MBA研究計画書の書き方に悩む前に|キャリアの言語化が自然に進む5ステップ

2025年05月09日

キャリアと成果の棚卸しをする方法

 あなたが研究計画書の準備を行う時はキャリアと仕事上の実績を棚卸しする必要があります。(別記事「MBA研究計画書の書き方|作成前にやるべき5つの準備とは?」をご覧下さい。)しかし実績の棚卸しは決して簡単な作業ではなく、もしかしたら研究計画書の準備を進める過程で最初に訪れる壁になるかもしれません。そのため少しでも効果的に棚卸しができるようその方法について解説します。

1-1.キャリアを振り返る。

 一点目はあなたの「キャリアを振り返ること」になります。

 まず時系列に所属してきた会社や部署を全て書いて下さい。例えば西暦〇年〇月~〇年〇月までA株式会社の営業部に勤務、西暦〇年〇月~〇年〇月までA株式会社の企画部部に勤務、西暦〇年〇月~〇年〇月までB株式会社の営業部に勤務、というように、履歴書のように所属してきた組織について時系列に書いていきましょう。

 そしてそれぞれの組織でどのような仕事をしてきたのかを書いて下さい。思いつく限り行った全ての仕事を細かく書いて下さい。どんな些細な仕事でも書くようにして下さい。

1-2.試練・課題と行動

 二点目はあなたの「試練・課題と行動をまとめること」になります。まず新しい組織に入った(移動した)時に、どのような人達がいてどんな状況だったのか。その中でどのような試練があったのか。その組織にいた人たちは、自分に良くしてくれたのか、それともそうではなかったのか。緊張感のある場所だったのか、ゆっくりした場所だったのか。自主性が求められたのか、周囲に合わせる事が求められたのか等。まずどのような「人達」がいてどのような「状況」だったのかを書いて下さい。

 次にその中でどのような課題が与えられて、その時にどう考えて行動し成功(又は失敗)したのか。これらをしっかり思い出して書き出して下さい。最も重要なのは、あの状況や仕事・課題は大した事ないから書かない、と自分で勝手に決めつけない事です。重要なのは仕事のスケールや成否ではありません。あなたがどのような課題に直面し、どのように思考して切り抜けた(又は失敗した)のか。それが研究計画書に求められる内容です。もちろん全てを赤裸々に研究計画書に書く訳ではないので、この段階では徹底的に思い出す事に専念して下さい。

 実は上記の作業は両方非常に大変な作業です。あなたの職歴が長ければ長い分だけ大変だと思います。それでもしっかり自分に与えられた「課題」とそれに対して考えた「解決方法」、そしてその後の「行動」「結果」を書いて下さい。

1-3.結果(成功・失敗)

 三点目は「結果」をまとめます。結果は大きく三つに分かれると思います。

 一つ目は成功です。二つ目は成功したけどもっと上手くできたかもしれない、と改善点や反省点が残る成功です。三つ目は失敗です。改善点や反省点は「その当時は気付かなかったけど、今だと考えられる改善点・反省点がある。」というのであれば、それを書き出してみて下さい。これらはあなたがこれから研究計画書を書くのに非常に重要な内容になります。

 ここで重要なのは、実は二つ目の改善点・反省点のある成功と、三つ目の失敗が大切だという事になります。実は成功というのはあまり重要ではありません。何故ならそれは過去に行った思考や行動の正しさが証明されただけだからです。これは仕事に限った話ではなく、資格試験やスポーツの試合などでも同じだと思います。成功は「ここまでの過程が正しかった。」と証明してくれるだけです。ここまでの過程が正しかったとすれば、そこから課題は生まれない事になります。つまり研究計画書に書く内容ではないのです。

 そのため重要なのは「上手くいったけどもっと上手くやれたこと」と「失敗したこと」になります。何故ならこれらの経験から課題が明確に浮き彫りになるからです。これがあなたが研究計画書に書くべき内容になります。また研究テーマになる可能性もあります。そのためこれらをしっかり認識する必要があります。少し難しいかもしれませんが、あなたの思考と行動の結果「上手くいったけどもっと上手くやれたこと」と「失敗したこと」を書いて下さい。

1-4.先行研究を調べる。

 四点目は「先行研究」を調べる事になります。ここから先は一人では難しいかもしれませんが、もっと上手くできたかもしれない事や、失敗した事に対して「どうすれば成功できたのか?何が足りなかったのか?」という事を調べて、その方法論を見つけることです。調べる方法は「Google Scholar」「国会図書館」「学会のジャーナル」などを利用する方法があります。実はこの作業はあなたが修士論文を書いた経験がない限り、個人で行うのは不可能に近いので、プロと一緒に行うようにしましょう。

