MBA受験に役立つ戦略的提携の基礎知識|3つのタイプとその違い。

2025年06月16日

戦略的提携とは何か?

戦略的提携とは二社以上の企業が利益を伸ばす為に人材や資源を共有し合う事です。戦略的提携には以下の三種類があります。

1-1.資本提携

 戦略的提携の一つ目は「資本提携」になります。

 資本提携とは企業同士が互いの株式を持ち合うことで関係を強化する形態です。これにより資本関係が構築されて、それぞれの財務的関係が強化されます。そして長期の関係を構築し利益を共有していくのが資本提携の本質になります。資本提携は敵対的買収を防ぐ効果やシナジー効果を生み出す目的として行われる事もあります。

 資本提携のメリットは「長期的な関係を築きやすい。」「経営の意思決定に影響力を持てる」「技術・ノウハウの共有が可能になる。」等が挙げられます。まず資本提携を行えば相手企業との関係が強固になるので長期的な協力関係を築きやすいと言えます。また相手企業の意思決定に一定の影響力を持つ事ができます。もし相手企業の意思決定が自社に及ぼす影響が大きい場合はこれは強いメリットになります。更に技術・ノウハウの共有も可能になります。仮に相手企業が別業界の企業で、自分の業界にはない技術・ノウハウを共有する事に成功した場合、強い競合優位を築く事ができるようになります。このように資本提携には幾つかのメリットがあります。

 しかし一方で資本提携にはデメリットもあります。相手企業との関係が強化される分、相手企業の業績悪化は自社の財務にも影響を及ぼします。また相手企業が自社の経営の意思決定に影響力を持つようになるので、柔軟な意思決定が難しくなります。更に技術・ノウハウの共有も可能ですが、自社からも相手に技術・ノウハウを提供する必要があるので、それに関する手間やコストも発生する事になります。このように資本提携で得られるメリットは、そのままデメリットにもなります。そのため資本提携を行う相手を慎重に選択する必要があります。

 MBAでは資本提携は企業価値向上の為の財務戦略として重要視されます。MBAでのケーススタディや財務戦略の講義で頻出のテーマであり、提携の効果を数値で評価する力も求められる事があります。また資本提携はM&A(合併・買収)の一歩手前として捉えられることもあり、買収戦略や企業統合に関する知識とも密接に関係します。企業の買収や統合は経営戦略として非常に重要なテーマになりますので、資本提携についてもしっかりと理解しておく必要があります。

1-2.業務提携

 戦略的提携の二つ目は「業務提携」になります。

 業務提携は資本のやり取りを伴わずに、事業活動や技術・販売チャネルなどで協力関係を築く形態を指します。業務提携は二社以上の企業が特定の業務や事業で協力する事です。例えば大きな資本や技術を持たない企業が他社と協力することで製品開発を効果的に進める事ができます。また販売・物流などで協力し合う事で、互いに価値ある販路や物流ルートを確保する事ができるようになります。このような提携が業務提携になります。

 業務提携のメリットは「資金負担が少ない。」「柔軟に協力関係を構築できる。」「他社の強みを自社で活用できる。」というものになります。まず業務提携は資金負担が少ないというメリットがあります。業務提携は必要な部分だけ提携すればいいので、資金負担が少ない提携方法になります。次に業務提携は柔軟に協力関係を構築できるというメリットがあります。業務提携は特に資本の提携等は行わないので、比較的容易に協力関係を構築する事ができます。お互いにメリットがあり、それぞれが信用できるのであれば、業務提携を結ぶのはそれほど難しい事ではありません。その意味で業務提携というのは比較的容易に構築できる関係であると言う事ができます。また業務提携では他社の強みを自社で活用する事ができます。例えば自社の流通網が弱い場合、相手企業が強い流通ネットワークを有していればそれを活用する事ができるようになります。当然、自社も相手が欲している何かを提供する必要がありますが、それぞれの強みを共有できるのが業務提携になります。
 MBAでは業務提携は戦略的アライアンスと呼ばれ経営戦略論の重要なテーマになります。MBAでは競争優位を築くために自社単独ではなく外部パートナーとの連携をどう活用するか、ゲーム理論や交渉戦略の観点から学ぶ事になります。そしてどのようなパートナーと提携して経営を有利に進めていくかを徹底的にケースや議論を通して学ぶ事になります。また更に業務提携は組織間の信頼関係やガバナンス構造が成功の鍵となるため、人的資源管理や組織論の知識も重要になります。

