ネットワーク型業界の特徴とは?基礎からMBA受験生向けにわかりやすく解説

2025年05月16日

ネットワーク型業界

「ネットワーク方業界」とは通信業界のような業界です。ネットワーク型業界は以下のような特徴を有しており少し特殊な業界になります。それぞれの詳細は以下の通りです。

1-1.利用者数で価値が決まる。

 ネットワーク型業界とは「利用者数」で価値が決まる業界を指します。

 ネットワーク型業界の代表例としては上記の通り通信業界が挙げられます。例えば電話機を有する人があまりいない場合、電話機の価値は低いものになります。しかし電話機を有する人が増えていくとその価値は高まり続けていきます。何故なら「多くの人が使っている事」に価値があるからです。これはSNSサービス等も同じです。誰も使っていないSNSサービスの価値はゼロだと言えますよね。しかし多くの人が使い始めたらそのユーザーの数の分だけ価値は高まります。つまりネットワーク型業界は販売量(利用者数)で価値が決まると言えます。

 このようにネットワーク型業界の最大の特徴は「ネットワーク効果」になります。利用者が増えれば増える程、その製品・サービス自体の価値が飛躍的に高まるという特徴をネットワーク効果と言います。ネットワーク効果をより詳しく説明すると、例えばLINEのようなメッセージアプリは利用者が少なければ「他に使っている人がいないので利用する意味がない。」と感じますが、利用者が増加すればする分だけ「LINEを使えば誰とでも連絡が取れる」という利便性が価値を生み出します。このように利用者数の拡大が競争優位につながるのが、ネットワーク型業界の本質であると言えます。

 またネットワーク効果は参入障壁を高める効果もあります。仮に新しい競合サービスが現れたとしても、既存のサービスに十分な利用者が集まっている場合、利用者を獲得するのは至難の業です。例えばあなたがこれからLINEやFacebookと同じサービスを作ったとしても、利用者を獲得するのは容易ではありません。何故ならLINEやfacebookは既に多くの利用者を有しているからです。そのため、先行者が市場を押さえた後は「Winner-Takes-All」の傾向が強まります。これは通信・SNSだけでなく、プラットフォーム型のビジネスにも同じ事が言えます。

 MBA受験者にとって重要なのはこの仕組みを理解して戦略を策定する事になります。ネットワーク型業界は商品自体の価値ではなく利用者数そのものが価値を生むという特殊な市場構造であり、マーケティングや経営戦略において理解しておく事は必須であると言えます。

1-2.収穫逓増の業界

 ネットワーク型業界は「収穫逓増」の業界になります。

 ネットワーク型業界の特徴である収穫逓増とは、利用者数が増えても変動費は大きく増えないという意味になります。例えばSNSサービスは作るのに多くの労力を必要としますが、実際に出来上がった後は利用者数が増えても大きく変動費は増えません。つまり最初のコストは大きくても、一度出来上がってしまえば利用者数が増えれば増える分だけ利益率が伸び続ける事になります。このようにネットワーク型業界は収穫逓増の業界だと言えます。

 更にネットワーク型業界の収益構造は規模の経済とも関係しています。SNSやオンラインプラットフォームは、ユーザー数が増えるほどサービスの価値が高まるので、ネットワーク効果によって新規ユーザーの獲得速度も加速します。例えば特定のSNSに友人や知人が多く参加していればいる程、新しい利用者はそのSNSへの参加意欲を持つようになり、結果として顧客が自然に拡大していきます。このようにネットワーク型業界ではビジネスの仕組みを一度作れば追加投資をほとんど必要とせず利用者数や収益を拡大できるので初期コストを十分に回収する事が可能です。また広告収入などを組み合わせれば更に利益率を高める事もできます。つまりネットワーク型業界は、利用者の獲得スピードが成否を決定づける重要な要素であり、収穫逓増の特性を最大限に活かすことが競争優位の源泉になります。

1-3.勝者が総取りする。

 ネットワーク型業界は「勝者が総取りする」業界になります。

 利用者数で価値が決まり利用者数が増加しても変動費が増えないのであれば必然的に先に成功した企業が全てを総取りする事になります。つまり先行者優位であると言えます。これは有名な例ですが、例えばマイクロソフト社がOSを開発した事によりOS市場で独占に近い状態を作り上げました。これはマイクロソフト社の企業努力は勿論ですが、ビジネスモデル自体に特徴があったと言えます。またその上、マイクロソフトのOS上でしか使えないソフトをヒットさせれば、マイクロソフトはその分だけユーザーに対するスイッチングコストを引き上げる事ができます。このように勝者が総取りしてしまうのがこのネットワーク型業界になります。

 このような先行者優位の構造は上記の通り顧客のスイッチング・コストを高める事で新規参入を更に難しくします。先ほどのOSの例で言えば、一度マイクロソフトのWindowsを利用すると、対応するアプリケーションやソフトの互換性の問題から他のOSへの乗り換えが困難になります。結果として後発の新規参入企業は既存の巨大プラットフォームを超えることが極めて難しくなります。更にネットワーク型サービスの場合、利用者が増えるほど情報量やコミュニティの価値も高まるので、ユーザーは多くの人が既に集まっているプラットフォームに集まりやすく、先行者が自然と有利になる傾向が強まります。この構造では最初に市場を確保した企業が利益と影響力を獲得できる一方で、後発企業は差別化やニッチ戦略なしには成功する事は難しくなります。よってネットワーク型業界では先行者が総取りする「winner-takes-all」の現象が発生する事になります。

 

ネットワーク型業界で取るべき戦略

2-1.Get Share at First(先にシェアを取れ。)

 ネットワーク型業界で取るべき戦略は「Get Share at First」という戦略になります。

 Get Share at Firstというのは「先にシェアを取れ。」という意味になります。ネットワーク型業界はユーザー数で価値が決まるので、一人でも多くの利用者数を先に確保できた企業が勝者となります。そのためたとえ赤字でも先にシェアを取るのが有効な戦略になります。これも有名な例ですが、例えばアマゾン社は創業時から赤字で規模の拡大を続けていきました。その理由はユーザー数が増えればその分だけ媒体としての価値が上がるのを認識していたからだと言えます。そしてその後の大成功は周知の事実になります。このようにネットワーク型業界の特徴を持つ業界ではシェアを取るのが極めて有効な戦略になります。これは非常に重要なコンセプトになりますので、しっかり覚えておくようにしましょう。

 この「先にシェアを取れ。」という戦略はネットワーク型業界に特有の収穫逓増という概念とも関係しています。利用者数が増えれば増えるほどサービス自体の価値が上がるため、先行してシェアを獲得した企業は後発企業に比べて圧倒的な競争優位を持つことになります。また初期段階から市場を押さえることでユーザーの囲い込みが可能になり、上記の通りスイッチング・コストを高めることができます。これによりたとえ赤字であっても後から追いかける企業は容易に市場に入っていけなくなります。これは具体的にSNSやオンラインマーケットプレイス、プラットフォーム型サービスなどで見られる現象であり、FacebookやLINE・Airbnbなどの成功も同様の戦略が背景にあります。よってネットワーク型業界での戦略としては短期的な損益よりも市場シェアの拡大とユーザー数の確保を優先することが長期的に見たビジネスの成否を決める要因となります。この戦略は非常に重要なのでしっかりと覚えておいて下さい。

ネットワーク型業界:まとめ

 以上がネットワーク型業界の特徴になります。上記は非常に重要な概念になりますのでMBA受験に向けてしっかりと理解した上で覚えておくようにして下さい。