チームの三つの種類を理解する:MBAで差がつくリーダーシップ理論

2025年11月12日

チームの三つの種類

 チームには次の三つの種類があります。詳細はそれぞれ次の通りです。

1-1.クロス・ファンクショナル・チーム

     一つ目は「クロス・ファンクショナル・チーム」です。

     チームには多様性があります。中でも近年、MBAやビジネススクールで注目されているのがクロス・ファンクショナル・チームです。これは、異なる部署や専門分野のメンバーが一つの目標に向かって協働するチームの形態を指します。マーケティング、財務、エンジニアリング、人事など、職能を超えた構成によって、組織全体の知見を結集できるのが特徴です。近年では、新規事業開発やイノベーション推進の現場でこのチーム形態が多く採用されています。

     クロス・ファンクショナル・チームの最大の利点は、異なる視点が融合する事で、問題解決力が高まる点にあります。単一部門だけでは見落としがちな課題も、他分野の視点が加わることで多面的に検討できます。たとえば、製品開発の場面では、マーケティング担当が顧客ニーズを、エンジニアが技術的実現性を、財務担当がコスト面を考慮しながら議論を進めます。これにより、現実的かつ市場性のあるアイデアが生まれやすくなります。また、メンバーが異なるバックグラウンドを持つことで、相互理解やコミュニケーション能力の向上も期待できます。

     一方で、クロス・ファンクショナル・チームには課題も存在します。部門ごとの利害や優先順位が異なるため、意思決定が遅れることがあります。また、専門用語や評価基準が異なるため、誤解や摩擦が生じやすいというデメリットもあります。MBAで学ぶリーダーシップ論では、こうした課題を乗り越えるために「心理的安全性」や「共通目的の共有」が重要視されます。メンバー全員が安心して意見を述べられる環境づくりと、全員が同じ方向を向くための明確なビジョン設定が、チーム成功の鍵となります。

     実際のビジネスの現場では、リーダーのファシリテーション能力がチームの成果を大きく左右します。リーダーは各メンバーの専門性を尊重しながら、情報の橋渡し役となる必要があります。また、進捗管理や意思決定のプロセスを透明にすることで、信頼関係が築かれやすくなります。クロス・ファンクショナル・チームは、単なる寄せ集めではなく、相互理解と協働を通じて組織のイノベーションを生み出す基盤です。MBAで学ぶ理論を実務に活かす際、このチーム形態の特性を理解しておくことは、将来のマネジャーにとって極めて有益です。

    1-2.バーチャル・チーム

       二つ目は「バーチャル・チーム」です。

       働き方は変化しています。特に近年のデジタル化の進展により、地理的な制約を超えて活動するバーチャル・チームが急速に広がりました。バーチャル・チームとは、物理的に同じ場所にいないメンバーが、オンラインツールやデジタルプラットフォームを活用して協働するチームを指します。リモートワークの普及やグローバル企業の増加により、このチーム形態は世界中の組織にとって一般的なものとなっています。MBAでも、国際ビジネスや組織行動論の授業でバーチャル・チームのマネジメントが頻繁に取り上げられています。

       バーチャル・チームの大きな利点は、時間と場所の制約を受けずに多様な人材を集められる点にあります。異なる国や地域の専門家が参加することで、グローバルな視点からの意思決定が可能になります。また、オンライン会議や共有ドキュメントを活用することで、業務のスピードと柔軟性を高めることができます。コスト面でも、オフィススペースや出張費を削減できるため、効率的な運営が可能です。このようなバーチャルな環境では、メンバーそれぞれが自律的にタスクを進め、チーム全体で成果を上げる文化が求められます。

       しかし、バーチャル・チームには固有の課題も存在します。最大の問題はコミュニケーションの難しさです。対面でのやり取りが少ないため、非言語的な情報が伝わりにくく、誤解や不信感が生じるリスクがあります。また、タイムゾーンの違いやネットワーク環境の制約により、リアルタイムでの連携が難しい場合もあります。MBAで学ぶリーダーシップ論では、こうした課題を克服するために「透明性の高い情報共有」と「心理的安全性の確保」が重要とされています。リーダーは定期的なオンラインミーティングを設け、全員の意見を平等に取り入れる姿勢が求められます。

