MBAで得られる本当の価値とは?見た目の学位以上に得られるもの

2025年04月29日

MBAの市場価値

あなたがMBAの取得を検討する場合、まず真っ先に「MBAの市場価値」に目を向けると思います。MBAの市場価値には大きく以下の三種類があります。

1ー1.就職・転職

 MBAのーつ目の市場価値は「就職・転職」に役立つ事です。

 あなたが経営コンサルティング会社や外資系金融会社、又は事業会社の経営幹部やマネジメントに近いポジションに応募する場合、MBAを保有している事は大きなアドバンテージとなります。何故なら既にMBAプログラムで経営学の学習や事例研究などを行ているので、改めて体系的な経営学の知識を教える必要がないからです。これは雇用する企業から見ると、教育訓練費の削減にもなります。

 また経営コンサルティング会社や金融会社、経営幹部になる場合、クライアント企業からの信頼を獲得するのにもMBAホルダーの存在は有利に働きます。何故なら、相手企業から見ても、経営学を体系的に学んできた相手はそうでない相手と比較するとより信用できると判断されるからです。つまり就職・転職先の企業にとって価値の高い人材となるのです。そのため就職・転職市場においては有利に働きます。実際にMBAには就職・転職目的で入学する人も大勢います。

1ー2.昇進

 MBAの二つ目の市場価値は「昇進」に役立つ事です。あなたが特定の企業に勤務していて、尚且つ転職する予定がなくても、MBAはあなたが現在勤めている企業内で昇進に役立ちます。何故ならMBAプログラムでは企業幹部に求められる知識を体系的に学ぶので、その知識が役立つと判断されるからです。基本的にMBAプログラムで学ぶ内容はそのまま事業経営に活かす事ができます。何故ならMBAプログラムでは経営戦略や市場・マーケット分析、事業計画の立案など、実際に事業経営に役立つ事を学ぶからです。MBAは実際の経営に役に立たないという人もいますが、それは間違いです。実際にはMBAで学んだ事もない人が自分に必要ないからそう述べているケースが大半です。現実には特に企業勤務の人が経営幹部になるにはMBAの知識が必要になります。そのためMBAは昇進に役立ちます。

 また他の利害関係者に対しても、MBAホルダーが経営幹部にいる事で、信用が勝ち取りやすくなるという側面があります。例えばあなたが経営幹部でMBAを保有していると、その過程で学んだ内容を活かして金融機関や投資家にアプローチする事で、相手を説得しやすくなります。何故なら金融機関や投資家も経営を理解できるMBAホルダーが相手企業の幹部にいると、経営学に精通している人がいるという認識から安心できるようになります。そのためMBAを取得する事は昇進に役立つということができます。更に言えば、MBAに高い価値を感じる人が多い企業であれば尚更その傾向は強くなります。

1ー3.人脈

 MBAの三つ目の市場価値は「人脈形成」に役立つ事です。

 MBAプログラムに入学すると必然的に有益な人脈が増える事になります。ビジネス・スクールに入学すると、特にMBAプログラムでは、多くの授業でグループワークを行うことになります。年齢・性別・国籍・キャリアが全く異なる人達と、共通のグループ課題に対する意見交換を行う過程で、多くの人達と出会うことになります。その中には普段の生活では出会わないような人たちとも出会います。さまざまな国からの留学生に加えて、特にトップスクールでは、大企業幹部・勤務、医師、弁護士、会計士、税理士、ベンチャー経営者のような職業の人達がたくさん学んでいます。

 このようにビジネススクールに通うとあなたが普段出会わない経歴の人達と出会う事になります。そのような人達と一緒に学ぶ過程で得られる気付きも多く、お互いが刺激を与え合う事になります。結果として、一緒に共通の課題に向けて頑張った仲間として、多くの人達との新たな交流が生まれることになり、自然と多様なバックグラウンドを持つ人達と新たな人間関係が形成ができるようになります。これは社会人がビジネスを行う上で強いアドバンテージとなると考えられます。特に普段から他業種や他業界の人とあまり出会わない仕事をしている場合は刺激もメリットも非常に大きいものになると言えます。

MBAの本質的価値

MBAを取得する価値について、上記の「市場価値」が論じられている事が非常に多いのが実態です。しかし基本的に誤解してはいけないのは、本来的にMBAには上記の市場価値とは異なる本質的価値があり、それは市場価値に匹敵する価値があるという事ができます。本質的価値には以下のような価値があります。

