会計の基礎知識|MBA受験に役立つ企業会計7つの原則とは

2025年07月01日

企業会計7つの原則

「企業会計には7つの原則があり、それぞれの原則を守って財務諸表を作成する必要があります。7つの詳細は次の通りです。

 

 

1-1.真実性の原則

 一つ目の原則は「真実性の原則になります。真実性の原則とは、企業会計は真実を報告しなければならないというものです。これは当然のことのように思われていますが、実はこのルールを破る企業は後を絶ちません。何故なら赤字の企業は黒字でないと金融機関からの融資が難しくなるので、意図的に数字を調整して黒字決算とするケースがあります。これを粉飾決算と言いますが、このような事は法的にも倫理的にも許されるものではありません。真実性の原則を守ることは、投資家や取引先、さらには社会全体からの信頼を得るために不可欠です。粉飾決算が明るみに出れば、企業の信用は失墜し、株価の下落や取引停止といった深刻な影響を招きます。さらに経営者や役員が法的責任を問われることも少なくありません。そのため企業は短期的な利益にとらわれず、誠実な情報開示を行うことで、持続的な成長と社会的責任を果たすことが求められます。

1-2.正規の簿記の原則

 二つ目の原則は「正規の簿記の原則になります。正規の簿記の原則とは、企業会計は正規の簿記の原則に従って会計帳簿を作成する必要があるというものです。正規の簿記の原則とは複式簿記のルールを守る事です。具体的には売上が発生して現金が増えた、経費が発生したから買掛金が増加した等、企業会計は一つの事実が二つの勘定科目に影響を与えることになります。この原則が正規の簿記の原則になります。正規の簿記の原則を守ることで、企業の財務状況は正確かつ体系的に把握できるようになります。複式簿記を採用することで、資産・負債・純資産・収益・費用といった勘定科目が相互に関連付けられ、取引の全体像を漏れなく記録できます。これにより財務諸表の信頼性が高まり、投資家や金融機関に対して企業の健全性を明確に示すことが可能となります。また、不正や誤謬の発見も容易になるため、内部統制の強化にもつながります。

1-3.資本と利益の区別の原則

 三つ目の原則は「資本と利益の区別の原則になります。企業は利益獲得を目指して取引を行います。このような取引を損益取引と言います。また企業は出資を受ければ資本の金額は増加します。しかしこれは取引による資本増加ではないので、このような取引を資本取引と言います。企業が損益取引で資本を増加させるのと、資本取引で資本を増加させるのは意味が全く異なります。そのためこれらをしっかりと分ける必要があります。(資本剰余金と利益剰余金で分けます。)これが資本と利益の区別の原則になります。資本と利益を区別することは、企業の財務状況を正しく把握するために極めて重要です。もし両者を混同すれば、企業の本来の収益力や健全性を誤って評価してしまう恐れがあります。例えば、出資によって増加した資本を利益と誤解すると、実際には稼ぐ力がないのに健全な企業と見えてしまいます。そのため、資本取引は資本剰余金、損益取引は利益剰余金として処理し、明確に区別することが求められます。これにより、投資家や金融機関に対して透明性の高い財務情報を提供できるようになります。

1-4.明瞭性の原則

 四つ目の原則は「明瞭性の原則になります。企業会計では財務諸表を作成しますが、これがルールに基づかず分かりにくいものであれば、意思決定を行うために使用するのは難しくなります。そのため貸借対照表や損益計算書には作成のルールがありますが、それに遵守すると同時に明瞭性の高い財務諸表を作成する必要があります。これが明瞭性の原則になります。明瞭性の原則を守ることによって、財務諸表を利用する投資家や金融機関、取引先などの利害関係者は、企業の経営成績や財政状態を容易に理解できるようになります。例えば、科目名を適切に設定し、必要に応じて注記を加えることで、数字の背景や意味が一層明確になります。もし不明瞭な財務諸表であれば、誤った判断を招き、取引関係や投資判断に悪影響を及ぼす恐れがあります。そのため正確性と同時に分かりやすさを意識した会計処理が重要になります。

1-5.継続性の原則

 五つ目の原則は「継続性の原則になります。企業会計のルールは世界中で統一されている訳ではなく、例えば日本基準と国際会計基準は異なります。しかしこれらの基準を企業の都合で何度も変更してしまうと、外部関係者が継続的な流れを理解するのが難しくなります。そのため企業は継続性の原則を守り会計書類を作成する必要があります。(正式な手続きを踏めば途中で変更する事は可能です。)継続性の原則を守ることで、企業の財務諸表は年度ごとに比較可能となり、経営成績や財務状況の推移を正しく把握できます。もし会計処理方法を頻繁に変更すれば、利益や資産の数値が恣意的に見え、投資家や金融機関の信頼を失いかねません。そのため企業は一度採用した会計基準や評価方法を継続して用い、変更が必要な場合でも適切な手続きを踏み、注記で理由を明示することが求められます。こうした対応が透明性と信頼性を確保する基盤となります。

1-6.保守主義の原則

 六つ目の原則は「保守主義の原則になります。企業は財務諸表には反映されないが、将来的に財政に不利な影響を与える可能性があるリスクを抱えている場合があります。例えば投資した案件が失敗に終わる見通しが高まった場合などです。このような内容をできる限り誠実に報告していくのと同時に、利益などを無理に大きく見せないようにする必要があります。例えば経費や損失を先送りにせず早期に計上することなどが該当します。これが保守主義の原則になります。保守主義の原則を適用することで、企業は過度に楽観的な見通しに基づいた決算を避け、健全で信頼性の高い財務情報を提供できます。利益を過大に計上すれば、株主や債権者に誤解を与え、後に重大な信用失墜につながる恐れがあります。一方で損失やリスクを早めに計上しておけば、潜在的な危険を適切に示し、利害関係者がより慎重で合理的な判断を下せるようになります。この原則は、企業の信頼性を長期的に守るために欠かせない考え方です。

1-7.単一性の原則

 七つ目の原則は「単一性の原則になります。企業の財務諸表は統一した一つの会計報告書だけを使用する必要があります。これは当然の事のように思われますが、実務上でそうではないケースが多くあります。例えば企業が赤字の場合、そのまま提出すれば金融機関から追加融資を受けることが難しくなります。また企業が黒字の場合、多く税金を払う必要があります。そのため一部の企業は二重帳簿を作り、提出先に合わせて都合の良い会計報告書を提出しています。これは完全な違法行為ですが、このような事をしないよう単一性の原則が7つの原則に織り込まれています。単一性の原則を守ることで、企業は利害関係者に対して一貫した財務情報を提示し、透明性と公正性を確保できます。もし二重帳簿などの不正が行われれば、投資家や金融機関の判断を誤らせるだけでなく、税務当局からの処罰や社会的信用の失墜につながります。単一の正しい会計報告書を作成することは、単に法律を守るためだけでなく、健全な企業活動を支える基本でもあります。この原則により、すべての関係者が同じ基盤で企業を評価する事ができるようになります。

企業会計7つの原則:まとめ

 企業会計7つの原則は当然のことに見えますが、これが守られていない財務諸表は実務では多々存在します。しかしこのような財務諸表が出回ると財務諸表の信頼性が損なわれてしまうので、これらの原則は必ず守る必要があります。そのためMBA受験に向けて、これらを守って会計報告書を作成する必要がある、という事実をしっかりと理解しておいて下さい。