2025年11月06日
目次
ダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ・スタイル
ダニエル・ゴールマンは6つのリーダーシップ・スタイルを提唱しました。それぞれの詳細は次の通りです。
1-1.ビジョン型

一つ目は「ビジョン型」です。
ビジョン型リーダーシップは、未来の理想像を明確に描き、メンバーをその目標に共感させながら導くスタイルです。このタイプのリーダーは、短期的な成果よりも長期的な方向性を重視し、組織の「存在意義」や「目指すべき姿」を示すことで、チーム全体のモチベーションを高めます。単なる目標の提示ではなく、「なぜそれを目指すのか」という価値や意味を共有し、メンバーが自発的に行動できるよう促します。感情知能(EQ)のうち、特に自己認識と共感力が高く、自らの価値観を軸に組織の進むべき道を示す一方で、メンバーの感情や立場に寄り添いながら対話を重ねるのが特徴です。変化や不確実性が大きい環境の中で、チームに安心感と目的意識を与える力を持っています。
このスタイルは、方向性を見失っている組織や、新しい挑戦に向かうチームに特に効果的です。ビジョンを共有することで、一人ひとりが自分の役割を理解し、全体として一体感を持ちながら前進できます。ただし、理想を語るだけで実務的なサポートを欠くと、現実との乖離が生じやすいため注意が必要です。MBAを目指す方にとって、ビジョン型リーダーシップは経営の基礎を成す重要な概念です。戦略立案や組織マネジメントを学ぶ際には、自分がどのような未来を描き、どのように人を巻き込むかを意識することが求められます。自らの言葉でビジョンを語り、それを人々に伝える力こそが、リーダーとしての第一歩となります。
1-2.コーチ型

二つ目は「コーチ型」です。
コーチ型リーダーシップは、メンバーの成長を重視し、長期的な視点で能力開発を支援スタイルです。このタイプのリーダーは、成果よりも学びのプロセスに焦点を当て、部下が自らの強みや課題を理解し、将来に向けて成長できるよう導きます。指示や命令ではなく、対話を通じて本人の気づきを引き出し、自律的な行動を促す点が特徴です。感情知能(EQ)の中でも「共感力」と「自己制御力」に優れ、相手の立場に立って考えながらも、感情的にならずに冷静なフィードバックを行います。リーダーとメンバーの間に信頼関係を築き、安心して意見を交わせる環境を整えることで、チーム全体の潜在力を引き出すことができます。
コーチ型リーダーシップは、短期的な成果を求める場面では効果が見えにくいものの、長期的には組織の基盤を強化します。メンバーが自分の成長を実感できると、仕事への主体性が高まり、チーム全体のエンゲージメントも向上します。特に、若手や次世代リーダーを育てたい時期には、このスタイルが大きな効果を発揮します。一方で、リーダー自身に観察力と傾聴力が求められるため、日々のコミュニケーションに丁寧さと時間を要します。MBAを志す方にとって、コーチ型リーダーシップは「人を動かす」だけでなく「人を育てる」視点を身につける上で欠かせません。自らの経験をもとに助言しながらも、答えを押し付けず、相手の中にある可能性を引き出す姿勢こそが、成熟したリーダーの証といえます。
1-3.関係重視型

三つ目は「関係重視型」です。
関係重視型リーダーシップは、チーム内の人間関係を中心に据え、信頼と調和を重んじるスタイルです。このタイプのリーダーは、メンバー一人ひとりの感情や立場を丁寧に理解し、安心して働ける雰囲気をつくることを最優先に考えます。個々の成果よりもチーム全体の協力体制や一体感を重視し、対立や緊張が生まれた際には、積極的に対話を通じて関係修復を図ります。感情知能(EQ)の中でも特に「共感力」と「対人関係能力」に優れ、人の気持ちを読み取りながら柔軟に対応できる点が特徴です。リーダー自身が温かく思いやりのある姿勢を見せることで、メンバーも安心して意見を出し合える心理的安全性の高いチームが形成されます。
このスタイルは、組織の雰囲気が悪化している時期や、変化に不安を感じるメンバーが多い場面で効果を発揮します。関係性を大切にすることで信頼が深まり、結果的にチームのパフォーマンス向上にもつながります。一方で、協調を重んじるあまり、成果や問題解決のスピードが遅れるリスクもあります。リーダーは、温かさと同時に適切な方向性を示すバランス感覚が求められます。MBAを目指す方にとって、関係重視型リーダーシップは「人を理解し、人を動かす力」を身につけるうえで重要な考え方です。多様な背景を持つメンバーが集まる環境では、相互の信頼と尊重がチームの基盤となります。人とのつながりを育みながら成果を出す、このスタイルはグローバル社会で活躍するリーダーにとって欠かせない資質といえます。
1-4.民主型