2ー1.体系的な経営学の知識が身に付く。

 MBAの一つ目の本質的価値は「体系的な経営学の知識」が身に付く事です。

 MBAプログラムでは体系的な経営学の知識を一通り学ぶ事になります。例えば、経営戦略、組織論、マーケティング、会計学、ファイナンス、マクロ・ミクロ経済学、統計学等。このような体系的な経営学を個人で網羅的に学ぶのは非常に難しいですが、MBAプログラムでは専門の教授陣が選び抜いた教材や事例を使用しながら、体系的にしっかりと学ぶことが出来ます。またこれらに加えて専門的な科目も多く学ぶ事ができます。このような経営学は経営コンサルティング会社に転職したり、経営幹部を目指さない場合は不要だと思うかもしれませんが、それは間違いです。

 MBAで学ぶ経営学は汎用性の高い内容になります。例えば株式投資を行う場合でも、これらの知識を有している事で企業の財務状態や方向性、業界内でのポジショニング等が理解できるようになります。それがあなたに大きな金銭的リターンをもたらしてくれることは、容易に想像できると思います。また日常生活に於いても経済や金融、企業の動きやマーケティングを理解する事で、普段触れる情報の中で理解できる概念が増加し、それは結果としてあなたに大きなリターンをもたらします。例えば買い物をするにしても、他企業の製品や代替品、売り手や買い手の交渉力を分析する事で、最適な購買活動が可能になります。正直に言えば、これだけでも充分にMBAを取得する価値があるのですが、その他多くの場所でMBAで学ぶ経営学の知識を利用する事ができます。

2ー2.思考法の進化

 MBAの二つ目の本質的価値は「思考法」が進化する事です。例えばMBAプログラムではクリティカル・シンキングやロジカル・シンキングという科目があります。これは要するに課題の本質を考えて特定したり、課題の解決方法を論理的に導く訓練のようなものですが、このような科目を通して、問題の本質を掴む力、論理的に思考する能力、論理的に他者を納得させる能力が高まります。 これはビジネススクールにもよるかもしれませんが、特にクリティカル・シンキングのような科目では、矛盾した内容や本質的ではない内容を述べると徹底的に追及される事になるので、その過程であなたの思考力は必ず高まる事になります。それはあなたに強いメリットをもたらします。

 しかしこれらの授業を受講しなくても、MBAプログラムでは否応なしに思考法が進化していきます。何故なら、例えばケースメソッドで行われる授業では、事前にケースを読み込み、何が本質的な課題か、何故なのか、それをどうやって説得するかということを授業準備の過程で考える必要に迫られます。その過程で自然と本質を理解する力や論理的思考力が高まっていきます。そして実際に授業で議論を行う中で、その力は更に洗練されていきます。この能力は、社会人として活躍する過程で、必ず役に立ちます。何故ならこのような力は、社会の複雑化が進行する中で、正しい答えのない課題に向き合わなければならない現代人に最も求められる力の一つだからです。その意味でMBAプログラムでは、思考法を進化させるのに最高のプログラムだと言えます。

2ー3.リーダーシップの能力が高まる。

 MBAの三つ目の本質的価値は「リーダーシップ」の能力が高まるという事です。

 MBAプログラムでは自然とリーダーシップの能力が磨かれます。MBAプログラムで最もリーダーシップ能力が磨かれるのは、授業内でのグループワークやディスカッション形式の授業での発言、ケースメソッドでの授業やワークショップの学習過程に於いてです。何故なら、MBAプログラムでは一部の授業を除き、受け身になっていては卒業できない仕組みになっているので、必然的に自分で考えて動くという行動が求められるようになっているからです。傍からはグループワークで楽しそうに取り組んでいるように見えても、当事者たちは必死になって自分で情報を調べて結論を出し、議論しながら孤独に闘っているのが普通です。しかしその過程で確実に主体的に動く能力が磨かれます。

 またMBAプログラムではあなたが主導してグループワークを進める場面もあります。そのような状況ではあなたが積極的に周囲に課題を振り分けて終了期日を設定し、全員の進捗状況を管理しながら課題を終わらせる必要があります。この課程では自然とリーダーシップ能力が高まっていきます。何故ならこの状況はあなたがビジネスのプロジェクトリーダーになったのと同じ状況だからです。自分が能動的に進めていかないとグループ課題を終える事が出来ないので、必然的にリーダーシップ能力は高まる事になります。リーダーシップ能力が高まったかどうかは数値化するのが難しいので客観的に分かりにくいのですが、多くの学生がMBA取得後にリーダーシップ能力が高まったと回答した調査結果も多々あります。