1-3.ジョイント・ベンチャー

 戦略的提携の三つ目は「ジョイント・ベンチャー」になります。

 ジョイント・ベンチャーは、複数の企業が共同で新たな法人を設立し、事業を展開する提携形態です。ジョイント・ベンチャーは資本・業務提携のハイブリッド型のような方法であり、資本・業務の両方で協力し合うことが可能です。各企業の株式の保有割合にもよりますが、一般的にジョイント・ベンチャーはそれぞれの企業から役員を選任します。これがジョイント・ベンチャーになります。

 ジョイント・ベンチャーのメリットは「独立した組織運営が可能」「リスク・コストを分担できる。」というものになります。まずジョイント・ベンチャーでは複数の企業が新しい法人を設立するので、親会社と別で独立した組織運営が可能となります。そのため親会社とは異なる事業を展開する事が可能です。また新会社には複数の親会社から役員や従業員を入れる事ができるので、優秀な人材で構成された混合チームを作る事ができます。これにより企業はそれぞれの強みを生かして新分野で独立したビジネスを行う事できるようになります。次にジョイント・ベンチャーの良い点はリスク・コストを分担できるという点になります。ジョイント・ベンチャーはそれぞれ出資した資本内でビジネスを営むので、損失が発生しても、更には破綻しても親会社は出資分だけしか資金を失わないというメリットがあります。また事業に必要なコストを分担する事が可能なので、ジョイント・ベンチャーという形態で新会社を作ると低コスト・低リスクで新事業を始める事ができると言う事ができます。

 ジョイント・ベンチャーのデメリットは「強い協力関係を構築する必要がある。」「契約内容とガバナンスが複雑である。」「提携の解消が難しい。」という点になります。ジョイント・ベンチャーはメリットだけに注目すると魅力的ですが、ジョイント・ベンチャーを成功させるには強い協力関係を構築する必要があります。何故なら出資する企業の意欲に温度差があるとジョイント・ベンチャーを成功させる事ができないからです。よってジョイント・ベンチャーでは企業同士の関係構築に力を使う必要があると言えます。またジョイント・ベンチャーは契約内容やガバナンスが複雑であるというデメリットもあります。契約内容やガバナンスが複雑だとその分の手間やコストが発生します。特に他社側の役員・従業員が恣意的に相手企業の便益を優先させる判断を行う可能性も完全に否定はできないので、その意味でガバナンスを強化する必要があり、それが手間やコスト発生の原因になると言えます。最後にジョイント・ベンチャーは新法人を設立するので、提携の解消が容易ではないというデメリットがあります。資本提携や業務提携と比べると、最も提携の解消が難しいのがジョイント・ベンチャーになります。相手企業が不祥事を起こしたり倒産の危機に陥った場合は、そのままジョイント・ベンチャーを運営するのが難しいので、場合によっては相手企業を支援する必要があります。これがジョイント・ベンチャーのデメリットになります。

戦略的提携とは何か?:まとめ

 上記の通り戦略的提携には三つの種類があり、それぞれが企業が成長するための有力で強力な手段になります。そのため戦略的提携という概念についてしっかりと学ぶようにしましょう。また戦略的提携のメリット・デメリットは別記事(「戦略的提携のメリット・デメリットとは?」)で解説していますので、是非ともご一読下さい。戦略的提携はMBA受験に必須の知識になりますので、必ず理解しておくようにして下さい。