初心者でも安心!MBA受験に役立つ貸借対照表の3つの基本ポイント

2025年07月02日

貸借対照表(B/S)の三つの構成要素

「貸借対照表「資産・負債・資本はという三つの要素から構成されています。それぞれの詳細は次の通りです。

1-1.資産

 一つ目は「資産」になります。

 資産というのは企業が有する財産のことを指します。これは現金だけではありません。例えば「売掛金」「受取手形」「有価証券」「建物」「設備」「貸付金」「原材料」「仕掛品」「のれん」などがあります。資産は企業が有する総資産であり、これは負債と資本(純資産)から構成されています。最も重要なのは、資産が多いからといって、その企業が実際に多くの富を有している訳ではないという点になります。例えば資産が10億円あっても、負債が11億円であれば資本はマイナス1億円になります。このように資産はあくまで負債と資本から成り立っているので、企業の状態を資産だけで判断するのは間違いです。

 資産とは企業が保有するあらゆる経済的価値のある財産を指します。資産は貸借対照表の最も基本的な要素の一つです。一般的に「資産」と聞くと現金を思い浮かべる方が多いですが、それだけではありません。例えば商品やサービスを販売した際に将来的に入金される「売掛金」や「受取手形」、投資目的や資金運用のために保有する「有価証券」、事業活動の基盤となる「建物」「設備」、取引先への「貸付金」、さらに製造業における「原材料」や「仕掛品」、企業買収時に生じる「のれん」なども資産として計上されます。つまり資産とは、現金化できるもの、または将来の収益獲得に役立つものを広く含む概念になります。

 しかし資産の金額が多くても、それが企業が多くの財産を有しているという訳ではありません、何故なら、資産は負債と資本(純資産)によって構成されているからです。例えば貸借対照表に総資産が10億円と記載されていても、その裏側に11億円もの借入金や買掛金といった負債があれば、資本(純資産)はマイナス1億円となってしまいます。この場合、企業は資産を持ちながらも実際には債務超過の状態にあることになります。

 したがって企業の財務状況を評価する際に資産額が大きいから健全であると判断するのは誤りです。重要なのは、資産だけでなく負債や資本とのバランスを見ることです。例えば、自己資本比率(純資産 ÷ 総資産)を確認すれば、どの程度自己資本で資産を賄えているかが分かり、企業の健全性をより正確に把握できます。このように、資産は企業の財政状態を理解するための出発点ではありますが、それ単体での数値に過度な意味を持たせるべきではないと言えます。

1-2.負債

 二つ目は「負債」になります。

 負債というのは企業が支払う義務のある借金や債務のことを指します。負債は将来返済する必要がある債務であり他人資本とも言います。負債の例としては「買掛金」「支払手形」「未払金」「前受金」「負債」「借入金」「負ののれん」などがあります。このように負債は企業が負っている債務になりますが、企業は必ず負債を背負うことになります。何故なら会計は発生主義で計上するものであり、発生と同時に100%金銭の授受行うことは現実的に不可能だからです。例えば従業員の給与が月末締で翌月20日の支払いだとします。この場合、月末の試算表には給与分の「未払費用」が計上されることになります。また例えば特定のサービス(求人広告)を利用し、その支払が翌月末などである場合は「買掛金」が計上されることになります。このように実務では企業は必ず負債を負うことになります。また現実的に運転資金や設備資金等の負債を有していない企業は殆どないので、これらの金額も負債欄に計上されることになります。

 負債は企業の財務活動において重要な位置を占めます。企業は事業を運営する上で、資金を外部から調達する必要があります。例えば、設備投資や運転資金の確保には自己資本だけでは不足する場合が多く、この不足分を銀行借入や社債発行などの負債で賄うことになります。負債には返済義務が伴うため、利息や元本の支払いが発生しますが、同時に自己資本の効率的活用を可能にするレバレッジ効果もあります。加えて、負債には期限付きで計上される短期負債と、数年以上の返済期間を持つ長期負債があります。短期負債には買掛金や未払費用が含まれ、長期負債には借入金や社債などが含まれます。負債は単に「支払義務」という側面だけでなく、資金調達手段として経営戦略上も重要です。ただし、過剰な負債は財務リスクを高め、返済不能に陥ると企業経営に致命的な影響を与えるため、適切な負債管理が求められます。また、会計上は負債として計上される金額は将来の支払い義務を正確に反映する必要があり、発生主義会計の下では、実際の支払時期にかかわらず発生した時点で計上されます。このように、負債は企業の資金運営や財務戦略、さらには会計の基本原則と深く結びついており、企業活動において避けて通れない要素となっています。

1-3.資本(純資産)

 三つ目は「資本(純資産)」になります。

 資本というのは株主から提供された資金や企業が蓄積してきた利益などを指します。資本というのは企業が有している純粋な資本のことになります。そのため資本を「純資産」とも言います。資本の例としては「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」「自己株式」などがあります。資本は株主から出資を受けた場合、又は企業が利益を出して内部留保が増加した場合に増加します。資本が重要である理由は、企業の総資産は負債と資本から成り立っているので、資本の金額が少ないと負債の割合が増加することになるからです。業種にもよりますが、一般的に負債の割合が高すぎると健全な企業であるとは評価されません。そのため企業は意識して資本を増やし続ける必要があります。

 資本(純資産)は企業の財務的な安全性や信用力を示す指標としても非常に重要です。例えば銀行から融資を受ける際、資本が十分にある企業は財務基盤が安定していると判断され、低金利での借入が可能になる場合があります。また、資本は企業の成長や投資戦略を支える源泉でもあります。利益剰余金として内部に蓄積された資本は、新規事業の立ち上げや設備投資などに活用でき、外部からの借入に頼らず事業拡大が可能になります。さらに、株主からの資本提供である資本金や資本剰余金は、企業が倒産した場合の債権者に対する支払の最後の受け皿となるため、企業全体の信用力や取引先からの信頼度にも直結します。企業は利益を上げるだけでなく、その利益をどの程度内部留保として蓄積するか、あるいは配当として株主に還元するかを戦略的に判断する必要があります。資本の管理は財務戦略の根幹であり、負債とのバランスを適切に保つことで、健全で持続可能な経営を実現することができます。特に成長段階にある企業では、資本を適切に積み増すことが、長期的な事業安定性や競争力の向上に直結するため、資本の増強と活用は経営者にとって最重要課題の一つとなります。

貸借対照表(B/S)の三つの構成要素:まとめ

 このように貸借対照表は資産・負債・資本の三つの要素から構成されています。そしてこの三つの要素の関係性を表す式「資産=負債+資本」を貸借対照表等式と言います。これらの違いを知っておく事は、財務会計の基本中の基本になります。そのためMBA受験に向けてこれらをしっかりと覚えておくようにしましょう。