 もちろんリーダーシップの科目ではあなたに適したリーダーシップ・スタイルを発見する事ができます。リーダーシップというのは一通りではなく複数のスタイルがあります。MBAのリーダーシップの科目を通して自分に適したリーダーシップのスタイルを発見する事で、リーダーシップの能力は磨かれていく事になります。

2ー4.コミュニケーション能力が高まる。

 MBAの四つ目の本質的価値は「コミュニケーション能力」が高まるという事です。更に言えば「英語でのコミュニケーション能力」も高まります。MBAプログラムでは、一部を除き、ディスカッション形式の授業が多くあります。またケースメソッド形式での授業やグループワークでは必然的に積極的な発言が求められます。これらの授業ではあなたの職場での仕事以上にコミュニケーション能力を高める事ができます。何故なら、MBAプログラムでは、年齢・性別・国籍・キャリアが全く異なる人達と議論し合いながら特定の課題をこなしていくことになるからです。この環境がコミュニケーション能力を高める機会になります。

 多様な人達とディスカッションやグループワークをする過程であなたのコミュニケーション能力は劇的に高まります。多様な人達との間でコンセンサスを形成する過程では、多様性は”多様な意見を出す”という視点からは有利に機能しますが、”意見をまとめる”という点では不利に働きます。例えば同じ会社に所属する30代の男性会社員が5人集まって議論するのと、全くバックグラウンドの異なる5人(20代の女性会社員、30代の中国人留学生、50代の外資系企業幹部、40代の医師と20代のフランス人留学生)が集まって議論するのとでは、同じ結論が出る確率は後者の方が極めて低く、またバックグラウンドが異なるが故に意見をまとめ上げるのが難しいからです。またそれを全て英語で行うことも普通にあります。そのためMBAプログラムではあなたのコミュニケーション能力が高まります。更には相手の立場や考えを尊重する姿勢や、自分を客観視する「メタ認知能力」も自然と高まっていきます。

2ー5.キャリアの方向性が見える。

 MBAの五つ目の本質的価値は「キャリアの方向性」が見えるようになるという事です。
 MBAプログラムではあなたがこれから進むべき方向性が見えるようになります。MBAプログラムでは、数多くの科目を受講することになります。また多様なバックグラウンドの人達とも出会います。博士号を有する一流の教授達とも出会います。その過程で自分のキャリアの方向性が見えてくるようになります。何故ならさまざまな分野の一流の人達と接する過程で、自分の強みと弱みが見えるようになってくるからです。もちろんMBAに入学する前に、志望理由書にあなたの今後のキャリアプランを書くことになります。ただ入学後にそのキャリアプランを修正する人もいます。何故なら、数多くの科目を受講する中で自分の得手不得手がより鮮明に見えてくるからです。

 さまざまな分野の一流の人達と交流することであなたの伸ばすべき分野が見つかるようになります。あなたが自分では得意と思っていた筈の分野が、多くの授業を受けたり、さまざまなジャンルの人達と触れ合う中で、実は相対的には得意ではなかったというケースがあります。また自分では特に意識していなかった分野が相対的に見ると意外と強かったというケースもあります。このようにMBAプログラムでは相対的に見た自分の得意分野が見えてくるようになります。そしてその道こそが、これからあなたが進むべき道かもしれません。しかしMBAプログラムに入らず、自己流で勉強していると、自分の得手不得手を判断するのは意外と難しいと思います。次にどの道に進むべきか。この問いに対する答えが見つからず、深い迷いの中にいる社会人にとっては、MBAというのは自分の強みや興味が持てる分野を知ることができる場所でもある、と言う事ができます。

MBAの価値:まとめ

 まとめるとMBAには「市場価値」と「本質的価値」があるというものになります。MBAの価値を判断する時に市場価値に目を向けてしまうのは当然かもしれませんが、実はMBAは上記の通り市場価値以外にも本質的価値があり、本質的価値は市場価値に匹敵するかそれ以上の価値があると言うことができます。そのためMBAの価値を判断する時は本質的価値もしっかり理解した上で判断するようにしましょう。