四つ目は「民主型」です。
民主型リーダーシップは、メンバーの意見を積極的に取り入れ、チーム全体で意思決定を行う事を重視するスタイルです。このタイプのリーダーは、自らが一方的に指示を出すのではなく、メンバーに考える機会と発言の場を与えることで、チームの知恵と多様な視点を引き出します。リーダーの役割は、方向性を示すことよりも議論を促し、合意形成を導くことにあります。感情知能(EQ)のうち、特に「共感力」と「社会的スキル」に優れており、異なる意見を尊重しながらも、最終的に組織としての結論をまとめる調整力が求められます。メンバーが意思決定に参加することで、自らの意見が反映されたという満足感や責任感が生まれ、結果としてチームのエンゲージメントと主体性が高まります。
民主型リーダーシップは、専門知識を持つメンバーが多いチームや、創造的なアイデアを必要とする場面で特に効果的です。多様な意見が交わされることで新しい発想が生まれ、チーム全体の理解と納得感を伴った意思決定が可能になります。ただし、議論に時間がかかりすぎると行動が遅れたり、意見がまとまらないまま結論を出せないリスクもあります。そのため、最終判断を下すタイミングや、方向性を示すリーダーの判断力が重要です。MBAを目指す方にとって、民主型リーダーシップは「リーダー=ファシリテーター」という新しい視点を学ぶきっかけになります。メンバーの意見を引き出し、最適な決断へ導く力は、経営の現場や国際的なチーム運営にも通用するスキルです。
1-5.ペースセッター型

五つ目は「ペースセッター型」です。
ペースセッター型リーダーシップは、自ら高い基準を示し、率先して行動することでチームを牽引するスタイルです。このタイプのリーダーは、成果志向が強く、スピードと正確さを重視します。自分自身に厳しい目標を課し、それを達成する姿勢を見せることで、メンバーに刺激を与え、全体のパフォーマンスを引き上げようとします。言葉よりも行動で示すタイプであり、「背中で見せるリーダー」といえるでしょう。感情知能(EQ)の中では「自己管理力」と「達成志向」が際立っており、常に高い成果を求め続ける姿勢が特徴です。特に、能力が高く自立的に働けるチームにおいては、このリーダーシップが強い推進力を生み出します。
一方で、ペースセッター型リーダーシップには注意点もあります。リーダー自身の基準が高すぎる場合、メンバーがプレッシャーを感じたり、ついていけないと感じることがあります。成果を優先するあまり、コミュニケーションやチームの雰囲気づくりが後回しになると、モチベーションの低下や離職につながる可能性もあります。そのため、状況に応じて期待値を調整し、必要なサポートを提供する柔軟さが求められます。MBAを志す方にとって、ペースセッター型は「成果を出す力」と「人を導く力」の両立を学ぶ良い題材です。自らが高いパフォーマンスを維持するだけでなく、チーム全体が持続的に成長できる環境を整える視点を持つことが重要です。目標達成のスピードと、人を育てる余裕のバランスを取ることが、真のリーダーへの一歩となります。
1-6.強制型

六つ目は「強制型」です。
強制型リーダーシップは、明確な指示と厳格な管理によってチームを統率するスタイルです。このタイプのリーダーは、組織の規律やルールを重視し、迅速な意思決定と確実な実行を求めます。状況判断が速く、緊急時や危機的な場面では特に効果を発揮します。明確な指示のもとでメンバーを動かすため、混乱を避けたい局面や、組織の方向性を強く打ち出す必要があるときに適しています。感情知能(EQ)のうち「自己管理力」と「自己主張力」が高く、強い責任感と行動力を持ってチームを引っ張る点が特徴です。リーダー自身の決断力と統率力によって、短期間で成果を出すことが可能です。
ただし、強制型リーダーシップは長期的な組織運営には向かない場合があります。命令中心のマネジメントが続くと、メンバーの自主性や創造性が損なわれ、心理的な距離が生まれてしまうことがあります。また、リーダーの言葉や態度が強すぎると、恐怖や緊張を生み、チーム内の信頼関係が崩れることもあります。そのため、このスタイルを効果的に使うには、状況に応じて他のリーダーシップスタイルと使い分ける柔軟さが求められます。MBAを目指す方にとって、強制型は「リーダーの統率力」を理解する上で欠かせない概念です。組織が危機に直面したとき、迅速に意思決定を下し、責任を持って行動するリーダーは必要不可欠です。重要なのは、厳しさの中にも誠実さと公平さを持ち、信頼を損なわないリーダーシップを発揮することです。
ダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ・スタイル:まとめ
以上がダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ・スタイルの詳細になります。ダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ・スタイルは、状況やチームの状態に応じて柔軟に使い分けることが重要です。ビジョン型は方向性を示し、コーチ型は人を育て、関係重視型は信頼を築きます。民主型は意見を引き出し、ペースセッター型は高い基準で牽引し、強制型は危機時に秩序を保ちます。優れたリーダーはこれらを一つに固定せず、組織の状況に合わせて最適なスタイルを選択します。MBAを志す方にとって、この6分類は理論ではなく実践の指針です。自分の強みを理解し、チームや状況に応じた柔軟なリーダーシップを発揮することが、真のマネジメント力につながります。