       効果的なバーチャル・チームを運営するには、テクノロジーとマネジメントの両面からアプローチする事が必要です。ツールの選定だけでなく、チームの目標設定、役割分担、成果の可視化など、基本的なマネジメントスキルがより重要になります。また、リーダーはメンバーのモチベーション維持にも配慮しなければなりません。感謝や称賛の言葉を積極的に伝え、チームとしての一体感を育むことが成功の鍵となります。バーチャル・チームは、単にオンラインで働く集団ではなく、デジタル時代の新しい組織モデルです。MBAでその理論と実践を理解することは、将来のリーダーにとって欠かせない学びとなります。

      1-3.セルフマネジング・チーム

         三つ目は「セルフマネジング・チーム」です。

         セルフマネジング・チームとは、上司や管理者の直接的な指示を受けず、メンバー自身が目標設定や意思決定、業務遂行を行うチームの事を指します。従来のトップダウン型組織とは異なり、メンバー一人ひとりがリーダーシップを発揮しながら、共同で成果を追求するのが特徴です。特にイノベーションを重視する企業やスタートアップでは、このような自律型チームが組織の成長を支える中心的存在になっています。MBAの組織行動論やマネジメント講義でも、近年はセルフマネジング・チームの研究が注目を集めています。

         セルフマネジング・チームの最大の強みは、現場に近いメンバーが主体的に意思決定を行う事で、スピード感のある対応ができる点にあります。管理職を介さずに意見を交換できるため、課題解決までの時間が短縮され、柔軟な戦略変更が可能です。また、各メンバーが責任感を持って行動するため、チーム全体のモチベーションが高まりやすくなります。社員一人ひとりの成長意欲や創造性が組織の成果に直結する仕組みは、変化の激しい現代社会において大きな競争優位となります。MBAの観点から見ると、このようなチームは「リーダーシップの分散」と「組織のアジリティ(俊敏性)」を体現するモデルといえます。

         一方で、セルフマネジング・チームには運営上の課題もあります。リーダーがいない分、方向性が曖昧になったり、意見の対立が長引いたりする可能性があります。また、成果や役割分担の責任が不明確になると、メンバー間の信頼が揺らぐこともあります。そのため、成功するチームには明確な目的の共有と、定期的な振り返りの仕組みが欠かせません。MBAで学ぶマネジメント理論では、こうした自律型チームにおいても「構造化された自由」が必要であるとされます。つまり、完全な放任ではなく、一定のルールや価値観のもとで自律的に行動することが、持続的な成果につながります。

         セルフマネジング・チームを効果的に運営する為には、リーダーではなくファシリテーターとしての役割を担う人物の存在が重要です。この役割は指示を出すのではなく、議論を整理し、メンバーが最適な判断を下せるよう支援することにあります。また、チームの中で相互信頼を築くための心理的安全性の確保も欠かせません。メンバー全員が自らの意見を安心して述べられる環境が整ってこそ、真の自律が実現します。セルフマネジング・チームは、単なる管理の省略ではなく、成熟した組織文化の象徴です。MBAでこの概念を理解し、実践的に応用する力を身につけることは、次世代リーダーに求められる重要な資質といえます。

        チームの三つの種類:まとめ

         以上がチームの三つの種類の詳細になります。現代の組織では、チームの形態が多様化しています。クロス・ファンクショナル・チームは専門性の融合、バーチャル・チームは距離を超えた協働、セルフマネジング・チームは自律性による創造を実現します。いずれのチームにも利点と課題があり、目的や状況に応じた設計と運営が求められます。MBAで学ぶリーダーシップやマネジメントの理論は、これら三つのチーム形態を理解し、実践に生かす上で有効な指針となります。多様な人材が協働する時代だからこそ、チームの特性を見極め、最適な運営を行う力が次世代リーダーに必要とされています。MBA受験に向けて、これらの三つの特徴をしっかりと覚えておきましょう。