SCPモデルと競争構造

2025年05月05日

SCP理論とは?

SCP理論とは業界構造が最終的に企業の業績を決めるという理論であり、SCPモデルとはその考えを反映したモデルになります。その三つとはそれぞれ以下の通りになります。

1-1.業界構造(Structure)

 SCPモデルの「S」は業界構造になります。これには「競合企業の数」「製品の違いの程度」「参入・退出コスト」等があります。例えば競合の数が多ければ利益率は下がりますし、競合間で同じような製品が多ければ競争が激しくなり利益率は下がります。またその業界の参入・退出コストが低ければ多くの企業が参入してきます。これが業界構造になります。つまり業界構造が次の企業行動に影響を与えます。

1-2.企業行動(Conduct)

 SCPモデルの「C」は企業行動になります。企業は業界構造に基づき取るべき行動を判断します。これには「需要変動への動き」「差別化」「談合」等があります。例えば市場価格が何らかの原因により低下した場合に、競合の数が多ければ、価格を下げるしかありません。(このような動きを取る企業を「プライステイカー」と言います。)また多くの企業が均質性の高い製品を扱っている場合、企業は少しでも利益率を高めようと製品差別化のような動きを取ります。また業界の利益率を高めるために談合(独占禁止法違反です。)を行い、業界全体の利益率を維持することがあります。この企業行動が企業のパフォーマンスに影響を与えます。

1-3.パフォーマンス(Performance)

 SCPモデルの「P」はパフォーマンスになります。企業の取った行動により業績が決まります。しかし企業が取れる行動は業界構造により制約を受けており、結果的にパフォーマンス(業績)は業界構造により決定すると考える事ができます。これがSCPモデルの基本的な考え方です。

業界の競争構造

業界の状態は競争構造により以下の四つ分類することができます。どのような状態にあるかによって、業界の利益率は大きく変化します。

2-1.完全競争

 まず一つ目は完全競争になります。完全競争とは、数多くの競合企業があり、それらが均質性の高い製品を扱っており、参入・退出コストが低い状態の事を言います。つまりこのような状態では企業は利益を出すのが難しと言えます。ほとんど全ての企業がプライステイカーとなっている状態なので、企業にとっては最も苦しい競争構造になります。しかし社会的厚生という視点から見ると、これは最も魅力的な状態だと言えます。

2-2.独占的競争

 次に二つ目は独占的競争になります。独占的競争とは、多数の競合企業があり、参入・退出コストが低いところまでは完全競争と同じですが、企業が差別化された製品を扱っているという点が異なります。この状態では企業が差別化された製品を扱っているので、擬似的に独占企業のような行動を取ることが可能です。例えば特定のセグメントに模倣困難性の高いシャンプーを開発した企業は、そのニッチなセグメントにおいては独占企業のように行動することが可能です。しかしその地位は常に競合企業に脅かされているのも、この競争構造の特徴になります。

2-3.寡占

 三つ目は寡占になります。同質の製品を扱ってはいても、少数の競合しかいない状態です。参入・退出コストは高く、企業にとっては魅力的な状態になります。何故なら参入障壁が高く、少数の競合しかいないので、競争が極めて緩やかになる為です。またこのような状態では業界上位の数社がシェアの大半を占めているので、暗黙的談合により、競争を減らす事ができます。(暗黙的談合は別記事で解説します。)

2-4.独占

 最後は独占になります。そのサービス・製品を扱う業者が一社だけであり、高い参入コストが発生する業界です。基本的に独占禁止法という法律で独占は禁じられていますが、それに近い状態の企業はあります。例えばマイクロソフト社のOSは独占に近い状態となっています。これは企業にとっては最高の状態です。何故なら顧客はそのサービス・製品を買うしかなく、企業は価格を高める事が用意になるからです。しかし社会的厚生は最も低くなります。顧客としても企業が独占状態だと、競争がないので良いサービス・製品が望めなくなり、高い価格を受け入れざるを得なくなります。

 

SCPモデルと競争構造:まとめ

3-1.業界構造と競争構造

 上記の通り、業界構造や競争構造が企業の業績に大きな影響を与えます。その意味で、企業にとっては魅力的な業界とそうでない業界があり、参入前にはこれらをしっかり分析する必要があります。これらは非常に重要な考えになりますので、しっかり理解しておきましょう。