コアなし業界の戦略的機会とは?MBA受験生が知るべき市場攻略法

2025年05月22日

コアなし業界の機会

コアなし業界とは売り手と買い手が最高の条件だと思える取引が永遠に成立しない業界の事ですが、この業界にも機会はあります。以下、その機会の解説になります。

1-1.談合

 一点目は「談合」になります。

 コアなし業界に属する企業は競合他社と談合すれば利益を出す事ができるようになります。談合とは業界内の企業が事前に話し合い供給する順番や入札価格等を事前に決定し競争が起きないようにする事です。(談合は独占禁止法違反です。)これによりコアなし業界に属する企業はそれぞれが利益を出す事が可能になります。しかし談合は違法行為なので、コアなし業界に属する企業は代わりに「暗黙的談合」を行うケースがあります。暗黙的談合とは複数の企業が明示的な同意や契約なしで価格・生産量・販売場所などについて協調した動きを取ることを言います。このように暗黙的談合が行われている場合はコアなし業界でも企業は利益を出す事ができるようになります。しかしこれは顧客の損失が利益の源泉となっています。

 暗黙的談合は法律上明確に禁止されている訳ではなく、企業間で暗黙の了解として行われているので表面的には競争が存在しているように見えます。しかし実際には価格や供給量の調整が行われているので、顧客は高い価格を支払い続けることになり、市場の効率は低下します。MBA受験生の視点では、この現象は市場構造と戦略の関係を理解する上で重要になります。つまりコアなし業界における企業戦略は製品・サービスの差別化やコスト削減だけではなく、競争環境そのものの理解が不可欠であると言えます。更に言えば暗黙的談合に頼る戦略は持続性に問題があり、新規参入者や規制強化によって崩壊するリスクがあります。ソフトバンク社が通信業界に参入したのはその代表例と言えます。(しかしその後の携帯電話業界は暗黙的談合が行われているように見えます。)そのためMBAでは、コアなし業界で利益を確保するには、合法的で持続的な競争優位をどのように築くかが課題となります。例えば製品・サービスの付加価値作り・ブランド力の強化、効率的なサプライチェーンの構築などが挙げられます。結果として暗黙的談合は短期的利益を生む仕組みとして機能するものの、長期的な企業戦略としてはリスクが高く倫理的にも問題がある機会作りであると言えます。

1-2.政府規制

 二点目は「政府規制」になります。

 コアなし業界に属する企業は政府規制で利益を出す事ができるようになります。何故なら政府が価格を一律に決定すれば、業界全体が一社の独占企業に運営されているような状態になるからです。この代表例は銭湯が挙げられるでしょう。国内にある銭湯は各都道府県が価格を決定します。それにより各銭湯を営む事業者はコアがなくても破滅的競争に向かわず、業界として激しい競争は行われていません。しかしこれも顧客の損失が利益の源泉となっているのは談合のケースと同じです。

 更に政府規制による価格統制は市場原理に歪みを発生させます。MBA受験生の視点では、これは制度的要因が企業戦略に影響を与える典型例である言えます。規制により価格が固定されると、企業はコスト削減やサービス改善などの内部戦略で差別化を図る動機が弱まる可能性があります。何故ならいずれにしても価格は同じなので企業が差別化する意欲を失ってしまうからです。その結果、企業の効率性は低下し、顧客は本来の市場競争による恩恵を受けられなくなります。また規制価格が高すぎる場合、利用者が減少するリスクもあり、利益確保が難しくなる場合があります。一方で、規制による安定的な収益構造は、企業に長期的な投資を行いやすくする効果もあります。つまり、コアなし業界における政府規制は、企業にとっては事業が安定する手段である一方、市場の効率や顧客利益を犠牲にする問題を伴います。これは本質的には社会主義のような側面があります。MBA的には規制がある中では価格の恩恵を受けるだけでなく、その中で持続可能な成長をいかに実現するかを考える事が求められます。

1-3.高度な製品差別化

 三点目は「高度な製品差別化」になります。

 コアなし業界に属する企業は高度な製品差別化により利益を出す事ができるようになります。他の顧客グループを獲得できる程の製品差別化に成功すれば、破滅的競争から抜け出す事が可能となります。例えばホテル業界の中で、他のホテルには提供できないサービスを創造し、そのサービスを顧客が求める状態になれば、破滅的競争から抜け出す事が可能です。このように製品差別化を実現する事ができれば、コアなし業界でも破滅的競争から逃れる事が可能になります。

 高度な製品差別化は商品の外見だけではなく顧客体験やブランド価値を含めた差別化を意味します。MBA受験生の視点では、これは戦競争優位の源泉を理解する上で重要です。例えばホテル業界は単なる宿泊サービスだけでなく、独自のサービス、個別化された体験などを通じて他ホテルと明確に差別化することが可能です。差別化に成功すれば顧客は価格だけでなく、付加価値に基づいてサービスを選択するようになり、価格競争を回避する事ができます。更に製品差別化はブランドロイヤルティの形成にもつながり、長期的な収益安定化をもたらします。しかし差別化には投資や革新が必要であり、短期的にはより大きなコストが発生するリスクがあります。そのためMBA的には、差別化戦略を実行する際には市場の需要分析、競合の分析、コスト構造の最適化などを総合的に検討することが重要になります。結果として、コアなし業界における成功は高度な差別化戦略によって初めて持続可能になると言えます。これにより企業は破滅的競争を脱する事ができ業界内で独自のポジションを確立することができるようになります。

1-4.需要予測マネジメント

 四点目は「需要予測マネジメント」になります。

 コアなし業界に属する企業は正しく需要を予測できれば利益を出す事ができるようになります。需要が予測できなければ適量を供給する事ができないので、結果として需要より多いか少ないかの供給を行う事になります。しかし需要を予測する事ができれば必要な分だけをタイムリーに提供することができるので、破滅的競争を避ける事が可能になります。

 需要予測を正確に行うことはコアなし業界における重要な戦略になります。MBA受験生の視点では、これは情報と分析に基づく意思決定の価値を理解する上で極めて重要になります。何故なら需要予測が正確であれば、企業は過剰在庫や欠品を防ぎ、コスト効率を最大化し顧客満足度を高めることが可能だからです。例えば小売業や物流業界では、需要予測に基づき適切な在庫配置や配送計画を行うことで、価格競争に巻き込まれず安定的な利益を確保できます。一方で、もし予測が外れれば、余剰在庫による損失や販売機会の損失が発生し、破滅的競争に陥るリスクが高まります。そのため需要予測には統計モデルやAI、また機械学習の活用、ビッグデータの分析、さらには市場トレンドや消費者行動の理解といった高度な分析手法を使えるようになる必要があります。また需要予測は製品差別化や価格戦略・供給体制とも組み合わせることで、より強い競争優位を築くことができるようになります。結果としてコアなし業界で持続的に利益を確保するには、市場環境に依存するのではなく予測精度に基づく戦略的な運営が不可欠であると言えます。

コアなし業界の機会:まとめ

 コアなし業界は大変な業界ですが、その中でも上記の通り幾つかの機会が存在します。そしてこれらを生かして利益を出す事が可能です。そのためコアなし業界にいる企業は上記をしっかり理解した上で戦略を策定していくようにしましょう。MBA受験においても上記の機会をしっかりと覚えておいて下さい。