2025年10月22日
組織文化の種類
組織文化には次の四つの種類があります。それぞれの詳細は次の通りです。
1-1.クラン・タイプ

一つ目の種類は「クラン・タイプ」になります。
クラン・タイプの組織文化は、家族のような温かい雰囲気を特徴とする文化です。このタイプの組織では、人間関係やチームワークを重視し、上司と部下の関係も上下ではなく「仲間」としてのつながりが重んじられます。リーダーは権威的ではなく、むしろコーチやメンターのような存在としてメンバーを支えます。従業員同士の信頼関係が強く、組織の一体感を育むことで高いモチベーションを維持している点が特徴です。社員同士の絆を大切にするため、福利厚生や職場の心理的安全性にも力を入れる企業が多い傾向にあります。
このタイプの文化を持つ企業では、個々の成果よりもチーム全体の協働を重視します。そのため、意思決定はトップダウンではなく、メンバー間での合意形成によって行われることが多いです。柔軟な働き方や対話を通じて組織を運営していくスタイルは、変化の激しい現代社会においても強みとなります。社員の成長を支援する制度が整っていることも多く、研修や人材育成に積極的です。結果として、従業員満足度が高く、離職率が低いという特徴も見られます。一方で、競争的な環境を好む人にとっては、スピード感や明確な評価基準の不足を感じる場合もあります。
MBAで学ぶ観点から見ると、クラン・タイプの組織は内部重視・柔軟性重視の象限に位置します。このタイプの文化は、成長段階にある企業やサービス業、教育機関などに多く見られ、組織全体の協調性を活かして長期的な安定を目指す傾向があります。リーダーシップ論の観点からも、共感的リーダーシップやサーバント・リーダーシップとの親和性が高いモデルといえます。MBA受験生にとっては、このタイプの特徴を理解しておくことで、組織行動論や企業文化に関する面接質問への応答にも活かせます。企業研究の際には、企業の採用ページやミッション・ビジョンから「人を大切にする文化」が読み取れるかどうかを確認すると良いでしょう。
1-2.アドホクラシー・タイプ

二つ目の種類は「アドホクラシー・タイプ」になります。
アドホクラシー・タイプの組織文化は、革新性と柔軟性を最も重視する文化です。このタイプの組織では、決まったルールや階層よりも、創造的なアイデアやスピード感を持つ行動が評価されます。変化の激しい環境に適応し、新しい市場を開拓する力が求められるため、リーダーは起業家精神を持ち、挑戦を奨励する姿勢を示します。メンバーには、自ら課題を見つけ、試行錯誤を繰り返すことが期待されます。失敗を恐れずに挑戦できる文化があることで、イノベーションが生まれやすいのが特徴です。特にIT企業やスタートアップに多く見られ、リスクを取りながらも新しい価値を生み出す力が組織の推進力となっています。
このタイプの組織では、自由度が高く、上下関係が比較的緩やかです。メンバーは専門分野を超えて協力し合い、プロジェクト単位で柔軟にチームを組み替えることも珍しくありません。組織構造そのものが変化に対応しやすく、スピーディーな意思決定が可能です。報酬や評価も、個人の創造性や貢献度に基づくことが多く、成果主義が取り入れられやすい傾向にあります。一方で、自由度が高い分、方向性の共有や長期的な安定感に欠ける場合もあります。特に急成長中の企業では、組織が拡大するにつれて、管理体制の整備が課題となることもあります。
MBAで学ぶ観点から見ると、アドホクラシー・タイプは外部志向・柔軟性重視の象限に位置付けられます。イノベーションを中心とした競争優位の獲得や、変化への対応力を重視する経営戦略と親和性が高いタイプです。このような組織文化を理解しておくことは、MBAの授業で扱う起業論や戦略論を学ぶうえでも有用です。また、面接やエッセイで自分が挑戦志向や創造的思考を持っていることをアピールする際にも、このタイプの文化の理解が役立ちます。企業研究では、ミッションステートメントや経営理念の中に「革新」「挑戦」「変化への対応」といった言葉が頻出する企業が、このタイプに該当するケースが多いでしょう。
1-3.ヒエラルキー・タイプ

