2025年07月09日
伝統型・マーケティング型の価値提供プロセス
伝統型とマーケティング型の価値提供プロセスは大きく異なるものになります。その詳細と内容は以下の通りです。
1-1.伝統型の価値提供プロセス
「伝統型の価値提供プロセス」は製造から入ります。良い物を作れば売れるという発想から始まります。
伝統型の価値提供プロセスは「製造→流通→販売」という流れで進みます。そのため販売を行う時点で既に製品は出来上がっています。よって既に出来上がった製品を誰にどのように売るか?ということが重要になります。これを行うのがセールスです。セールスで顧客を獲得し製品を販売することで企業は売上や利益を上げることができるようになります。このように伝統型の価値提供プロセスの特徴は、製品が既に出来上がっているという点になります。そのため顧客が本当に欲しい物が製造できている訳ではないので、顧客と交渉しながら妥協点を見つけていく必要があるのです。著しく顧客の需要とかけ離れているなら価格を下げたり、追加の製品をプラスしたり、売る相手を変えたりして必死に説得しながら売る必要があります。これがセールスです。このように伝統型の価値提供プロセスではセールスが非常に重要になります。
次に完成した製品は流通チャネルを通して市場に届けられます。ここで言う流通とは、製品を消費者の手に届く形にするプロセスであり、物流や販売網の整備が重要な役割を果たします。しかし流通だけでは顧客の購買行動を完全に促すことはできません。顧客が製品の存在を知り、購入を決断するためには販売のプロセスが不可欠です。
セールスは伝統型マーケティングにおいて最も重要な役割を持つ工程になります。製品は既に完成しているため、セールスの目的は「顧客に対していかに製品を魅力的に伝え、購入してもらうか」に集中します。具体的には、製品の機能や性能、デザインの特徴を説明し、顧客の疑問や不安を解消することが求められます。場合によっては、価格の値下げや付加価値の追加、ターゲット顧客の変更などを行い、製品を売り込む必要があります。このように、製品の魅力を最大化するのではなく、顧客を説得して購入を促すことが中心になるのです。
伝統型プロセスのもう一つの特徴は企業が製品を市場に投入した後に顧客の反応を受けて対応する受動的な価値提供の形態であるという点です。顧客の声やニーズは、製品化の前段階では十分に反映されていないことが多いため、セールスの段階で調整や交渉が必要になります。例えば、新製品のノートパソコンを販売する際、顧客が「もっとバッテリー持ちが良ければ欲しい」と考えていても、既に製品は完成しているため、追加機能を短期で提供することは困難です。その結果、価格交渉や付加サービスの提供を通じて、顧客の納得を得ながら販売する必要があります。
このように伝統型の価値提供プロセスでは製品が既に出来上がっているという点が最大の特徴であり、そのために販売を行うセールスの重要性が極めて高くなります。セールスは単なる販売活動ではなく、顧客との交渉や説得を通じて、製品の価値を顧客に伝え、購買を成立させる役割を果たします。企業の売上や利益は、このセールス活動の成果に大きく依存することになります。
更に伝統型プロセスは市場の変化に対して柔軟性が低いという課題もあります。製品完成後に顧客のニーズが大きく変わった場合、既存製品の価値は顧客の期待に応えられず、売上やブランド評価に影響を及ぼします。このため企業は市場調査や販売後のフィードバックを通じて改善策を検討し、次回の製品開発に反映させることが求められます。しかし基本的には「作ってから売る」という順序が前提となるため、顧客中心の価値創造には限界があります。
総じて伝統型マーケティングの価値提供プロセスは、企業主導で製品を開発し、完成後に販売する方法であり、セールスが価値提供を補完する役割を担っています。MBA受験生にとっては、このプロセスを理解することが現代マーケティングの「顧客中心・双方向型」の価値創造との違いを理解する第一歩になります。伝統型の強みは技術力や製品力を最大限に活かせる点にありますが、顧客ニーズを先取りした価値提供には、戦略的な工夫や正しい市場調査が欠かせないことを理解しておく必要があります。
1-2.マーケティング型の価値提供プロセス
「マーケティング型の価値提供プロセス」は市場調査から入ります。顧客が求めるものを作るのがマーケティング型の価値提供プロセスです。
マーケティング型の価値提供プロセスは「顧客選定・市場調査→製造→流通→販売」という流れで進みます。このプロセスでは顧客選定・分析(市場調査)から入るので、既に顧客のニーズを理解できているのです。そのため製造されるのは顧客が求める製品であり、それは顧客が求めているものなので、販売するのは比較的容易になります。このようにマーケティング型の価値提供プロセスの特徴は、顧客が求めるものを作るという点になります。これにより最後の販売までのプロセスを顧客ニーズに合わせて進めていくのがマーケティング型の特徴になります。
次に製造の段階では既に明確になった顧客ニーズに基づいて製品が設計されます。ここでのポイントは、製品は企業が作りたいものではなく、顧客が求めるものを製造する点です。例えば健康志向の消費者向けに開発された飲料であれば、低糖質・低カロリーでありながら美味しさも兼ね備える、といった顧客価値を反映させた製品設計が行われます。製品が顧客ニーズに合致しているため、販売の段階で強く説得する必要がほとんどなく、購入意欲を自然に引き出すことが可能になります。
また流通の段階でもマーケティング型の特徴が現れます。顧客の購買行動や生活導線に応じて、製品を届けるチャネルが戦略的に選択されます。例えば若年層向けのファッションブランドであれば、オンラインストアやSNSと連動した販売チャネルを重視し、実店舗もターゲット層の利便性を考慮して配置します。このように流通戦略も顧客中心に設計されることで、購入障壁を最小化し利便性を最大化することが可能になります。
最後に販売の段階では顧客が求める製品が出来上がっているので販売自体が比較的容易になります。従来型のセールスのように一方的に説得する必要は少なく、顧客とのコミュニケーションはむしろ価値の確認や体験提供、ブランドエンゲージメントの強化に重点が置かれます。SNSやレビュー、顧客サポートを通じて、購入後の満足度やリピート購買を高めることも重要です。顧客が求める価値に基づいて製品が作られ、流通や販売戦略も連動しているため、全体として効率的かつ効果的な価値提供が可能になります。
このようにマーケティング型の価値提供プロセスの特徴は常に顧客の視点に立って価値を創造する点にあります。製品を作ってから売る伝統型とは異なり、顧客ニーズからスタートするため、販売やセールスにかかる負担が軽減されるだけでなく顧客満足度の向上やブランドロイヤルティの確立にもつながります。MBA受験生にとっては、このマーケティング型プロセスを理解することが、現代の顧客中心マーケティングやホリスティック・マーケティングの理解にも直結します。またマーケティング型プロセスは、顧客の声を反映させた継続的な改善やイノベーションを可能にするため、長期的な競争優位性の構築にも不可欠なフレームワークとなります。
伝統型・マーケティング型の価値提供プロセス:まとめ
上記の通り伝統型とマーケティング型は大きく異なるものになります。いずれが顧客にとって価値ある製品を製造するのに適しているかは言うまでもありません。そのためMBA受験では常にマーケティング型を意識して価値提供プロセスを検討するようにしましょう。