なぜ利益よりキャッシュフローが重要なのか?基礎から学ぶMBAのファイナンス思考

2025年11月27日

利益よりCFが重要な理由

 企業経営では会計上の利益よりCFの方が重要です。その理由は次の通りです

1-1.実際に使えるお金の動きはCFである。

     まず一点目は「実際に使えるお金の動きはCFである。」というものになります。

     キャッシュフローは企業が実際に扱えるお金そのものを示します。売上が立ったとしても入金までの時間差があるように、会計上の数字と実際に手元にある現金は必ずしも一致しません。そこで重要になるのが、現金の増減を正確に把握するキャッシュフローの視点です。企業は日常的に仕入れや外注費の支払いが発生し、従業員の給与や税金も現金で処理します。帳簿上の利益よりも、今どれだけ現金を使えるかが経営判断のスピードと確実性を左右します。特にスタートアップや中小企業のように資金の余裕が限られる環境では、キャッシュフローの管理が事業継続の基盤となり、先行投資や在庫積み増しなどの意思決定にも直接影響します。そのため経営者は常に手元資金を意識し、どの活動が現金を生み、どの活動が消費しているのかを見極めながら運営していく必要があります。

     キャッシュフローは企業の戦略行動を制約する要因になります。例えば、市場環境が変化した際に迅速に新規投資へ踏み切れるかどうかは、利益以上に、実際に投じられる現金が存在するかで決まります。どれだけ魅力的な事業機会があっても、それを実行に移すための資金が不足していれば成長機会を逃してしまいます。逆に、手元資金が潤沢であれば、競合が躊躇する局面でも果敢に投資を行い、市場シェアを拡大することができます。このようにキャッシュフローは短期的な資金繰りだけでなく、長期的な競争戦略にも深く関わっています。財務的な余力がある企業ほど戦略の選択肢が広がるため、キャッシュフローは企業の「行動可能性」を決める基礎体力といえます。

     キャッシュフローの把握は企業の信頼性を高める役割も果たします。金融機関や投資家は利益だけでなく、現金をどれだけ安定的に生み出しているかを重視し、将来の返済能力や事業の持続性を判断します。キャッシュフローが読みやすく安定した企業はリスクが低く、資金調達の条件も有利になりやすくなります。また、社内のマネジメントにおいても、部門ごとの活動がどれだけ現金を生み出しているかを確認することで、効率的な資源配置が可能になります。利益では見えにくい実態を現金の動きからつかむことで、企業は無理のない成長計画を立てやすくなります。MBA受験生にとっても、キャッシュフローを軸に企業を読み解く力は、ファイナンスの理解を深めるうえで不可欠な視点となります。

    1-2.利益にはお金の出入りのない項目が含まれる。

       次に二点目は「利益にはお金の出入りのない項目が含まれる。」というものになります。

       利益は必ずしも現金の動きをそのまま反映していません。会計上の利益には、実際には現金が出入りしていない項目が含まれるため、表面的な数字だけでは企業の資金状況を正しく判断できない場合があります。代表的な例が減価償却費で、これは設備などの取得費用を複数年に分けて費用化する仕組みですが、計上する年度には現金の支払いがありません。そのため利益が圧縮されても、キャッシュフローには影響しないことがあります。また、引当金の計上など、将来の支出に備えるための会計処理も利益を動かす一方で現金の出入りは伴いません。こうした会計処理は企業活動を正しく記録するために重要ですが、利益だけを見ると企業の実際の資金力と乖離して判断してしまう可能性があります。MBAの学習では、この「利益と現金のズレ」を理解したうえで、企業の実態をつかむ力が求められます。

       利益には経営者や会計方針による裁量が入り込みやすい側面があります。例えば、売上の計上基準や棚卸資産の評価方法、減価償却の方法などは企業によって異なり、適用するルールによって利益が上下します。同じ事業規模でも利益の数字が異なるのは、こうした会計方針の違いが影響しているためです。さらに、四半期決算で一時的に利益を良く見せるための調整が行われるケースもあり、利益は経営者の意図や戦略が反映されやすい指標といえます。こうした背景から、利益だけを基準に企業の健全性を評価すると、経営の実態を見誤る可能性があります。一方でキャッシュフローは現金の動きそのものを示すため、会計方針の影響を受けにくく、より客観的な視点を提供します。MBA受験生にとっては、利益の限界を理解することで、財務分析の精度を高めることができます。