三つ目の種類は「ヒエラルキー・タイプ」になります。
ヒエラルキー・タイプの組織文化は、秩序と安定を重視する伝統的なタイプです。このタイプでは、明確な指揮命令系統とルールに基づく運営が特徴であり、各メンバーは定められた職務と責任を果たすことが求められます。意思決定のプロセスは上位から下位へと流れるトップダウン型で、計画や手順に従って仕事を進めることが重視されます。リーダーは監督者や管理者としての役割を担い、組織全体が一貫性を保つよう調整します。このような文化は、品質管理やリスク回避を重視する業界、例えば製造業や行政機関、大企業などでよく見られます。安定した成果を継続的に出すことに向いており、信頼性と予測可能性の高さが強みです。
ヒエラルキー・タイプでは、標準化された手続きや明文化された規範が整備されており、効率的なオペレーションが可能です。従業員は自分の役割を明確に理解しており、秩序だった組織運営が行われます。特に安全性やコンプライアンスが求められる業界では、このタイプの文化が高く評価されます。また、教育や研修を通じて社員に共通の価値観を浸透させ、長期的な雇用関係を築く傾向もあります。一方で、変化への対応が遅れやすく、意思決定に時間がかかるという弱点もあります。柔軟性や創造性を求める環境では、ルールや階層構造が制約として働くこともあり、時代の変化に合わせた組織改革が課題となります。
MBAの観点から見ると、ヒエラルキー・タイプの組織は内部志向・安定重視の象限に位置付けられます。このタイプは効率性、統制、品質を重んじる経営スタイルであり、オペレーション・マネジメントやリスクマネジメントの分野で重要なモデルとなります。MBAで学ぶ経営管理や組織設計の理論とも深く関わっており、実務的な経営運営を理解するうえで欠かせない存在です。面接やエッセイでは、自身がどのように秩序や安定を重んじつつも変化を推進できるかを語ることで、この文化タイプへの理解を効果的に示すことができます。企業研究では、厳格なマニュアルや階層構造を重視する組織、もしくは品質保証や安全性を企業理念に掲げる企業が、ヒエラルキー・タイプの文化を持つ傾向にあります。
1-4.マーケット・タイプ

四つ目の種類は「マーケット・タイプ」になります。
マーケット・タイプの組織文化は、成果と競争を最重視する文化です。このタイプの組織では、市場でのシェア拡大や収益向上が最優先され、目標達成に対する責任感とパフォーマンスが強く求められます。リーダーは結果を重視する指導者であり、メンバーに対して明確な目標を設定し、達成度に応じた評価や報酬を行うことが一般的です。競争志向が組織全体に浸透しているため、社員は自己の成果だけでなく、チームや組織全体の成果に貢献する意識を持つことが期待されます。営業部門や金融業界、コンサルティングファームなど、成果重視の環境でよく見られる文化です。
マーケット・タイプでは、業績や目標達成に基づく明確な評価制度が整備されており、競争を通じて個人と組織の成長が促進されます。意思決定はデータや実績に基づくことが多く、迅速な対応力や戦略的な判断力が求められます。成果が可視化されるため、組織内のモチベーションは高く保たれやすい一方で、プレッシャーやストレスが強くなりやすいという側面もあります。また、競争環境に慣れていない人や協調性を重視する人にとっては、適応が難しい場合もあります。
MBAの観点から見ると、マーケット・タイプの組織は、外部志向・安定重視の象限に位置付けられます。戦略的目標の達成や市場での優位性確保を重視するため、経営戦略論やマーケティング戦略の理解と密接に関連しています。MBA受験生にとっては、このタイプの文化を理解しておくことは、企業分析やケース面接での議論に活かせます。企業研究の際には、KPIや業績指標を重視する経営方針、成果に基づく評価制度、競争を前面に打ち出す企業の方針を確認すると、マーケット・タイプの文化を把握しやすくなります。
組織文化の種類:まとめ
以上が組織文化の四つの種類の詳細になります。以上で紹介した四つの組織文化、クラン・タイプ、アドホクラシー・タイプ、ヒエラルキー・タイプ、マーケット・タイプは、それぞれ異なる価値観と行動原理を持ち、企業の戦略や経営方針と深く結びついています。MBAで学ぶ視点では、組織文化を理解することは、企業分析やケース面接、エッセイ作成において非常に重要です。志望企業がどのタイプに属するかを把握することで、組織の意思決定プロセスやリーダーシップスタイル、社員の働き方を的確に理解できます。また、自分自身の価値観や適性と照らし合わせることで、キャリア選択や自己PRの説得力も高まります。よってMBA受験制は組織文化の四種類をしっかりと押さえておくようにしましょう。