2025年07月01日
事業部制組織のメリット・デメリット
1-1.事業部制組織のメリット
「事業部制組織」には以下のメリットがあります。
1.意識決定が早くなる。
一点目は「意思決定が早くなる。」というものになります。
事業部制組織では各事業部の長が事業部に責任と権限を持っています。そのためトップ・マネジメントが判断するより早く意識決定を行うことができるようになります。これにより変化の激しい製品・サービスや地域・顧客セグメントを扱う事業部は、より現場に合わせた意識決定を迅速に行うことができるようになり、結果として好業績を維持しやすくなります。更に意思決定の迅速化は、事業部ごとの戦略的な柔軟性も高めます。例えば市場環境の変化や競合の動きに応じて、価格戦略やプロモーション施策を即座に調整することが可能です。また、各事業部が独自に判断を下せることで、現場の担当者やマネージャーの裁量も増し、責任感や主体性が向上します。結果として、意思決定のスピードと質が両立しやすくなり、組織全体としての適応力や競争力が高まるのです。この点は特に、変化の激しい業界や多様な製品・サービスを扱う企業において、大きなメリットとなります。
2.業績管理が容易になる。
二点目は「業績管理が容易になる。」というものになります。
事業部制組織では業績管理が容易になります。事業部制組織では、各事業部が独立しているので、それぞれの採算(P/L)を出すことができるようになります。トップ・マネジメントは独立した業績を確認することで、それぞれのパフォーマンスを容易に理解することができるようになります。そのためトップマネジメントにとっては業績管理が容易になり、更には責任の所在を知るのも容易になると言えます。更に、事業部ごとの業績が明確になることで、経営資源の配分や投資判断も戦略的に行いやすくなります。例えば、利益率の高い事業部には積極的に追加投資を行い、低迷している事業部には改善策を講じるといった意思決定が迅速かつ的確に行えます。また、事業部ごとの収益性やコスト構造が見える化されることで、問題の早期発見や改善策の実行も容易になります。これにより、企業全体のパフォーマンス向上だけでなく、個々の事業部の成長や効率化も同時に推進できる点が、事業部制組織の大きなメリットの一つと言えます。
3.経営人材が育成できる。
三点目は「経営人材が育成できる。」というものになります。
事業部制組織では、各事業の長が自身の事業部に対して責任と権限を有しているので、また責任の所在も明確なので、必死になって事業部を運営するようになります。その結果、各事業の長は経営の仕事をするようになり、結果として社内で経営人材を育てる機会が得られるようになります。加えて、事業部制組織では経営判断の経験が現場で直接積めるため、理論だけでなく実務に基づいた経営力が身につきやすくなります。各事業部の長は予算管理、採算分析、人材マネジメント、戦略立案など、幅広い経営スキルを実践的に学ぶことができます。この経験は将来的に企業全体の経営層やリーダー候補として活躍するための貴重な育成機会となります。また、責任の重さが明確であることから、判断力や意思決定力、リスク管理能力も自然と鍛えられ、企業にとって持続的な経営人材の確保に直結する点が、事業部制組織の大きな利点と言えます。
1-2.事業部制組織のデメリット
「事業部制組織」には以下のデメリットがあります。
1.経営資源が重複しコストが増加する。
一点目は「経営資源が重複しコストが増加する。」というものになります。
事業部制組織では、各事業部がそれぞれの独自に機能を有することになります。例えば企業がA・B・C事業部のように三つの事業部を有しているとします。この場合、それぞれの事業部が独自の機能部門(例.営業部や研究開発部など)を有することになるので、全社的に見ると機能組織が重複していることになります。これは資源の重複に他ならないので、この分だけ無駄なコストが発生すると言うことができます。(事業部制組織で全社的な機能を有する場合もあります。)更に、経営資源の重複は単に人員や設備のコストだけでなく、管理負担や情報伝達コストの増加も招きます。各事業部が独自の営業戦略や開発方針を持つ場合、全社的な統一方針との調整や、重複した報告・会議が増えることも珍しくありません。その結果、意思決定や業務遂行の効率が低下する可能性があります。また、同じ業務を複数の事業部で重複して行うことで、シナジー効果が得られにくくなる場合もあります。このように、事業部制組織は迅速な意思決定や独立性というメリットがある一方で、資源の重複によるコスト増加や効率低下のリスクを伴う点に注意が必要です。
2.部門間の連携不足が起こる。
二点目は「部門間の連携不足が起こる。」というものになります。
事業部制組織では、事業部間の連携不足が起こります。事業部を分けるとそれぞれが一つの企業のように運営されることになります。そのため事業部ごとの目標が優先されるようになり、事業部間で情報や資源を共有しあうような協力関係を築くことが難しくなります。この結果、全社的な戦略やシナジーを実現するうえで課題が生じやすくなります。例えば、新製品開発や販路拡大の際に、複数の事業部が協力して取り組むべきプロジェクトであっても、各事業部が自部門の利益や成果を優先するあまり、連携が遅れたり情報が共有されなかったりすることがあります。また、部門間の競合意識が強まると、知見やノウハウの共有が滞り、全社的な効率性や革新力が低下する可能性もあります。こうした問題を防ぐためには、明確な全社目標の設定や情報共有の仕組みづくりが重要となります。
3.全社的な戦略とズレる可能性が高まる。
三点目は「全社的な戦略とズレる可能性が高まる。」というものになります。
事業部制組織では、各事業部が独立して動くので、全社的な戦略を追求するのが難しくなります。企業はミッションやビジョンを追求する組織ですが、事業部を分けるとそれぞれが独自に動くので、全社的に進むべき方向性と異なる事業部が出てくる可能性があります。例えば、新規市場への進出やブランド戦略の統一など、全社的な取り組みが必要な場面で、事業部ごとの独自判断が優先されると、企業全体の方向性とズレが生じやすくなります。また、各事業部が独自に利益を追求することで、短期的な成果を優先し、長期的な全社戦略との整合性が損なわれるリスクもあります。このようなズレは、企業全体の統合的なシナジーやブランド価値の維持に影響を及ぼすことがあります。そのため、事業部制を導入する際には、全社的な戦略と事業部の活動を連動させる仕組みやガバナンス体制を整備することが不可欠となります。
事業部制組織のメリット・デメリット:まとめ
事業部制組織は分権化された組織であり、企業組織の歴史を見ると、機能別組織の発展版だと言うことができます。しかし事業部制組織も機能別組織と同じようにメリット・デメリットがあるので、MBA受験に向けて、上記の内容をしっかりと理解しておきましょう。