       利益に現金が伴わない項目が含まれるという性質は、企業分析においてキャッシュフローを見る必要性を強く示しています。利益が好調に見える企業であっても、現金が不足していれば投資が遅れたり、支払いに苦労したりする可能性があります。逆に利益が控えめでも、実はキャッシュフローが安定していれば、事業基盤がしっかりしている企業と評価できます。つまり利益は「期間の成績表」である一方、キャッシュフローは「実際に動いたお金の記録」であり、双方を併せて読むことで初めて企業の姿が立体的に見えるようになります。MBAでのケース分析や過去問演習でも、この違いを理解しているかどうかで解答の深さが変わってきます。利益の数字に惑わされず、現金の流れを踏まえた視点を身につけることが、実践的な財務リテラシーの第一歩となります。

      1-3.黒字でもCFが合わないと倒産する可能性がある。

         最後に三点目は「黒字でもCFが合わないと倒産する可能性がある。」というものになります。

         黒字でも企業は倒産します。これは「黒字倒産」と呼ばれる現象で、利益が出ているにもかかわらず、手元の現金が不足して資金繰りが破綻することで起こります。例えば、売上は計上されていても売掛金の回収が遅れたり、在庫の増加に資金が固定されたりすると、企業は実際に使える現金を確保できません。一方で、仕入れの支払いや人件費、借入金の返済といった現金支出は容赦なく訪れます。利益と現金のタイミングのズレが大きくなるほど、企業の資金繰りは圧迫されます。特に成長局面では在庫や設備への先行投資で現金が大量に必要になるため、黒字であっても資金がショートするリスクが高まります。こうした理由から、経営者にとってキャッシュフローの管理は利益以上に重要なテーマになります。

         黒字倒産の多くは、キャッシュフローの予測や管理が不十分な事によって引き起こされます。例えば、急激に売上が伸びると、その分仕入れ量を増やす必要があり、先に現金支出が増える構造になります。売上の入金は後に発生するため、売上が伸びているにもかかわらず、手元資金が枯渇するという逆説的な状況が生まれます。また、取引先に対して支払条件を守る一方、自社の回収サイトが長い場合、支払いのタイミングが先行してキャッシュフローを圧迫します。さらに、借入金の返済や税金の支払いといった大きな固定的支出の時期が重なると、企業は一時的に資金繰りの限界に達する可能性があります。利益が黒字だから安全という思い込みが危険なのは、こうした現金の流れを見落としやすいからです。

         黒字倒産を避ける為には、キャッシュフローの定期的なチェックと、資金繰りの計画的な管理が欠かせません。毎月の出入りだけでなく、将来の返済や投資計画を踏まえて現金の流れを予測することで、資金が不足する時期を事前に把握できます。さらに、回収サイトを短縮したり、在庫回転を改善したりといった運転資本の管理を徹底することで、手元資金の余裕を高めることができます。金融機関との関係を良好に保ち、必要なときに資金調達ができる体制を整えることも、黒字倒産のリスクを抑える有効な手段です。MBA受験生にとっても、この黒字倒産のメカニズムを理解することは、財務の本質をつかむうえで大きな意味を持ちます。利益ではなく、あくまで現金が企業の生命線であるという視点を身につけることで、より深い財務戦略の理解につながります。

        利益よりCFが重要な理由:まとめ

         以上が利益よりCFが重要な理由になります。企業にとって利益は重要ですが、実際に経営を動かすのは現金の流れです。キャッシュフローは日々の支払いや投資に使える資金を正確に示し、利益では見えない実態を把握する助けとなります。また、利益には現金の動きを伴わない項目が含まれるため、利益が黒字でも資金繰りが悪化する可能性があります。さらに、現金が不足すると黒字でも倒産に至ることがあり、キャッシュフロー管理は企業の存続と成長の基盤になります。MBAを目指すうえでも、現金の動きを中心に企業を読み解く視点が不可欠です。MBA受験に向けて上記をしっかりと理解しておきましょう。