 そしてその内容の先行研究がなければ、それがあなたの「ビジネススクールで解決したい課題」であり、あなたの「研究テーマ」になります。もし先行研究があれば、その内容の中でまだ調べられていない内容があなたの研究テーマです。(例えばブランドマーケティングの先行研究は多くても、〇〇分野のブランドマーケティングについての先行研究はない、というケースです。)

 これはとても大変な作業になりますが、これは最高の研究計画書や研究テーマを設定するのに不可欠なプロセスになります。そのため大変ですがしっかりと取り組みましょう。またあなたの実務経験が多ければその分だけ多くの「もっと上手くできたこと」「失敗した事」があると思いますので、できる限り多くの内容を書き出して下さい。またこれらはその後の仕事で解決済みかもしれませんが、いずれの場合も書き出してみるようにしましょう。多ければ多い分だけ素晴らしい研究計画書を作り上げる事や研究テーマを設定することが可能になります。

1-5.最も興味・関心のあるテーマを選ぶ。

 五点目は書き出した研究テーマの中で「最も興味・関心のある研究テーマを選ぶ」ことになります。

 しかしこの段階では「自分が最も興味・関心の高いテーマ」だけに絞り込むのではなく、いくつか出てきたテーマに順序を付けて保管しておくようにしましょう。何故なら、まだこの時点で「自分が最も興味・関心の高いテーマ」を研究計画書で書くとは言い切れないからです。何故ならあなたが研究テーマを軸に志望校を選ぶなら別ですが、そうでない場合は別のテーマを優先させる必要があるからです。そのため場合によっては順序が変わる可能性もあるので、それを意識した上でしっかりと研究テーマを保管しておきましょう。

キャリアと成果の棚卸しの後にやること

2-1.ビジネススクールのカリキュラム・研究可能な分野を調べる。

 棚卸しの後に行うべき事は、受験候補のビジネススクールの「カリキュラム・研究可能な分野」を調べるべることになります。

 例えばあなたのテーマがファイナンスを学ぶ事で解決可能だと考えられるのに、ファイナンス専攻がないビジネススクールを志望するのは間違っています。そのためこの場合はファイナンスのプログラムがあるビジネススクールを全て調べるのが第一歩になります。今は進学するとは考えられないビジネススクールでも、この段階では取り敢えずファイナンスのプログラムがあるビジネススクールを全て書き出してみましょう。そしてそれが終われば、次は自分が行きたい大学院(ビジネススクール)や通学(又は受講)可能な大学院を書き出してみて下さい。

2-2.自分の軸を定めてビジネススクールを選ぶ。

 本来は自分の最も興味・関心のある課題が解決できるカリキュラム(又は研究)を有するビジネススクールを志望校にすべきです。しかし人によっては研究テーマより行きたいビジネススクールを優先させたい人もいます。例えばあなたが福岡県に住んでおり、仕事上の都合から他の都道府県に行く事ができず、通学制のビジネススクールを希望する場合は九州大学が候補に上げられるでしょう。ただ九州大学があなたの学びたいカリキュラム(又は研究)を有していない場合、あなたは「自分が何を優先させたいか」を検討する必要があります。

 このように志望する大学院にあなたの学びたいカリキュラムがない場合、どのような判断を下すのかはあなた次第です。自分の志望するカリキュラムを求めて別の大学院を目指すのも一つ、行きたい大学院のカリキュラムに合わせて第二・第三候補の学びたい内容や研究テーマを優先させるのも一つ、そして前提条件(例えば働きながら通学したい)を変更(この場合はビジネススクールを優先して休職・退職する。)のも一つになります。ビジネススクールは新幹線で通っている人もいるぐらいなので、何を妥協するかを決めるのはあなた次第です。そのため最後は自分の軸を定めて志望校を選択して下さい。

 ビジネススクールを選ぶ方法については次の記事「MBAの選び方完全ガイド|あなたに合ったビジネススクールの選び方」をご覧下さい。

キャリアと成果の棚卸しをする方法:まとめ

 以上がキャリアと実績を棚卸しする5つのステップになります。研究テーマはキャリアを基に書くべきものなので、上記のステップを通して自分の過去をしっかりと見つめ直して下さい。そしてあなたにしか書けない最高の研究計画書を作成していきましょう。これらについてお悩みであればいつでもご相談下さい。