2025年10月12日
サービスの4つの特徴
サービスには次の4つの特徴があります。それぞれの詳細は次の通りです。
1-1.無形性
一つ目は「無形性」になります。
無形性とはサービスが物理的な形を持たず目で見たり手で触れたりする事ができないという性質を指します。例えば、レストランの接客、大学での授業、病院での診察、コンサルティングの助言などは、体験を通じて価値を感じるものであり、形として残るものではありません。この点が、有形の商品とサービスを分ける最も基本的な違いです。
無形性はサービスマーケティングにおいて大きな課題を生みます。お客様は購入前に品質を直接確認することができないため、サービス提供者への信頼や評判に大きく依存します。つまり、企業は「目に見えない品質」をいかに伝えるかを考える必要があります。サービスの無形性が高いほど、お客様は不安を感じやすく、リスクを強く意識する傾向があります。したがって、企業はその不安を軽減するために、サービス内容を「見える化」する工夫を行うことが重要です。
見える化の方法としてはブランドイメージの強化、スタッフの態度や言葉遣いの改善、口コミやレビューの活用、店舗やウェブサイトのデザインの工夫などが挙げられます。こうした取り組みによって、形のないサービスの価値を具体的に感じてもらうことができます。お客様が安心してサービスを選択できるようにすることが、マーケティング戦略の中心的な課題となります。
一方で、無形性は企業にとってリスクであると同時に差別化のチャンスでもあります。形がないからこそ、顧客ごとに異なる体験や感情的価値を生み出すことができます。たとえば、同じサービスでも「安心感」「感動」「信頼」といった心理的価値を提供できれば、それは他社が簡単に模倣できない独自の魅力になります。
MBAで学ぶ際にはこの無形性を理論として理解するだけではなく、実際の企業がどのように無形の価値を可視化し信頼を築いているのかを分析する事が重要です。形のない価値をどのように伝えるか――それこそが、サービスマーケティングの本質と言えます。
1-2.不可分性
二つ目は「不可分性」になります。
サービスのもう一つの重要な特徴が不可分性です。不可分性とは、サービスの生産と消費が同時に行われる性質を指します。モノの場合は、工場で生産された商品が在庫として保管され、後から消費者に販売されます。しかし、サービスの場合は提供と利用が切り離せません。たとえば、美容室でのカット、病院での診察、授業での講義などは、その場でサービスが提供され、同時に顧客がそれを消費しています。
この不可分性の為にサービスの品質は提供者と顧客の双方の関与によって決まります。つまり、同じサービスであっても、提供者の対応や顧客の状態、利用する環境によって満足度が変わるのです。たとえば、ホテルの接客ではスタッフの態度や顧客の期待によって印象が大きく異なります。このように、サービスは「共同で生み出される体験」であり、提供者と顧客の関係性が品質に直接影響する点が特徴です。
不可分性は企業にとって品質管理の難しさを意味します。モノであれば出荷前に検品が可能ですが、サービスは提供の瞬間にしか品質を確認できません。そのため、従業員の教育やマニュアル整備、標準化された手順の設計などが重要になります。また、顧客とのコミュニケーションを円滑にすることで、期待と実際の体験との差を減らす努力も求められます。
更に近年ではテクノロジーの発展によりこの不可分性の概念にも変化が見られます。オンライン講座やセルフチェックインシステムなど、デジタル化によってサービス提供の一部を自動化することで、提供と消費をある程度分離する試みも進んでいます。しかし、それでも最終的な体験の質は、顧客との接点に依存しているのが現実です。
MBAの学びにおいてはこの不可分性を理解する事で、なぜサービス産業では人が競争優位の鍵を握るのかを深く理解できます。M顧客と直接接する瞬間に価値が生まれるからこそ、企業は従業員のモチベーションやスキルを戦略的資源として扱う必要があるのです。
1-3.変動性
三つ目は「変動性」になります。
