しいのが、あるべき姿は競合他社の行動に左右されるという点になります。何故なら複数の企業が「業界でナンバーワンのシェアを取る!」というビジョンを掲げても、ナンバーワンになれるのは一社だけなので、必然的に競合他社の動きを見ながら経営戦略を策定する必要があります。また利益を出すためにシェアを伸ばすにしても、シェアとは相対的なものなので、競合他社の動きを分析しながら戦略策定を進めていく必要があります。このように経営戦略は「橋」の役割を果たすものではあっても、常に相対的なものであると認識する必要があります。
1ー3.経営戦略と競争戦略の違い。
経営戦略と似た概念に「競争戦略」があります。ではこれらの違いは何でしょうか。
まず競争戦略とは各事業部の戦略になります。戦略という分野で最も有名な人物はハーバード・ビジネススクール教授のマイケル.E.ポーター氏だと思います。しかしマイケル・E・ポーター氏は経営戦略というより競争戦略を唱えた人物として有名です。この違いも押さえておきましょう。両者の違いは少し大雑把ですが、次の通りになります。例えばAという企業があり、A社は複数の事業部を抱えているとします。このA社の各事業部をいかに伸ばしていくか、利益を出していくか、他の企業の事業部に打ち勝っていくかという事を考えるのが競争戦略になります。例えばソニー社が自社のノートパソコン事業部を競合他社(例えばDell社やNEC社のノートパソコン事業部)のノートパソコン事業部にどのように勝っていくのか、ノートパソコンという市場の中で自社が取るべきポジションと競争に打ち勝つ戦略を考える、というのが競争戦略になります。つまり競争戦略は各事業部の戦略であり、企業全体というよりは企業が有する各事業部の戦略になります。つまり競争戦略は事業部ごとに異なるものになります。
そして経営戦略とは企業全体の戦略になります。例えば上記の例の通りA社が複数の事業部を有しているとします。ただA社がその各事業部の全てを伸ばさなければならないという決まりはありません。具体的には例えばノートパソコン事業部は売却し、他の事業部に力を入れる、という事も可能です。また逆に他の事業部から撤退しノートパソコン事業部に力を入れるという戦略もあります。このように企業が将来どのマーケットで持続的競争優位を築いていくのか、ということを考えるのが経営戦略です。大企業ではPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)なども使用して経営戦略を策定するのが一般的ですが、そもそも企業がどこに向かうのかを決めるのが経営戦略になります。GEの元CEOであるジャック・ウェルチ氏は「ナンバーワンかナンバーツーになれない事業部は売却するか撤退する。」と決めましたよね。これが経営戦略になります。そのため経営戦略には事業の撤退や売却、買収等も含まれます。よって経営戦略は競争戦略を内包しているコンセプトであると言えます。経営戦略には「全社戦略」「事業戦略」があり、事業戦略として競争戦略を唱えたのがポーター氏になります。基本的に企業が成功していくには両方の戦略が必要となります。そのため、あなた自身で経営戦略や競争戦略について説明できるようになりましょう。
経営戦略とは何か:まとめ
以上が経営戦略と競争戦略の定義と詳細になります。経営戦略は企業、競争戦略は事業の行動の根幹を成すものであり、競争戦略(事業戦略)は各事業部を伸ばしていくのに不可欠な戦略になりますので、いすれも非常に重要なコンセプトになります。そのためしっかりと上記のコンセプトを理解した上で経営について考えられるようになりましょう。それがあなたの研究計画書や小論文の質を必ず高める事になります。