MBA受験生のための経験曲線効果|コスト削減の仕組みを徹底解説

2025年05月07日

経験曲線効果

「経験効果効果(experience curve effect)」とは累積生産量が増加すると一単位当たりのコストが低減する事を言います。これはボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が提唱したコンセプトになります。累積生産量が増加すると一単位当たりのコストが低減する理由は次の通りです。

 

1-1.習熟効果

 一点目は「習熟効果」になります。累積生産量が増加するという事は、労働者が同じ特定の作業を繰り返すという事です。その結果、労働者は習熟効果が得られるようになり作業効率を高めていく事ができるようになります。この効率の向上により同じ労働量で一単位当たりのコストを低減していく事が可能になります。また習熟効果は単に作業スピードの向上に留まらず、ミスや不良品の発生率の低下にもつながります。更に経験を積むことで、作業を効率化する事が可能になり、全体の生産プロセスが最適化されます。このような現象によっても一単位当たりのコストを低減することができるようになります。この習熟効果は製造業だけでなく、サービス業や事務作業などあらゆる業務で同様の効果が期待できます。多くの量をこなせば物事を効率的にこなすことができるようになるというのはどんな仕事でも同じです。このため習熟効果による効率化はコストを低減する効果があると言えます。

1-2.作業方法の改善

 二点目は「作業方法の改善」になります。累積生産量の増加により仕事の方法が改善されていきます。その中では分業のあり方の見直し等も含まれます。その結果として一単位当たりのコストを低減させる事が可能になります。作業方法の改善は単に作業の効率化にとどまらず、作業環境やツールの最適化も関係しています。例えば作業の見直しや設備の配置変更、作業マニュアルの整備などにより、無駄な作業や時間を削減できます。また分業のあり方を再検討することで、労働者が最も得意とする業務に専念できるようになり、全体の生産効率が向上します。人材の強みを武器に人員配置をすれば品質の向上・コスト低減を実現できるのは容易にご理解頂けると思います。更に改善の過程で得られたノウハウは他の工程にも応用可能であり、組織全体の作業効率やコスト削減につながります。結果として作業方法の改善により一単位当たりのコスト低減と品質の向上を同時に実現することができるようになります。

1-3.標準化・自動化

 三点目は「標準化・自動化」になります。累積生産量の増加により最適な生産方法が確立していきます。結果として生産工程の標準化や製造の自動化が進んでいくことになります。これにより一単位当たりのコストを低減する事が可能になります。何故なら標準化・自動化によってより効率的に製品を製造する事ができるようになるからです。更に言えば、標準化・自動化が進むことで、製品の均一化も実現できます。作業手順や工程が統一されるため、製品ごとのばらつきが減少し、不良品率の低下につながります。また技術者に依存しない体制が整うため、人材の交代や新規雇用にも容易になります。そうなると求人広告費や人件費の削減も実現する事が出来ます。また自動化による効率化は長時間稼働も可能にし設備稼働率の向上にもつながります。結果として一単位当たりのコストの低減だけでなく、生産能力の拡大も可能となり、これらが企業競争力の向上に直結します。

1-4.製造設備の効率向上

 四点目は「製造設備の効率向上」になります。累積生産量の増加により設備の効率は向上していきます。一般的に設備の利用経験が増加すると、生産効率の見直しが行われて、生産設備の効率が向上していきます。その結果として一単位当たりのコストが低減されます。更に製造設備の効率向上は、設備稼働率の最適化にもつながります。設備の効率が向上すれば稼働率を下げても同コストで同量の製品を製造する事が可能になりますね。これがコスト削減効果を生み出します。また設備の利用データや履歴が蓄積されることで、更なる作業順序の最適化が可能となり、稼働時間あたりの生産量を増加させる事が可能になります。そして設備の効率化はエネルギー消費や原材料の削減にもつながり、コストだけでなく環境負荷の低減にもつながります。結果として同じ設備でより多くの製品を生産できる体制が整い、企業の競争力や利益率が向上します。

1-5.活用資源

 五点目は「活用資源になります。累積生産量の増加により別の資源やより安価な資源で生産する方法を発見する事が可能になります。結果として企業は一単位当たりのコストを低減させることができます。更なる安価な資源を見つける事ができればコストを削減できるのは当然です。また更に累積生産量の増加によって企業は既存の資源の効率的な利用方法を見出すことも可能になります。例えば現在の資源を使用してより多くの製品を生産する手法や、生産過程で生じる副産物や余剰材料を再活用する仕組みを導入すれば、原材料費の削減につながりますよね。また規模の拡大より購買力も強化されるので、規模の経済効果による資源単価の引き下げも実現する事ができます。加えて新たな技術や生産手法の導入が進めば、従来より低コストで同等の品質が実現できるようになり、結果として一単位当たりの生産コストをさらに低減する事が可能になります。こうした資源活用の最適化は企業競争力の向上に直結します。

1-6.製品の標準化

 六点目は「製品の標準化」になります。累積生産量の増加により生産方法だけではなく製品を標準化する事が可能になります。その結果、必然的に一単位当たりのコストを低減させることが可能になります。更に製品の標準化は生産プロセスの効率化だけでなく、部品や原材料の共通化による在庫管理コストの削減にもつながります。実際に共通の部品や原材料を使用すれば在庫管理は容易になりコストを削減することができますよね。また標準化された製品は製造のばらつきを減らすため不良品の削減にもつながります。また部品や原材料の大量仕入が可能となることで、単価の引き下げやサプライチェーン全体の効率化も実現します。そして標準化は販売面でもメリットがあり、顧客への提供時間の短縮も期待できます。このように製品の標準化は一単位当たりのコスト削減効果があります。

1-7.設計の合理化

 七点目は「設計の合理化」になります。累積生産量の増加により企業は顧客が求める便益を理解する事ができるようになります。結果として求められていない便益を最大限削減し、無駄のない製品設計を行う事ができるようになります。結果として一単位当たりのコストを低減させる事が可能になります。また設計の合理化は製造工程や材料選択の最適化にもつながります。例えば不要な部品や複雑な工程を削減することで、組立作業の効率が向上し、製造時間や人件費を削減できます。また材料の使用量を最小限に抑えることで原材料費の低減も可能です。更に合理的な設計は製品の標準化と組み合わせることで、在庫管理コストの削減にもつながります。このように顧客価値を意識した設計の合理化は、無駄を削減してコストを下げるだけでなく、製品品質の安定や生産効率向上にも直結し、企業全体の競争力を高める効果があります。。

経験曲線効果:まとめ

 上記の通り累積生産量が増加すると一単位当たりのコストを低減させる事が可能になります。あなたがMBAの受験時に企業の分析を行う時は、戦略を考える時にこの概念が非常に重要になりますので、しっかり理解した上で覚えておくようにしましょう。