変動性とはサービスの品質が提供の度に一定ではなく状況や人によってバラツキが生じやすい性質を指します。例えば、同じレストランであっても、接客するスタッフや来店時の混雑状況によって顧客の満足度が変わることがあります。また、講師のコンディションや受講者の雰囲気によって授業の印象が異なることもあります。このように、サービスの提供は人や環境に大きく影響されるため、品質の安定化が難しいのです。
変動性は生じる主な理由はサービスが人を介して提供される点にあります。提供者のスキル、態度、感情、経験などがサービス品質に直接関係するため、全ての顧客に同じ水準の価値を提供することが困難になります。また、顧客自身もサービス体験に影響を与える存在であり、顧客の協力度や期待の度合いによっても結果が変わることがあります。
このような変動性を抑える為に企業は様々な工夫を行っています。まず、従業員教育の徹底やマニュアルの整備によって、一定のサービス基準を維持する取り組みが重要です。さらに、サービス品質を定期的に測定し、顧客からのフィードバックを活用して改善を重ねることも効果的です。スターバックスやリッツ・カールトンなどの企業は、従業員教育と顧客満足度調査を組み合わせることで、変動性を最小限に抑えながら高品質なサービスを維持しています。
またテクノロジーの活用も変動性対策の一つです。オンライン予約システムやチャットボットなどの導入により、人的対応のばらつきを減らすことができます。AIを活用した顧客対応やデータ分析によって、サービスの標準化と個別対応の両立を目指す企業も増えています。
MBAで学ぶ際にはこの変動性を理解する事がサービス品質マネジメントの核心に繋がります。品質の一貫性をどのように確保するか、また顧客体験のばらつきをどのようにコントロールするかは、実務的にも重要な経営課題です。変動性を完全に排除することはできませんが、その影響を最小限にする工夫こそが、優れたサービス企業の特徴と言えます。
1-4.消滅性
四つ目は「消滅性」になります。
消滅性とはサービスは生産された瞬間に消費される為、在庫として保存する事ができない性質を指します。例えば、航空券の座席やホテルの客室、コンサートのチケットなどは、利用されなければその価値は消えてしまいます。モノであれば生産して在庫として蓄えることが可能ですが、サービスは提供のタイミングを逃すと再利用できず、失われてしまいます。
消滅性の特性は企業の収益管理や需要予測に大きな影響を与えます。需要が予測より低ければ、売れ残ったサービスは消滅してしまい、機会損失となります。逆に需要が予想以上に高ければ、提供できるサービス量には限界があるため、顧客満足度の低下や取りこぼしが生じる可能性があります。そのため、サービス産業ではタイムマネジメントや需要調整の工夫が不可欠です。
具体的な対策として価格変動を活用した需要の平準化や予約システムの導入、キャンセル管理などが挙げられます。航空会社やホテルでは、早期割引やピーク時料金の設定、柔軟なキャンセルポリシーを通じて、消滅性による損失を最小化する取り組みを行っています。また、サービス提供の効率化や代替手段の設計も重要で、オンライン配信やデジタル化によって、消費タイミングをある程度調整できる場合もあります。
MBAで学ぶ際にはこの消滅性の理解がサービス戦略に直結します。M時間とともに価値が消えてしまう性質を踏まえ、いかにして顧客の利用を誘導し、収益を最大化するかが重要な課題です。また、消滅性は供給と需要のバランスを戦略的に管理する力を養ううえでも有益です。サービスの消滅性を考慮した経営判断は、競争優位を築くための基本的な視点と言えます。
サービスの4つの特徴:まとめ
以上がサービスの4つの特徴の詳細になります。これらの特性は、サービスを単なる商品と区別し、顧客体験や提供プロセスを戦略的に設計するうえで欠かせない概念です。MBAで学ぶ際には、理論の理解に加え、実際の企業事例と結びつけて考えることで、より実務的な知識として応用できます。これらの視点を身につけることが、サービスマーケティングでの競争優位につながります。MBA受験に向けて、これらの特徴をしっかり理解した上で覚えておくようにしましょう。